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221/373

221 到着




 翼を一直線に広げて、量産型の群れにまっすぐ突っ込んでいくガーゴイル。

 敵の群れが撃ってくる火球は、トーカが機体をナナメにかたむけさせて回避。

 私たちの真横を通り過ぎて、次々と夜の闇に消えていく。


「狙いが甘いね、見本を見せてやる!」


 トーカが指をさすと、魔導機竜ガーゴイルの口から火炎弾が発射された。

 量産型のヤツより二回りくらい大きくて、スピードもケタ違い。

 反応すらできずに真正面から直撃を受けた一機が爆散。

 燃える破片をまき散らしながら、夜の森に落ちていく。


「まだまだ!」


 さらに群れの中に突っ込んで、グルグル旋回しながら翼で敵を斬り刻む。

 次々と真っ二つにされて、バラバラと落ちていくガーゴイルたち。

 ギフト製だからかな、トーカの機体と量産型の性能は話にならないくらい差があった。


「どんなもんだい。これで全滅だろ?」


「……うん、元々いた分はね」


 地上を見下ろせば、森の中にぽっかりとあいた小さな広場。

 そこに建ってる、一階建ての小さな建物が見えた。


 民家くらいの大きさだけど、質感が明らかにおかしい。

 大神殿の地下で見た、不思議なカベと同じ感じだ。

 間違いない、あそこが敵のアジト。

 たぶん地下に、とんでもなく広い施設が広がってるんだろう。

 あそこに、ベアトがいる。


 ……けど、敵も必死だ。

 ただで通してはもらえない。


「追加でどんどん、ガーゴイルが上がってきてやがるな……!」


「うわ、マジか。いちいち相手にしてたらキリないぞ、これ」


 そうなんだ。

 施設のワキにある地面がパカっと開いてて、そこからどんどん魔導機竜ガーゴイルが湧いてきてる。

 あそこをつぶさない限り、いくらザコを撃墜してもキリがない。


「……時間稼ぎに付き合ってやる義理はないね。私、さっさと終わらせてくる」


「終わらせるって……、お、おい、ちょっと!?」


 困惑声のトーカを背に、私は機竜の背から飛び降りた。

 落ちていく私にめがけて、ガーゴイルたちが上昇しながら火球を吐き出す。

 そんな攻撃、よけるまでもないね。


「水護陣!」


 【水神】の力で、ぶ厚い水のバリアを展開。

 水のカベに触れたとたん、ザコの火球はあっさりと消滅する。

 で、私の目的はもちろんザコ散らしなんかじゃない。

 猛スピードですれ違う寸前、水護陣を解除。

 くるくるまわって敵機の頭に着地して、思いっきり【沸騰】の魔力を流しこむ。


「溶けろっ!!」


 巨大なガーゴイルは一瞬でマグマのかたまりに溶解ようかい

 これでフタ(・・)が確保できた。


「時間がないんだ。もうこれ以上——」


 マグマを魔力で操作して、ガーゴイルが発進してくる穴にめがけ、


「巣から出てくんなッ!!」


 全力で飛ばす。

 マグマは二体のガーゴイルを巻き込みながら、ワラワラとザコが湧き出る発進口にベッタリと張り付き、出口をふさいだ。

 さらにせり出してきてたガーゴイルと、マグマに取り込まれたガーゴイルが激突して、大爆発を巻き起こす。


「……よし」


 発信口は完全に崩壊。

 これでもうガーゴイルは沸いてこない。

 落下しながら上に体をむけて、


「トーカ、残ったザコはまかせたから」


「おう、お姉さんにまかせとけ!」


 声をかけると、トーカの魔導機竜ガーゴイルが次々と敵を撃墜していく。

 火球で爆砕し、翼で斬り捨てて、あっという間に、それこそ私が森に落下する前にガーゴイルは全滅。

 全部片づけたあと、落ちていく私の下に回りこんで、


「……っと」


 スタっ。


 背中に私を着地させる余裕まであるくらいだから、ホント大したもんだ。


「おつかれキリエ、ナイスだったぞ」


「別に……、あれくらい軽いから。トーカこそ、【機兵】の扱いなまってないみたいだね」


「当たり前だろ? アタシを誰だと思ってんだ」


 ブランクがあるとは思えないくらい、見事なガーゴイルさばき。

 トーカがついてきてくれたの、結果的には大正解だったな。

 他の人じゃ、ここまでうまく【機兵】は使いこなせないだろうから。


「……なあ、キリエちゃん」


「ん?」


 敵のアジトへ急降下するガーゴイルの背中、リーダーが話しかけてきた。

 なんだか心配そうな顔で。


「大丈夫なのか……? 溶岩を作る方の技、かなりの魔力を消耗するんだろ?」


「あー……、うん。水を沸騰させるやつの、だいたい十倍くらいかな」


「そんなモン使ってドでかいドームを作ったり、ガーゴイルを追っかけさせたり。今のもそうだが、飛ばしすぎに見えるぜ。ベアトちゃん助けるまで持たねぇんじゃねぇのか?」


 ……たしかに、かなりの魔力を使ってる。

 休んでれば回復するっていっても、全快時の半分くらいかな。

 特にあの溶岩ドーム、ソーマを倒すためとはいえ、かなりキツかった。


「……平気だよ。ペース配分は考えてる。ベアトを助けられなかったら意味ないもん」


「なら、いいんだがよ……」


 さて、そうこう言ってるうちにガーゴイルが施設の前に着陸する。

 すぐに全員背中から飛び降りて、トーカが【機兵】を解除。

 役目を終えたガーゴイルは黒い砂鉄にもどって消滅した。


「よし、到着だぞ!」


「ここにベアトちゃんがいるわけだな。ディバイ、場所わかるか?」


「……すまない。人造エンピレオの魔力が強烈すぎてな……。ここまで近寄っては、魔力の探知は不可能だ……」


「ジャミングになっちまってるわけか。ったく、面倒だぜ……」


 ディバイさんにベアトの居場所を探してもらうの、リーダーも考えてたんだ。

 でも、それは無理、と。

 ってことは敵のアジトのすみからすみまで、自分の足であの子を探さなきゃいけないってわけか……。

 だったらなおさら、一秒だってムダにはできないね。


「……ぐずぐずしてらんない。早く行こう」


「あ、おい! ちょっと待てってば!」


 待てないって。

 さっさと歩き出した私に、トーカがしぶしぶついてくる。

 もちろんリーダーとディバイさんも。


「急ぐ気持ちもわかるけどさ、ワナとかあったらどうするんだよ」


「ちゃんと警戒してるし」


 これでも警戒は最大限してる。

 ワナにかかったらベアトを助ける時間がなくなるもん。


 で、なにごともなく建物の前に到着。

 ただしドアは開かない。

 押しても引いても、うんともすんともいわない。


「バルジさん、カードキー持ってたよな。ソイツで開けられないのかい?」


「どうだろうな。カギっつってもよ、カギ穴がちがうとドアは開かねぇだろ? コイツがどんなカギ穴の形してるかはわからねぇが、合うとは思えねぇな」


 ふところからペラペラのカードキーを取り出すリーダー。

 アレが使えるなら楽なんだけど。


「ま、一度試してみ——」


 なくても、開けられるよね。


「っらあ!!」


 バギャアッ!!


 足に練氣レンキをこめて、思いっきりキック。

 どんな素材でできてるかはわからないけど、不思議なドアはしっかり吹っ飛んでくれた。


「開いたよ。行こう」


「お、おう……。大したマスターキーだな……」




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― 新着の感想 ―
[一言] 開け方が雑WWW
[良い点] わーい、ドッグファイト!かぎろいドッグファイト大好きー!ファンタジー世界でも空中戦は見れる!やっぱりトーカ×【機兵】は素晴らしい! やはり暴力…暴力は全てを解決する…!本来は心根の穏やかな…
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