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「なんでこんなところに……?」
ステージ中央でナナの肩に手を置いていたキリエが呟いた。
他のW組メンバーも、放心しているようで、その場を動くことができなくなっていた。
その視線の先には、突如として観客席に沸いて出た幻魔生物がいた。
おぞましい姿をした怪物が、怖気の走る咆吼を上げていた。
「何やってるんだ、お前ら!」
赤林がこちらに走り寄りながら叫んだ。
赤林は五人の元にたどりつくと言葉を続けた。
「全員学舎に退避だ、行くぞ!」
赤林の言葉に五人は我を取り戻す。
だが、次の瞬間に凄まじい咆哮が耳を劈いた。
全員が耳を塞ぐ。
「なっ」
咆吼が止むなり音の出所である幻魔生物に目を遣ったキリエは言葉を失った。
先ほどまで一体しかいなかったはずの幻魔生物が、三体に増えていた。
『仲間を呼ばれたみたいだね。本当に早く退避した方がいい』
リオの声が全員の元に届く。
五人は頷きあい、出口に向けて走り出そうとする。
すると突然、行く先を阻むように影が現れた。
全員が驚いて、体を強ばらせた。
「すまんな、君らにはまだやることがある」
現れた影はマリアだった。
マリアがニヤニヤとしながら、退路を塞いでいた。
「マリア? ちょっとびっくりさせないでよ……、こっちにも幻魔生物が出たのかと思ったじゃない……」
キリエが胸をなで下ろしながら言った。
「失礼だな。どこをどう見たらこの愛らしい姿が幻魔生物に見えるんだ」
マリアがからからと笑いながら答えた。
今が緊急事態だという焦りは、微塵も感じられなかった。
「この人は……?」
赤林が疑問を投げかける。
「私たちの担当講師よ」
キリエがそれに答え、改めてマリアに向き直る。
「それで? この状況でやることって何よ?」
落ち着き払ったマリアを見ていると、キリエも落ち着きを取り戻してきた。
そして、マリアにやるべきことを尋ねた。
「なぁに、簡単なことさ」
マリアがキリエの肩に手を置く。
次の瞬間、キリエの姿が忽然と消えた。
五人が驚き戸惑う。
何が起きているのか全くわからなかった。
「何も難しいことはない。ちょっと学園生会に手を貸してやるだけの、簡単なお仕事だ」
言いながら、マリアは次々と肩を叩いていった。
叩かれた者から、一人、また一人と、その場から姿を消した。




