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数人の学生が集められていたプレハブ小屋とは違う、一般的な講堂と呼ばれる空間で、担当と名乗った講師が淡々と学園生活についての説明を述べていた。
全員が、その言葉を聞き漏らすまいと、真剣な表情をしていた。
ただ、一人の少年だけは、表情こそ真剣を装っていたものの、心はここにないようだった。
「──で、クラス代表は、新入生代表の挨拶をした赤林くんに任せるということで。いいかな?」
話の流れから担当講師の告げた決定に、誰も反対する者はいないようだった。
全員の視線が一人の少年に注いだ。
命を受けた少年──赤林匠は立ち上がり、丁寧に一礼した。
それを合図に、講堂内に割れんばかりの拍手が響きわたった。
満場一致で可決されたと見て、問題ないだろう。
顔を上げた赤林が着席すると、講師は説明を再開した。
赤林は一息吐くと、先ほどまでと同じように表情は真剣なフリをしながら、講師の話は聞き流して思考に没頭した。
(……やっぱりおかしいだろ)
赤林は、講堂に誘導された直後にしたように、クラス全体を見渡した。
だが、やはり、最初に確認したのと同じ結果が待っていた。
そのクラスに、自分以上の力を持つ者はいなかった。
(俺が次席なのは……不本意ながら、否定できない事実だ。だが、ならば、主席がいるはず。なのに、成績順にクラスが分けられるこの学園の、この最上位クラスに、それほどの力を持つ奴はいない。つまり、主席はこのクラスには所属していない、ってことだ)
赤林はさらに思考を加速させる。
(そんなことがありえるか? クラスの奴は……まあ、バカそうな奴ばっかりだからか気づいてないんだろうが、担当もそのことについてはさっきから一言も触れていない。それが当然であるかの如く受け入れてやがる)
赤林は、そこで思考をやめた。
(ダメだ、埒が空かない。とにかく、このクラスに主席がいないのは間違いないだろう。主席は追々探してぶちのめすとして、今は、さっきの会長をどうぶっとばすかを考えるか……)
赤林は表情からは想像もつかない物騒な思考を、その後も一人黙々と続けた。




