6−1
「三〇〇年、どこに隠れていたのかと思ったら、こんなところにいたんだあ。そりゃ見つからないはずだよねぇ」
恐怖を煽り立てるような声がアルスの背後から聞こえる。
そして、手刀が抜かれると、アルスは血を吐いてその場に倒れた。
『アルス!』
先ほど倒したはずのアポカリプスの声が響く。
アルスの肩には乗っていた龍が、心配そうにアルスの脇に降り立ち、顔を覗き込んでいた。
「やっぱり、人間ってもろいなあ。なんでこんな奴らがこの世界を支配してるんだ? どう考えてもおかしいよ」
アルスが倒れたことで、その背後の存在が露わになった。
まだ少年と言えるほどの背丈の人間が、そこに佇んでいた。
『ポロニアス、貴様……!』
「あれ? あれれー? 怒った? 怒っちゃった? あははー、ごめんねー。こーんな脆いと思わなかったから、手を抜くのを忘れちゃったー♪ まあ、身体から手は抜いたんだけどねー♪」
ポロニアスと呼ばれた少年が笑いながら言った。
その声を聞くだけで、キリエたちは悍ましいものを感じ、背筋に寒気が走った。
「そういうお前も、この世界では人間の器を借りなければまともでいられないだろう? 人のことは言えまい」
いつの間にか、木陰で座り込んでいたはずのマリアが、倒れ臥すアルスの横に立っていた。
「誰だ、お前……、て、あれ、あれれー? もしかして、君、マルアージュ? あはは、こいつは傑作だ! 最近姿を眩ましてると思ってたら、こんなところにいたなんて!」
ポロニアスは笑う。
腹を抱えながら、呵々大笑する。
「でも、そうだね。ここの空気はまずすぎる。だから、こいつらの身体を借りるしかない。多少力は落ちるが、まあ、そこはご愛嬌だよねえ」
ポロニアスは続けた。
「じゃ、君も死んでもらおうかなー?」
ポロニアスが手刀を構える。
対して、マリアは身構えることもなく言った。
「いいや、お前の相手は私じゃない」
言い終えるや否や、マリアがアルスの身体に触れる。
次の瞬間に、姿が消えた。
そして、マリアが元いた木陰から、声が聞こえた。
「お前の相手は彼らだよ。私たちの誇るべき教え子だ」
「ふぅん……」
ポロニアスが値踏みするかのように学生たちを睥睨する。
「ま、いいや。どうせ滅ぼすつもりだったんだし」
しばらくして、ポロニアスは恐ろしいことを平然として言ってのけた。
遊びに行くのと同じような、軽いノリで滅ぼすと言い放った。
「お前ら、頼んだぞ! アルスは私が何とかする!」
マリアが木陰から叫ぶ。
言い終えると、マリアはアルスの身体へと手をかざし、目を閉じた。
「やるしか……、ないみたいね……」
キリエが逡巡しながらも武器を構える。
それを合図に、全員が臨戦態勢を取った。
「おや、おややや……?」
だが、その姿を見たポロニアスが何かを見つけたように学生たちを見つめる。
「あはは、なるほど。これは面白い。そういうことか、アポカリプス!」
そして、何かを得心したように頷きながら言った。
「良いだろう。君たちの力、見せておくれ。存分に楽しませておくれよ」
言い終えると、ポロニアスは手をこまねいた。
そして、かかってこいと言わんばかりの不敵な笑みを浮かべた。
同時に、周囲に無数の幻魔生物が出現した。




