6−16
「くっ……、ははははっ」
ポロニアスが突然笑い始める。
「なんだ? 結局そいつを頼るのか。だったら、何の問題もない。そんな小童に負けるぼくでは……ぐっ」
だが、言葉の途中で、ポロニアスが左手で頭を抱えた。
「くっ、時間をかけすぎたか……。まあいい、もう終わる。これで終わりだ」
ポロニアスが左手を翳す。
その先には、先と同様の水の塊が現出していた。
「まずい……!」
キリエが回避行動を取ろうとすると、再び脳に声が響いた。
『大丈夫です、そのまま短剣で切り裂いてください』
「でも……!」
『大丈夫です』
キリエが逡巡してる間に、ポロニアスは準備を終えていた。
そして、水の塊をこちらへと放ってきた。
「もう、どうとでもなりなさい!」
キリエが自棄になって塊を切り裂いた。
すると、塊は真っ二つに割れ、キリエを避けて後ろに飛んだ。
「……あれ?」
キリエが素っ頓狂な声を上げる。
「くそ……、そういうことか、ガヴラウル……!」
ポロニアスが悔しげに叫ぶ。
空に向かって、ここにはいない誰かに向かって叫ぶように。
『今です!』
脳に声が響く。
その声に反応して、キリエは一気にポロニアスとの距離を詰めた。
そのまま、ポロニアスの左腕を切り落とす勢いで斬りつける。
「がぁ……!」
ポロニアスは呻き声を上げ、姿勢を崩した。
「効いてる……?」
キリエは不思議に思った。
先ほどまでは全くダメージを与えられなかったのに、今は確実に攻撃が届いていた。
『ポロニアスは、その力で全身を水と同じような構成にしています。ですので、普通の攻撃では水を斬りつけたように、効果がありません』
脳に声が響く。
『ですが、私の力はそれを無効化できます。その証拠が、彼の右腕です。私の大太刀で切り落とされた右腕が、再生していないでしょう? あれは再生していないのではなく、再生できないのです。ですので、遠慮せず叩き込んでください。そうすれば、確実に勝てます。キリエさんは、強いですから』
「そういうことなら……!」
キリエは再びポロニアスとの距離を詰める。
そして、目にも止まらぬ速さで、斬撃を繰り返した。
「が、あ、あ、あ……!」
ポロニアスの苦悶の声が響きわたる。
「これで……終わりよっ!」
そして、キリエは短剣をその両肩に突き立てた。
「はあああああああ!」
そのまま、全力の雷撃を短剣に込めた。
「があああああああ……!」
ポロニアスの断末魔の叫びが響き渡る。
キリエは大きく飛び退いて距離を取った。
ポロニアスは膝をつき、前のめりに倒れていった。
「やっ……た……?」
キリエが誰に尋ねるでもなく聞く。
「やったわ!」
キリエはポロニアスに背を向け、両手を挙げて喜ぶ。
それを分かち合う者はいなかったが、キリエは大手を振って喜んだ。
刹那、背後から鈍い音が聞こえる。
驚いて振り返ると、ポロニアスに串刺しにされたマリアの姿があった。




