6−7
『赤林が気づいてくれたみたいだ』
肩に乗るリオが話しかけてくる。
キリエは頷き、そそくさと目的地への移動を済ませた。
ナナの姿をしたポロニアスから死角となる位置に身を隠し、キリエは機を伺う。
まもなく、ナナと赤林たちの戦闘が始まった。
ポロニアスは戦闘に集中していて、こちらに気をやる様子はない。
今しかないと、キリエは行動に移った。
横たわるポロニアス本体との距離を一瞬にして詰める。
そして、創出した短剣に雷を纏わせ、ポロニアスへと突き立てた。
「──があっ?」
苦痛に歪む声が聞こえる。
うまくいったと思った瞬間、背筋に寒気が走って、キリエはナナに向き直った。
そこには殺意をむき出しにしてキリエを睨むナナの姿があった。
キリエは一瞬怖じ気づきそうになったが、頭を振って切り替える。
そして、再び短剣を本体に突き立てんと振りかぶった。
だが、次の瞬間、本体が蒸気に包まれたかと思いきや、そのまま霧となって消えた。
「やってくれるじゃねえか……」
元の身体に戻ったポロニアスが、キリエから少し離れた位置に出現した。
その声には、明確な怒りが滲んでいた。
仲間たちがキリエの元へと駆け寄る。
そこには、ジンに抱えられて気を失う、ナナの姿もあった。
「やっぱり先に始末しておくべきだったか」
ポロニアスがキリエたちから視線を外し、木陰で座り込むマリアたちへと向ける。
次の瞬間、忽然とポロニアスの姿が消えた。
「しまった……!」
キリエが振り返る。
その先には、木陰にて横たわるアルスと傍に控える龍、そして、その脇に屈むマリアの姿があった。
その横にポロニアスが姿を現す。
だが、治療に集中しているためか、マリアは屈んだ姿勢のまま身動き一つしなかった。
『くっ……、仕方ないか……』
キリエの肩に乗っていたリオの声が響く。
そして、ひょいと肩から降りると、その身体が光に包まれた。
次の瞬間、見たことのない少年がその場に現れた。
病的に肌が白く、手足の細い少年が。
「説明は割愛するよ。今はマリアを助けないと」
少年はそう言うと、手をかざした。
すると、その手先に、渦巻く竜巻が出現した。
「はっ」
少年の声の応じて、竜巻がポロニアスへと向かう。
ポロニアスは即座に竜巻の接近を察知し、大きく横に飛び退いた。
竜巻はそのままマリアへと向かう。
マリアたちの眼前にたどり着いた竜巻は、突如として形状を変え、保護するかのように彼女たちを包み込んだ。
「ちっ……」
ポロニアスの舌打ちが聞こえる。
ポロニアスはゆっくりとこちらを睥睨し、怒気の孕んだ声で言った。
「君たちは本当に邪魔だなあ。邪魔にもほどがある。いい加減お遊びはやめにしよう」
そして、ゆっくりと、キリエたちへと歩み寄ってきた。




