4−6
真田が物凄い勢いでジンに斬撃を放った。
だが、ジンは微動だにすることなく、それを片腕で受け止めた。
「や、やるじゃないか……」
先手必勝と思い放った渾身の一撃を防がれ、真田は後ずさりした。
「それなら、これでどうだ!」
そして、今度は剣を横向きに薙いだ。
だが、またもや微動だにしないジンに攻撃を弾かれる。
真田は薄ら寒い物を覚え、数歩飛び退いた。
「なんなんだよ……、お前……」
一切攻撃が通らないジンに怖じ気づきながら真田が訪ねる。
しかし、やはりジンは何も答えなかった。
「くそ……、くそ……、くそ……!」
恐怖に心が支配されかけた真田は、がむしゃらに攻撃を放ち続けた。
だが、ジンは一歩もその場を動くことなく、腕だけで全ての攻撃を裁いた。
「なんなんだよ……、なんなんだよ……! お前はW組じゃないのかよっ!」
どこにぶつければいいのかわからない感情を、真田は剣に乗せ続けた。
しばらく真田の攻撃が続いたが、ふいに、ジンが真田の剣を掴み、動きを静止させた。
「なっ……!」
次の瞬間、剣の掴んでいない方の手で、ジンは掌底を放った。
鳩尾に無防備に攻撃を受けた真田は、そのまま後方に吹っ飛んだ。
「かはっ」
そして、そのまま地に横たわり、動けなくなる。
「そこまで! 勝者、W組青野!」
次の瞬間、審判から勝敗が告げられた。
ジンは無言で一礼すると踵を返し、仲間の元へと向かった。
「どうなってるんだよ」
「廃棄物組じゃねえのかよ、相手はS組だぞ……」
「さっきの戦いと言い、どこが廃棄物なんだよ」
場内がどよめいていた。
先の戦いと言い、予想外の展開を見せる試合に、全員が全員戸惑っているようだった。
「すまねえ、負けちまった……」
赤林に肩を借りながら戻ってきた真田が仲間に詫びる。
体だけでなく、心も打ちのめされたようで、言葉に力がなかった。
あまりのことに、S組代表のメンバーたちも、動揺を隠せなかった。
何せ、あまりにも一方的な戦いだったからだ。
事前のミーティングで、赤林から、W組に強い学生がいるとは聞いていた。
だが、それは初戦のリオだけの話だろうと、全員が思っていた。
あの赤林と戦った、リオこそがW組の隠し球だと。
あまりのことに動揺を続けるメンバーに、ただ一人、微塵の動揺も見せていなかった赤林が、声をかけた。
「落ち着こう、みんな。確かに、今の相手は強かった。だが、まだ試合に負けたわけじゃない」
「……そ、そうだよな。たまたま相手が悪かっただけだよな」
一人の学生が赤林の話に首肯する。
「そ、そうよ、次から二戦勝てば、私たちの勝ちだわ」
もう一人の女学生も、動揺を治め、拳を握る。
「ああ、そうだ……。一回負けたぐらい、どうってことはない!」
そして、残りの一人も気を持ち直し、S組メンバーは落ち着きと活気を取り戻した。
赤林はにっこりと笑うと、勝利に沸くW組を視線を送り、真剣な顔をした。
(今のを見て確信した。あいつらは、廃棄物なんかじゃない。おそらく、Wには別の意味がある)
そして、脳内だけで言葉を発した。
(それに、主席の野郎も、その次の野郎も、動きが素人じゃない。明らかに実践慣れしてやがる)
赤林は視線をW組から逸らし、仲間に戻した。
(おそらくは、次の奴も相当な手練れだろう。だが、勝つのは俺たちだ)
「第三戦、S組雪村、W組緑音、中央へ」
審判の声が響く。
赤林は笑顔を再び浮かべ、仲間たちに声援を送った。
「さあ、次の試合だ。勝ちに行くぞ」
S組全員が大きな声でそれに応じ、代表と呼ばれた女学生、雪村が前へと歩み出た。




