4−7
中央に進み出た二人の女学生が対峙する。
「よろしくおねがいしますね〜」
その片方、あんなが力の抜けた声で言った。
「何よ、軟弱そうな子……。バカっぽいし」
対してもう片方の、雪村と呼ばれた女学生がつぶやいた。
「バカじゃないですぅ!」
あんながふて腐れた様子を見せる。
雪村はイラッとしながら戦闘態勢を取った。
「緑音さん、準備を」
「これで大丈夫です〜」
あんなは特に体勢を整えることもなく言った。
幸村は舐められていると思い、更に苛立ちを覚えた。
「……わかりました。それでは、はじめ!」
審判が開始を宣言した。
次の瞬間、あんなの姿が消えた。
そして、なにかを弾くような音が聞こえた。
「えっ、ちょっ、どこ……」
「雪村! 上だ!」
その声に反応して上を向くと、無数の光の矢が降り注いできていた。
「なによっ……、これっ……!」
雪村は後ろに飛び退きながら回避する。
だが、光の矢は止まることなく次々と降り注いだ。
「うふふ〜、特訓の成果です〜」
あんながニコニコとしながら言った。
その手に持っているのは、いつもの弓ではなかった。
腕の中にあるのは、琴だった。
あんなは手に持つ琴を、止まることなく掻き鳴らしていた。
「音階がまだ不安定ですねぇ……、練習が足りませんでしたぁ」
あんなはどうでも良いことを反省していた。
その間も弦が弾かれるのに合わせて光の矢が出現しては雪村に向かって突進していた。
「くっ……」
一歩、また一歩と、雪村は後ずさる。
「雪村!」
その声にハッとなり、足元をに目を遣った。
気づけば、雪村はステージの端まで追いやられていた。
「舐めんじゃ……ないわよっ!」
覚悟を決めた雪村は、自身の武器である槍を創出し、迫る来る光の矢に斬りかかった。
一本、また一本と光の矢を処理し、場外負けは避けんと踏ん張った。
「あらぁ……、効かなくなっちゃったのですぅ……」
琴を爪弾きながら、あんながつぶやく。
「じゃあ、とっておきをプレゼントしますね〜」
そして、そう言うと琴を消失させ、今度は弓を出現させた。
だが、そこに矢の姿はない。
あんなは矢を番えずに弓の弦を大きく引くと、そのまま手を離した。
すると、弦が弾かれたのと同時に、凄まじい勢いで光の矢が発射された。
先ほどまでの光の矢よりも大きく速いその矢は、一直線に雪村に向かって走った。
「……舐めるなっ」
弓から放たれた光の矢を、雪村は同じように破壊せんと槍を構えた。
「ていっ」
そして、槍をまっすぐ迫り来る矢に突き出し、真っ向勝負を挑んだ。
激しい衝突音のあと、雪村はあまりの衝撃にバランスを崩す。
「そこまで! 勝者、W組緑音!」
次の瞬間に、勝敗が告げられた。
雪村はバランスを崩した拍子に、左足を場外に着いてしまっていた。
一歩、ステージの外へ出てしまっていた。
「くっ」
雪村が悔しそうに唇を噛む。
「おつかれさまでしたぁ」
微塵も疲れていなさそうなあんなが、いつのまにか雪村の目の前に降り立っており、手を差し出していた。
「次は……、負けないわ……」
雪村は悔しげに言いながらもその手を取った。
「はい〜、私も負けません〜」
対して、あんなはあっけらかんとして言った。
「むかつく……」
雪村はそっぽを向きながらつぶやいた。
だが、その顔にはどこか楽しげな様子が見て取れた。




