6−11
「こいつがいなきゃ、なんもできねえだろ?」
串刺しにされたリオは地に倒れ込む。
その周囲に、ジワジワと血が広がっていく。
「よくも……、よくもリオを……!」
キリエが怒りを爆発させる。
すぐさま二本の短剣を創出し、それに雷を纏わせて構えた。
「良いねえ。お前には無防備な本体をいたぶられた分、たーっぷりとお返しをしなきゃだからなあ」
対して、ポロニアスは口許を歪ませた。
「絶対に許さない。絶対にあんたは許さないっ」
(でも、このまま戦ったら横たわってる二人を巻き込んじゃう。何とか引き離さないと……!)
感情は爆発しながらも、キリエは冷静だった。
まずは戦場を移すことが先決と判断したキリエは、短剣をそのままポロニアスに向け、雷撃を放った。
「おっと……」
ポロニアスは横に飛び、難なくキリエの短剣から放たれた雷撃を躱す。
だが、避けられることは気にとめず、キリエは再び雷撃を放った。
うまく角度を調整し、ポロニアスが避けるであろう方向を計算して、何度も雷撃を放った。
「なんのお遊びかな、これは」
ポロニアスが言う。
「何言ってるの、もう戦闘は始まってるわ……よっ!」
標的が目標の座標に辿りつくと同時に、キリエは一直線にポロニアスに向けて駆け出した。
ポロニアスは一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに残虐的な笑みを浮かべ、その手を大きく振りかぶった。
キリエの二本の短剣とポロニアスのかぎ爪が衝突する。
あまりの衝撃に、二人の周囲に粉塵が上がった。
「おやあ、さっきと何か違うな、君?」
ポロニアスが尋ねる。
だが、キリエは応える必要はないと態度で示し、次なる斬撃を繰り出していた。
「ぐっ」
ポロニアスが、攻撃を捌きながらも、一歩、二歩と後退する。
キリエはここぞとばかりに、雷を纏わせた斬撃を放ち続けた。
幾度に渡る斬撃を捌いていたポロニアスが、ふと姿勢を崩す。
(今だ……!)
その隙を逃すまいと、キリエは滑り込むようにポロニアスの脇に入り込む。
勢いもそのままに、両の短剣で全力の一撃を放った。
「ぐっ……」
ポロニアスが声を漏らす。
キリエは勢いのままにポロニアスの脇を通り抜け、背面へと回っていた。
だが、そこで見た光景に、硬直してしまう。
ポロニアスにつけたはずの傷が、みるみるうちに塞がっていった。
「ふぅ」
ポロニアスが軽く肩を回す。
そして振り返り、キリエを睨んだ。
「やってくれる」
ポロニアスは首を鳴らしながら、キリエに近づいてきた。
キリエは我を取り戻し、短剣を構えた。
(どうなってるの? 傷が一瞬の内に?)
ポロニアスと対峙しながら、今の現象を整理する。
だが、原理が全くわからなかった。
キリエの攻撃は確実に届いていた。
それなのに、ポロニアスは全くダメージを受けていない。
「さあ、つづきをやろうか」
ポロニアスが走り寄ってくる。
キリエは思考を止め、とにかく攻撃を加えることに専念した。
先とは逆に、ポロニアスが次々と繰り出すのを、キリエが捌いていた。
ポロニアスは相変わらず、どこか楽しげだった。
(どうする? どう攻撃すれば良い?)
キリエは考える。
攻撃を捌きながら、次はどんな攻撃をすれば良いのかを考える。
(そうだ、アレなら……!)
ふと、キリエはある手段を思い出した。
それしかないと判断したキリエは、攻撃を受け流しながら隙を伺う。
(今だ!)
一瞬の隙をつき、キリエがポロニアスの背後へと回り、その短剣を背中に突き立てた。
そのまま、短剣を通して雷撃を内部に送り込む。
「ぐがっ」
すると、ポロニアスが痙攣するように震え、片膝をついた。
キリエは深追いは禁物と、即座に場を離れる。
そして、短剣を構えながら、ポロニアスの様子を窺った。
「やってくれる……、やってくれるねえ……!」
追い込まれているはずなのに、どこか楽しげなポロニアスの声が響く。
背中に短剣を突き刺しつけたはずの傷は、やはり即座に塞がっていった。
キリエは奇妙さも感じながらも、ポロニアスを睨み続けた。
ポロニアスはゆっくりと振り返ると、大手を広げて尋ねてきた。
「惜しい。その力、実に惜しい。ここで失わせてしまうには、勿体なさすぎる。もう一度問おう。ぼくの配下に加わる気はないか?」
「何度言われても同じよ。お断りだわ」
キリエが短剣を強く握りしめながら返す。
ポロニアスは首を横に振り、至極残念といった表情を浮かべた。
「本当に残念だ。では、やはり死んでくれ」
ポロニアスは言い終えると、片手を翳す。
その先に、大きな水の塊が現出する。
その塊はみるみる大きくなり、バスケットボール大にまで膨れる。
ポロニアスがふんと力を入れると、その球体が噴出され、キリエへと向かった。
あまりの速度のためか、球体は楕円状に伸びていた。
(ダメ、間に合わない……!)
回避は間に合わないと判断したキリエは、短剣を使って受け流すことを決める。
だが、身体を逸らしながら球体を短剣で滑らさんとすると、短剣が触れた瞬間に球体がはじけた。
そして、球体を中心とした全方向に細かな水の弾丸が弾け飛ぶ。
キリエは驚くばかりで何も対処することができず、全身に水の弾丸を受けた。
「かっ……あ……」
キリエから苦悶の声が漏れる。
だが、ポロニアスは再び手をキリエに向けて翳していた。
「さようなら♪」




