表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能園〜いのえんへようこそ〜  作者: あみるニウム
第五章「異能実践」
37/67

5−3

「くそが……、なんだってこんな数が……」

 長髪の男──学園生会会長は、言いながらも激しく動き回っていた。

 次から次へと襲ってくる幻魔生物を、その拳で打ち砕いていた。

「おい、救援要請は出したのか?」

 男は振り返らずに背後に声をかける。

「は、はい! もうまもなく到着するかと……」

 背後で戦闘を繰り広げていた副会長が、槍を振り回しながら答えた。

 その周囲には、他にも数人、学生と思しき者たちが武器を手に取り戦っていた。

「やあやあやあ、お待たせしてすまないね」

 突然、場にそぐわない口調の声が聞こえてきた。

 会長は舌打ちをすると、周囲の幻魔生物を一掃し、高く飛び上がって声の出所に移動した。

「よりによって、お前が来るとはな」

 そして、声の主に声をかけた。

「はっはっはっ、予想外だろう? しかし、残念なことに、私はただの引率だ」

 声をかけられたマリアは、緊張感のない口調で答えた。

 その態度に、会長は再度舌打ちをした。

「ちょっと、マリア! 待ちなさいよ! いい加減説明……を……」

 まもなく、キリエたちが息を切らしながらその場に到着した。

 だが、キリエたちはマリアの横に立つ会長を視界に収め、立ち竦んでしまった。

「えっと……、どういう状況……?」

 キリエが、会長とマリアを交互に見ながら、状況の説明を求める。

 マリアはからからと笑ってから、それに応えた。

「さっきも言っただろう? 今から学園生会と共闘して幻魔生物を殲滅する、簡単なお仕事をしてもらうだけだ」

「……は?」

 あっけらかんと言うマリアに、キリエから素っ頓狂な声が漏れた。

 他の五人も呆気に取られて言葉が出ない様子だった。

「ち、ちょっと待ってください、いきなり幻魔生物と戦えと言われても……」

 一番に冷静さを取り戻した赤林が言った。

 対して、マリアは説明もせずに話題を変えた。

「ああ、私に対してそんな上っ面の気遣いはいらないよ、赤林。リオにしていたようにざっくばらんに話してくれたまえ」

 赤林の身体がビクッと震えた。

 そして、はあと一息吐くと、髪をかき上げながら言った。

「聞こえてたのかよ、あの会話。声は絞ったつもりだったんだがな」

「はは、大丈夫、他の連中には聞こえちゃいないさ。私の耳が良いだけだ」

 マリアが呵々大笑した。

 赤林は舌打ちをすると、話を戻した。

「ちっ……。まあ良い。とりあえず、いきなり幻魔生物と戦えと言われても、訳がわからねえ。もっとちゃんと──」

 赤林の言葉の途中で、幻魔生物が彼らの元に飛び込んできた。

 ギリギリで察知した六人は、大きく飛び退いてそれを回避した。

 会長がその幻魔生物と戦いを始める。

 会長がチラとマリアを見遣ると、マリアは軽く頷き、学生たちに向き直った。

「この通り、君らには最早、選択の余地がない。やらなければ死ぬだけだぞ?」

 マリアが事もなげに言う。

 その言葉に、全員の背筋に寒気が走った。

「ちっ、わかったよやりゃあ良いんだろ、やりゃあ」

 赤林は言い終えるなり剣を創出して構えた。

『残念だけど、本当に選択の余地はないみたいだしね』

 リオも杖を創出して構える。

 他の学生たちも、各々自身の武器を創出し、戦闘態勢を取った。

 だが、ただ一人、キリエだけはギリと歯をかみしめていた。

「私は……戦えない……」

 言いながら、右手へと視線を落とす。

 視線の先には、アクアマリンの失われた籠手が装着されていた。

「心配するな」

 いつの間にか真横にいたマリアが声をかける。

「これを貸してやる」

 言うなり、キリエの籠手に手をかざした。

 次の瞬間には、籠手にアクアマリンが填まっていた。

 キリエは驚いてマリアを見遣った。

「これで戦えるだろう?」

 マリアがニヤリと笑う。

 その右手には、アクアマリンの失われた籠手が装着されていた。

「でも、それじゃあんたが!」

「大丈夫、私にはこれがある」

 左手には、別の籠手がつけられていた。

 だが、填まっている宝石は、アクアマリンではなかった。

 填まっていたのは、ラピスラズリだった。

「でも……!」

 尚もキリエは食い下がる。

 だが、マリアは首を横に振って、それを制止した。

「確かに、ラピスラズリは通常、異能をの力を引き出すことには使われない。だが、決して引き出せないわけではない。いや、むしろ、アクアマリンよりも引き出せると言って良いだろう。扱いが難しいというだけで。なに、心配しなくとも、私なら何とか扱える。だから気にする必要はない」

 キリエはまだ逡巡しているようだった。

 少しの間、俯いて迷った表情を浮かべていたが、ようやく顔を起こすと、マリアに力強い視線を送った。

「話はまとまったか?」

 幻魔生物を屠った会長が大きく飛んで横に降りてくる。

「ああ、待たせてすまないな」

 マリアは軽く詫びを入れて、未だ数の減らない幻魔生物たちを睨んだ。

 キリエはグッと拳を握り締めてから、幻魔生物を強く睨んだ。

「さあ、行ってこい。お前らの実践デビューだ」

 マリアの言葉を合図に、六人は幻魔生物の群れの渦中へと走り去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ