6−12
『ナナ……、ナナ……』
どこかから声が聞こえる。
ナナは意識だけで、その言葉に耳を傾ける。
『ナナ……、聞こえますね、ナナ……』
頷こうとするが、身体が動かない。
だが、声はナナの反応を待たずに、話を続けた。
『ナナ、あなたの力が必要なときが来ました。アルスに解放された、あなたの力を必要とするときが』
ナナは何のことかわからなかった。
確かに父であるアルスに力を解放すると言われはしたが、それが何なのかは把握していなかった。
『ナナ、あなたは人間ではありません』
声は尚も続ける。
『あなたは、人間ではなく、器です。四天王ガヴラウル……私の力を、この世界に留めておくための器です』
そういえば、父さんが言っていた気がする。
力を解放するということは、人間ではなくなるということだ、と……。
『今、あなたの仲間が、ポロニアスと戦っています。ですが、ポロニアスは普通の攻撃ではダメージすら与えられません。必要なのはあなたの力……、ガヴラウルの器たる、あなたの武器としての力です』
眩い光が眼前に広がる。
『さあ、目覚めなさい。目覚めれば、全てが整います』
光は強さを増し、ナナの身体を包み込んだ。
次の瞬間、ナナの意識は完全に覚醒する。
ナナはゆっくりと起き上がり、周囲を見渡した。
そこは、凄惨たる状況が広がっていた。
赤林、ジン、見たことのない少年が、血溜まりの中に倒れていた。
しばらく周囲の観察を続けていると、急に粉塵が辺りを覆う。
ナナが何事かと目を凝らすと、ポロニアスと対峙するキリエの姿があった。
二人は何かを話しているようだった。
「キリエさん……」
ナナは思わず声を零す。
だが、ポロニアスはもちろん、キリエにもその声は届かなかった。
話が終わったのか、ポロニアスが手を翳す。
その手先に、大きな球体が出現した。
その塊は一直線にキリエへと向かう。
そして、キリエの目の前で大きく弾け飛び、周囲に無数の水鉄砲を噴出した。
キリエはその直撃を受け、膝をついた。
ポロニアスがトドメを刺さんと再び手を翳したところで、ナナはようやく状況を把握した。
(まずい……!)
ナナが思ったときには、身体は勝手に地に手をめり込ませていた。
そして、自身の武器たる大太刀を現出させ、ポロニアスに向けて思い切り放り投げた。




