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異能園〜いのえんへようこそ〜  作者: あみるニウム
エピローグ「これから」
66/67

00−2

 塵となるポロニアスを見つめながら、キリエは剣を納める。

 風に乗った塵は雲散霧消し、跡形もなく消え去った。

「今度こそ、終わったのよね?」

 キリエが独りごちる。

「ええ、終わりですよ。貴女がたの勝ちです」

 急に背後から声が聞こえてキリエは慌てて振り返った。

 危うく武器を手に取りそうになったが、背後に佇んでいたのはアルスだった。

 その肩には、小型の龍が乗っていた。

 キリエはホッと胸をなで下ろして肩の力を抜いた。

「びっくりさせないでよ、まだポロニアスが生きていたのかと思ったじゃない」

「あはは。申し訳ないです。でも、安心してください。彼は完全に消滅しました。それは間違いがありません」

『ああ、本当によくやってくれた。我からも礼を言う』

 脳にアポカリプスの声が響く。

「そうよ! あんた、アポカリプス! あんたも消滅したんじゃなかったの?」

 キリエが思い出したように尋ねた。

 どう見ても、アルスの肩に乗っているそれはアポカリプスの縮小版だった。

『確かに、我は打ち倒された。だが、アレは投影のようなもの。我の本体ではない』

「そう。それで、その姿が本体ってわけ?」

『それも違う。我が本体はアルスの中に封ぜられている。この姿もまた、仮の姿なり。この世界に姿を現すための、器のようなものなり』

「はあ……。まあ、いいわ。とにかく、これで戦いは終わりなのね?」

「ええ。貴女がたのお陰で、全ての脅威は去りました。本当に、よくがんばりましたね」

 アルスが近寄り、キリエの頭を撫でる。

 キリエは恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、されるがままにした。

「ほんとうに、よくやってくれました。一人の犠牲者もなく終えられたのは僥倖です」

「……」

 キリエは俯いて黙りこくった。

 不思議に思ったアルスは、その顔を覗き込む。

「どうしました?」

 アルスが尋ねる。

 しばらく逡巡していたキリエは力なく言った。

「ナナは……消えたわ……」

 自分の目の前で姿を消した、ナナのことを思い浮かべながら。

「ああ、それなら大丈夫です」

 アルスがあっけらかんとして言う。

「あの子は、器ですから。自身を武器という形でこの世界に留めた、ガヴラウルの。……そうですね、彼女たちについても、お話してあげましょう」

 アルスは話し始めた。

「彼女──ガヴラウルは、アポカリプスやポロニアス同様、あちらの世界では四天王と呼ばれていました。ですが、彼女もまた、アポカリプスと同じように、ポロニアスのやり方には否定的でした。

 そんな折、彼女はアポカリプスが私の中に封ぜられていることを知りました。何処で知ったのかは不明ですが……。とにかく、私たちのことを知った彼女は、私の元を訪れ、頼んだのです。私をこの世界に留めておいてくれ、来たるポロニアスとの決戦の際に力となれるように、と。ですが、私の中には既にアポカリプスが封じられている。もう一人封じるには、器が足りない。

 そこで、とある武器に封じることにしたのです。それがあの大太刀。あの姿であれば、こちらの空気の影響を受けず、力を最大限に出せますから。そして、その武器を扱う器として、とある人形に大太刀の力を使って息を吹き込んだのです。それがナナ、あの子です。

 次は、マリア──マルアージュについてですね。彼女もまた、ポロニアスをよしとしない四天王でした。彼女も三〇〇年前のアポカリプスと同じように、こちらの世界を訪れ、そして、とある少女と出会いました。それが、マリアという少女です。

 マルアージュはまだ幼かった彼女と話し、そして決めました。彼女にポロニアスを討つ仲間を集めてもらうことを。これ以上力が伸びる可能性のない自分と違い、まだ伸びしろのある少女に自分の全てを託すことを。

 結果、封じられたアポカリプスとは違い、マルアージュは少女と同化した。そのため、少女の成長は止まり、変わりに人並み以上の力を手に入れた。マルアージュの記憶と共に。

 あとは、この学園へと入り、瞬く間に台頭し、私の元を訪れた。そして、アポカリプスとの対話を経て、共にポロニアスを討つことを決めたのです」

 アルスは話を続ける。

「そして、時は来ました。貴女たちは知らなかったでしょうが、実は貴女たちは原初の五人、異能を成立させた五人の血筋の者なのです。英雄として語られる五人の、血を受け継いだ者たちなのです。

 今年の試験は私が指揮を取りました。それは、貴女たちが来ると予感していたからです。結果として、大当たりでした。彼ら五人の力を引き継いだ、いえ、彼ら以上の可能性を秘めた学生たちが、ここに集まりました。

 機はここしかない。そう思った私とアポカリプスは、秘密裏に動いていたのです。まあ、予想以上の速さでポロニアスに察知され、決戦を余儀なくされましたが……。そこに関してはお詫び申し上げるほかありません」

 アルスが頭を下げる。

 どうしたらいいかわからずキリエがオロオロとしていると、アルスはぱっと顔を上げ、そして、次なる話に移った。

「さあ、お話はここまでです。あなたの武器を、貸していただけますか?」

 話を終えると、アルスが手を差し出した。

 キリエは疑問に思いながらも、短剣を創出し、手渡した。

 短剣は、未だに光を放ち、輝いていた。

 アルスは、短剣を受け取ると、しばらく見つめていたかと思いきやその表面を指先でなぞり始めた。

 すると、短剣の光がアルスの手に吸い込まれるように消えていった。

 アルスはそのまま光を吸収した指を振るう。

 すると、その光は指先から飛び出し、キリエの横に集まり塊となった。

 その塊が段々と人の姿を模していく。

 そして、いっそう強い輝きを放つと、そこにはナナが立っていた。

「ナナ!」

 キリエがナナに抱きついた。

「キリエ……さん……?」

 ナナは訳がわからず放心するしかなかった。

「おかえり、ナナ」

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