4−10
ステージ中央で、キリエと木村が睨み合う。
両者共に気合いは十分と言った様子だった。
「舐めていて悪かったな」
ふと、木村が声をかける。
「はっきり言って、俺らはお前たちを舐めていた」
木村は話を続けた。
キリエは無言でその話を聞いていた。
「だが、もう、侮ったりはしない。お前たちは恐るべきに足る学生だ。全力でやらせてもらう」
言い終えるや否や、木村は刀を創出して構えた。
「ふん。なんだっていいわ。勝つのは私たちなんだから」
そして、キリエも二本の短剣を創出して構えた。
「両者、準備は良いですか?」
キリエと木村の二人が同時に首肯する。
「それでは、はじめ!」
そして、審判から開始が告げられた。
開始の合図と共に、両者の姿が消える。
刹那、ガキンと、何かがぶつかったような音が響いた。
二人の姿を見失った観客たちが音の出所に目を遣ると、ステージ中央でキリエの短剣と木村の刀が交差していた。
初っ端から二人は全力でぶつかっていた。
「やはり強いな」
木村がつぶやく。
「それはどうも」
対するキリエは返答するなり左に身体を回転させ、その勢いのまま斬りかかった。
木村は事もなげにそれに対応する。
ふたたびガキンと音が鳴り、二人の武器が合わさった。
二度の攻撃を経た二人は、一度距離を取る。
互いに睨み合い、次の機を伺っているようだった。
少しの間を置いて、木村が先に動いた。
一直線に、キリエに向かって走り出した。
キリエは両の短剣を構え、木村から繰り出される攻撃を防ごうと構えた。
だが、次の瞬間に驚いた顔をして、大きく飛び退いた。
刹那、キリエがいた場所には、二振りの斬撃が襲いかかっていた。
斬撃を放った木村は目を細めてキリエを見つめた。
「気づいたか」
木村が尋ねる。
「ええ、ギリギリでね。危なかったわ」
キリエは冷や汗をかきながら武器を構えていた。
木村の両手には、一本ずつの刀が握られていた。
右手と左手に、それぞれ別の刀を装備していた。
「ふむ、割と秘策だったんだがな」
木村がぼやくように言った。
キリエは焦りの色を濃くしながらも、それに対する言葉を絞り出した。
「私も、短剣とはいえ、二刀流だったからこそかもね。無意識に、相手が二刀流の可能性もあると、どこかで思っていたのかも」
「なるほど」
得心すると、木村が対の剣を構える。
「では、ここからが本番ということで」
そして、キリエに向かって物凄い速度で詰め寄った。
観客の目に移らないほどの速さで移動した木村は、そこから息をつく間もないほどの連撃を繰り出した。
「くっ」
キリエは後ずさりしながらも何とか攻撃を捌く。
だが、辛うじて防ぐのがやっとと言った様子で、防戦一方だった。
「なんだ、この程度か。買い被りすぎたか?」
木村がまたもやぼやくように言った。
キリエはギリと歯をかみしめ、
「舐めんじゃないわよっ」
と叫んだ。
次の瞬間、キリエが木村の視界から消える。
そして、その次の瞬間には、木村を背後からの鈍痛が襲った。
「くっ」
木村が苦痛に顔を歪める。
背中には、二本の短剣が突き刺さっていた。
大きく上に飛び、そのまま木村を飛び越え、身体を回転させて短剣を突き刺すキリエの姿がそこにはあった。
短剣を軸に逆立ちをするような状態だったキリエは、短剣から手を離し、木村の後方に着地する。
そして、数歩距離を取って、拳を構えた。
「やってくれるな……」
木村が後方へと振り返った。
その表情には、如実に怒りの感情が滲んでいた。
木村は全身に力を込める。
すると、背中に突き刺さっていたいた短剣がゆっくりと抜け始めた。
「ぬんっ」
掛け声と同時に、短剣が地に落ち、消滅する。
木村は短剣が消えた箇所を一瞥するとキリエに向き直った。
「やはり侮れない。こうなったら、とっておきを見せてやる」
木村はそう言うと、両の刀を交差させた。
すると、突如として、刀身が燃え盛るような炎を纏った。
「なっ」
キリエは驚いた。
武器に現象を纏わせる異能は、とても高度な異能だったからだ。
一介の学生にはできる芸当ではない。
キリエは恐れ戦くように一歩後ずさった。
「終わりだ」
だか、その瞬間に、横から声が聞こえた。
いつの間にか、木村がキリエの側面に移動していた。
「しまっ……」
慌てて両腕をクロスして防御姿勢を取る。
木村から放たれた攻撃はキリエの籠手へと直撃した。
刹那、ピキッという小気味の良い音がする。
そして、キリエの籠手に填められたアクアマリンが、粉々に砕けた。
「そこまで! 勝者、S組木村!」




