5−10
「マリア!」
キリエが倒れたマリアに走り寄る。
他の学生たちもそれに倣い、マリアの元へと駆け寄った。
キリエがマリアを抱きかかえて仰向けにする。
何とか、マリアは無事なようだった。
そのことで、全員がホッと胸をなで下ろした。
「はあ……、はあ……」
マリアが荒い息づかいが聞こえる。
キリエたちは心配そうにマリアを覗き込んでいたが、しばらくして、マリアは自力で身体を起こした。
「すま……んな……、少し……、力を使いすぎた……。だが……、参考には……、なったかな……?」
マリアは、言葉は途切れ途切れながらも、その顔には笑みを作っていた。
だが、その笑みはどこか歪で、今のマリアが正常ではないことを物語っていた。
「すごかった……、すごかったわ、マリア……」
キリエがつぶやくように感想を言う。
マリアは再び歪に笑うと、ふうと一息吐いた。
「それは……、よかった……。私の講義は……、ここまでだ……。あとは君たちに任せよう……」
そう言うと、マリアはよろよろと立ち上がった。
「マリア、無理をしちゃ……」
「大丈夫だ」
とても大丈夫そうには見えない足取りで、マリアが歩く。
そして、よろよろと近くの木陰へと歩いていった。
木陰にたどり着き、木の幹に背中を預ける。
そのまま、ずるずると座り込み、動かなくなった。
「……やるわよ」
キリエがマリアから視線を外し、アポカリプスを睨みながら言った。
全員が首肯し、武器を構えた。




