表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化・コミカライズ】偽・聖剣物語 ~幼なじみの聖女を売ったら道連れにされた~  作者: 溝上 良
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

161/164

コミックス4巻発売記念(副題:プレゼント大作戦(笑))

 










 今日も今日とて窓から愚民どもを見下ろして満足感を得ていた俺。

 そんな俺の元に、まったく望まれない客がやってきていた。


「私の手伝いをしていただきたい」

「いきなり何言ってんの?」


 思わず常時被り続けている仮面が外れ、本音が漏れてしまう。

 フードを被ったイケメン(俺には及ばない)が、なんだか偉そうなことを言っている。


 バカなのかこいつ?

 というか、誰?


 何かお前は知っていて当然だよな、みたいな感じで自己紹介もなしにいきなり話し始めてきたんだが。

 知らんぞ、お前なんか。


『ほら、トイミだよ。人魚の村で君と戦った……』


 すると、脳内にこれ以上聞きたくない耳障りな魔剣の声が響く。

 あーん? トイミ……?


 人魚の村……?

 …………ああ、思い出した。


 グレーギルドとかいう犯罪者集団を率いていた、雷使いだ。

 しかし、俺が戦ったというか……。


「(人魚にお腹ぶっ刺されていたわね)」


 コソコソと耳元でささやいてくるマガリ。

 当たり前のように居座るな、お前は。


 王城で猫を被る行為に苦しみ続けるのが、お前の仕事だろうが。

 しかし、そうだ。


 ノエルに腹をぶっ刺され、海に投棄されていた男がいた。

 ……いや、あれ致命傷だろ。


「あ、アンデッド……?」

「いえ、生きていますよ。散々な目に合わせられましたがね」


 なるほどなるほど。

 人魚に殺されかけた犯罪者が、俺の前にいるということだな。


 うーん……マズイ!


「……君を刺したノエルのことは恨まないであげてほしい。君を海に突き落としたノエルも、自分だけじゃなく、人魚たちを守ろうと必死だったんだ。だから、君を殺そうとしたノエルのことを許してあげてほしい」

『全部押し付ける気だ、こいつ!』

「そうです。実はノエルさんのお姉さんも色々と問題があってあなたは巻き込まれただけかもしれません。私はあなたが悪いとは思っていませんでした、最初から」

『こっちもひどい擦り付けだ!』


 俺とマガリのマシンガントーク。

 俺じゃない、ノエルが悪い。


 復讐ならあっちにしてくれ。俺は関係ない。


「ふっ。私が悪いことをしていたのは事実です。しかし、この生き方しかなかったのも事実。あなたたちを恨むつもりはありませんよ。この生き方も変わりませんしね」


 しかし、トイミは笑みを浮かべて否定した。

 いや、当たり前だろ。


 俺を恨むなんて筋違いにもほどがある。

 ぶっ飛ばすぞ。


「た、ただ、私の前で人魚のことを口にするのはやめてください。き、気が遠くなるので……」

『トラウマになってる……』


 顔を真っ青にしてプルプルと震えるトイミ。

 まあ、殺されかかったらそうなるよな。


 俺もいまだにノエルと人魚全体に対して偏見を持っているし。

 ……しかし、こいつの弱みを握れたな。


 いざというときは、人魚をけしかけてやる。


「それで、何の用だ?」

「……私の大切な妹分が、そろそろ誕生日なんです。プレゼントを用意したので、手渡したいのです」

「へー。妹分ねえ」


 全然興味のわかないことを言ってきた。

 犯罪者が家族愛とか笑わせるなよ。


 どうせろくでもない奴だろうな、その妹分とやらも。

 ゴミ犯罪組織に入っているわけだし。


『悪いのはトイミたちだけど恐ろしく辛辣だよね』

「あなたの妹分は……?」

「……トキノです」


 だから誰やねん。

 名前を言われても知らんわ。


『あ、あの時の女の子じゃない? マガリが何か間違って聖女らしい聖女になっていた時の』

「ああ……」


 魔剣の言っているのは、何をトチ狂ったのか、マガリがかつてのマガリに戻ってしまった事件である。

 俺と取っ組み合いになって記憶がぶっ飛んでいたけど、決して俺のせいではない。


 知らん。

 しかし、魔剣が『何か間違って』と言ったことに、マガリは激怒。


「(アリスター。いつになったらこの鉄くずを捨てるの? しばりつけて海に沈めましょうよ)」

「(大丈夫。計画は順調だ)」


 アイコンタクトで意思疎通。

 頷き合う。


 魔剣を屠ることについては、協力できるらしい。

 ヨシ!


『え、嘘でしょ? ちょっと待って。計画ってなに? 僕そんなの知らないんだけど?』

「彼女はまだ若いですが、普通の子供のような人生を送らせてあげることはできませんでした」


 魔剣がギャアギャア言っているけど無視し、トイミの話を聞く。

 普通の人生ねぇ……。


 犯罪ギルドに入っていたら当たり前だろ。

 さっさと処刑してもらえ。


「だから、これくらいはと……」

「ああ、でも、彼女は今牢獄の中では? 手渡しは無理だろう」

「そう、ですか……」


 だから、さっさと帰れ。

 かーえーれ。かーえーれ。


 俺の中のリトルアリスターが大合唱を繰り広げる。

 すると……。


「あらあらぁ。とっても素敵なことを聞いたわぁ」

「ッ!?」


 このねっとりとした声!

 非常に遺憾ながら、声に聞き覚えがある!


 嫌々振り向けば、窓の外に張り付いている痴女が!

 きゃああああああ!? 男の人呼んでええええええ!!


「私もお手伝いしてあげる。ダーリンの役に立てるしねぇ」

「え、エドウィージュ!? どうしてここに!?」


 極悪大罪人エドウィージュ。

 即刻ギロチンに処されなければならない存在なのに、どうしてここに……!


「あんな牢獄くらいなら、簡単に脱獄できるものぉ。あの子もぎゃあぎゃあうるさかったから、ちょっとキュッとしたわぁ」


 くねくねとしながら、自分の身体の柔らかさアピールをするエドウィージュ。

 あの子というのは、トキノとかいう雌ゴリラのことだろう。


 キュッて……その隠語なに?

 怖いんだけど。首絞め落としたとかじゃないよね?


 というか、そんな頻繁に脱獄されてんじゃねえよ!

 さっさとこいつの首を落とせ! ギロチンハリーアップ!


「さあ、プレゼント大作戦の始まりよぉ」

「おい、どこに行こうとしているマガリ。お前と俺は一蓮托生。離れることはないぞ」

「離せぇ……!」

『いつも通りだなあ』


 魔剣のしみじみとした言葉が、めちゃくちゃ嫌だった。




コミカライズ第4巻が本日発売です!

よろしくお願いします!

(なろう版で久々偽・聖剣更新、楽しかったです)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ