02呪われた娘
とある貴族の家
その屋敷の書斎に当主が座っている。
その顔はどこか憔悴していて覇気が無い。
当主の娘が呪われたのだ。
日に日に憔悴しあと数日で命はないだろう。
様々な者に解呪を頼んだが皆匙を投げた。
犯人なら解けるだろうと探しているが見つからない。
「どうにか助ける手段はないのか…」
医者はどうすることも出来ないと言った。
死を待つしかないと。
「お困りですか?」
そんな声が当主の前から聞こえてくる。
いつの間に?と思った。
さっきまでは誰もいなかったはずだ。
「屋敷のものは何をしているんだ。」
仮にも貴族である。
屋敷には見張りもいる。誰も気づかなかったのか。
という事はかなりの実力者と言うことになる。
「私を殺しに来たのか…今の私なんかを狙うとはよほど暇なのか。」
当主の娘の呪いの事は有名である。
それを心配した当主も日に日に衰弱している。
娘を治すために貴族の仕事も満足に出来ていない。
わざわざ私を殺しにくるとは。そう思う。
しかし男はこう言う。
「いいえ。私はあなたを助けに来たのです!なんでも一つ願いを叶えてあげましょう!娘さんの解呪でも犯人を捕まえることも!但し一つ対価を貰いますが。」
…今なんと言った?願いを叶える?
娘を助けれる?
犯人を見つけれる?
「…本当に出来るのか?今まで誰にも見つからなかったのだぞ?」
「yes簡単に見つけることができますよ。」
そんな馬鹿な話があるか…本当なら娘を…いや
「…なら犯人を…犯人を捕まえてくれ!対価ならなんでも払う!だから犯人を!」
「確認しますが娘さんに呪いをかけた犯人を捕まえるで宜しいのですね?」
「あぁ頼む!犯人を…私の前に!」
「受けたまりました!スグにでも連れてきましょう!」
そう言うや否や男は部屋から姿を消す。
夢でも見ていたのだろうか。
しかし何故か当主は男がまたすぐに現れると確信していた。
…信じるしかなかったとも言うが…
男は言葉通りすぐに戻ってきた。
前とは違い一人の男を連れている。
「犯人を連れてきました!これで契約は成立ですね!」
「待て!本当にこいつが犯人なのか!」
「yes犯人に間違いありません。」
「あぁ俺がお前の娘を呪った奴で間違えねぇぞ。」
あぁ本当に連れてきたのか…なら
「なら!今すぐ娘の呪いを解け!今すぐに!」
「断る。」
「何故だ!なぜ私の娘に呪いをかけたのだ!」
「あんたは俺の事なんざ覚えてねぇって事だな。」
「お前など知るか!」
「俺は前に!この屋敷で警備をしてたもんだ!しかし!あんたは不当な理由で俺を警備から外した!これは復讐だ!」
実際はこの男に落ち度があった為にクビになったのだが…逆恨みである。
ちなみに当主は覚えていない。
「クソっ金なら払うだから娘の呪いを!「あのー」
「なんだ!」
「契約は成立という事で対価を頂きたいのです。」
「分かった、金なら払うから後にしろ!」
「いえ対価は金ではないのですが…対価をもらって行ってもいいですかね?」
「なんか知らんが勝手にしろ!私は速く!娘を」
「…では対価は頂いていきますので…。」
男は姿を消す。
「ちっ!早く呪いを解くのだ!金なら払う!」
「なら金を先によこせ!」
「…良いだろう。おい!誰かおらんか!金を用意しろ。」
ドアからメイドが入ってくる。
「お金ですか。かしこまりました。いくらご用意いたしましょうか?」
「とりあえず金貨100枚用意しろ。急げ!」
「かしこまりました。」
「では娘の呪いは解いてもらうぞ。」
「ええ解きますよ。ククッ」
2人は娘の部屋に向かう。
こいつには呪いを解かせそして殺そう。タダではしなさない。そう思いつつ娘の部屋に向かう。
途中メイドが金を持ってきたので犯人に渡す。
犯人はもう金の事しか頭に無いのだろう。
娘の部屋の前に二人はついた。
「入るよ娘。」
そう言ってドアを開ける。
「今日はお前の呪いを解くことの出来るやつを連れてきたんだ。今回は大丈夫。すぐに良くなるさ。」
早く解けと犯人に合図を送る当主。
「クククッ任せてくださいよ。この呪いはこいつをっと…これで呪いは解けましたよ。」
「本当だろうな!おい娘!大丈夫か!?」
しかし娘は反応をしない。
寝ているのか?と揺すって起こそうと体に触れる。
「ッ!娘!娘!」
いくら揺すっても娘は目を覚まさない。
「おい!ちゃんと呪いは解いたんだろうな!」
「ええ解きましたよ?どうかしましたか?」
「死んでいる…娘が…お前のせいだ!お前の!」
「待てよ!まだ死ぬまでに時間があるはずだ!俺の呪いのせいじゃない!」
「じゃあほかに誰がいるというんだ!なぜ娘が死んでいるのだ!」
「ソレは私のせいですね。」
いつの間にかその場には男が座っている。
「どういう事だ!お前のせいだとは!何をした!」
「私は対価を頂いただけですよ。」
「対価をだと?どういう事だ!」
「私の対価は娘さんの魂だということですよ。ただそれだけの話です。」
「娘の魂が対価だと?ふざけるな!私は娘を助けるために…!それを対価だと!ふざけるな!」
「ふふふ。しかしあなたは対価を確認しなかった。対価とは対になるもの。貴方が今最も憎んでいる者、その対はもっとも貴方が愛する娘。でしょう?」
「だからと言って!」
「それに。あなたは犯人を捕まえることを選んだ。娘の解呪ではなく。」
確かにそうだ。なぜあの時娘の解呪を頼まなかったのか?
無理だと思ったからか?
「ソレは貴方が娘を助ける事よりも犯人への復讐を選んだからですよ。」
「そんなはずが!」
「貴方が殺したのですよ。娘さんを殺したのです。復讐を優先させ貴方が殺したのです!」
「そんな…はずが…」
「私は貴方の心を読むことは容易い。だから分かるのです。貴方は復讐を望んでいると。」
「…娘…すまん、すまん私が復讐に駆られたせいで…」
「…謝って罪悪感を無くしたいのですか…私に魂を返せと言わずに。」
「…」
「やはり貴方は娘の事などどうでもよかったのですか。」
娘の愛に復讐が勝る。
「そうじゃ…ない」
「ふふふ違いませんねぇ。ふふふあはははははははははは」
「ははッ…あはははははははアハハハハハハハ アハハハ」
あぁやはり笑ってくれている。やはり笑顔はいいものだ。
涙まで流しながら笑ってくれる。
「ふふふふふふあはははははははははは」
男は音もなく姿を消す。
当主は笑う。いつまでも…
…その日ある貴族の当主が壊れたと言う噂がたった。
同時にその貴族の家から出ていく男を見たという人も。
「あぁやはり笑顔はいいものだ。」
悪魔は当主を思い出し嗤う。
「次は誰を笑顔にしようか!」
願いを叶える悪魔は嗤う。