5−1
「ちっ、学園生会の連中は何してやがる……」
客席の一画、講師陣が集うスペースから、マリアがぼやいた。
おぞましい咆吼を上げる幻魔生物を、鋭い視線で睨んでいた。
「Aクラス以上の担当は幻魔生物の処理を! 他の連中は学生の待避を誘導しろっ!」
「はっ」
即座にマリアが指示を出し、その場にいた講師陣が動き出す。
マリアがチラと横に目を遣ると、先ほどまで隣にいたはずの理事長が姿を消していた。
「逃げやがったな、あの野郎……」
マリアの言葉に怒りが滲む。
理事長を探しに行くか否かで悩んでいると、
「マリア先生!」
ふいに名前を呼ばれて我に返った。
呼びかけたのは、一人の女教員だった。
「……どうした?」
マリアが努めて冷静に尋ねる。
「そ、その、が、学園生会から、救援要請が……」
女教員が慌てながらも伝えるべきことを伝えた。
その言葉にマリアが苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。
「このタイミングでか……。いや、このタイミングだからこそか?」
マリアが幻魔生物を睨む。
視線の先の幻魔生物は、いつの間にか、三体に増えていた。
「こっちだって向こうに手を貸せるほどの人手は……、いや、待てよ……?」
マリアはふと思いついたような顔をする。
そして、ニヤリと顔をゆがめた。
「わかった、そっちは私が何とかしよう。こっちのことは頼めるな?」
「は、はい!」
「よし、では、ちょっと行ってくる」
そう言うと、マリアの姿が忽然と消えた。




