6−8
こちらに歩み寄るポロニアスの身体に変化が起こる。
背中から仰々しい黒い翼が生え、手足が細く、長く伸び、指はかぎ爪のように鋭くなる。
顔の輪郭も変化し、少年のそれではなくなる。
その姿はまさに、悪魔だった。
少年の面影はどこにもなく、悪魔そのものとなったポロニアスの姿が、そこにはあった。
「本気で怒らせたことを後悔しろ」
ポロニアスが呟く。
キリエたちは身構えるが、忽然とポロニアスの姿が消えた。
次の瞬間、
「あ……う……」
だれかの呻き声が聞こえる。
キリエが驚いて振り返ると、あんなの背後にポロニアスの姿があった。
その手は振り下ろされており、明らかに何かを引き裂いた後だった。
あんなが前のめりに倒れる。
その背中には五本の裂かれた痕と、滲み始める血の影があった。
「あんな!」
キリエが駆け寄ろうとするが、誰かの手がそれを静止する。
その手は、先ほど突如として現れた少年のものだった。
「無闇に近づいちゃダメだ。あんなの二の舞になる」
「でもっ!」
「落ち着いて、キリエちゃん。あいつを引き離すことさえできれば、僕が治療できる。僕を……リオを信じて」
猫の姿から変じた少年──リオは力強く言った。
キリエは歯がみしながらも、その場は引くことにした。
「さて、次は誰にしようかなあ?」
ポロニアスが楽しげに呟く。
舌なめずりし、次の獲物を見定めている様子だった。
ジンが抱きかかえたナナを地に横たえ、キリエとリオに視線を送り拳を構える。
赤林も二人を一瞥すると、剣を構えた。
ポロニアスの口許が歪む。
それを合図にしたように、赤林とジンがポロニアスに向かって駆けた。




