3−4
「素人相手に容赦なさすぎよ……」
地に座り込むキリエが口を尖らせた。
「まあまあ、そう言うな。どの程度できるかを測るためだったんだから」
マリアがからからと笑いながら言った。
だが、キリエはまだ納得のいっていない様子で、ふて腐れていた。
『先生、やっぱり強いんですね』
ちょこんと座る猫──リオが尊敬を込めて言った。
キリエと違い、悔しさなどは微塵も感じていないようだった。
「まあ、それなりにはな。だが、世の中にはもっとすごい奴がわんさかいるぞ? この学園にだって、たくさんいる」
『へえ……。これからが楽しみだなあ』
リオは目を輝かせているようだった。
猫の姿を通じてでも、それが感じ取れた。
「さて、全員の力は把握できたし、いよいよ本番だ。今から地獄の訓練を開始する」
「地獄……」
「嫌ですぅ……」
キリエとあんなが同時に呟いた。
ナナとジンも身構えているようだったが、リオだけはどこか楽しげな様子が猫から伝わってきた。
「まずは、近距離班と遠距離班に分ける。リオとあんなが遠距離班、キリエくん、ジンが近距離班だ。あとは、班ごとに戦い続けてもらうだけだ。あ、ナナくんは私と一緒との個人訓練な」
「それだけ……?」
キリエが呆気に取られた様子で言った。
だが、マリアは意に介していない様子だった。
「ああ、それだけだ。だが、時折私が現れて直接指導をする。それまでは自分たちで試行錯誤して戦い方を模索するんだ」
「……なんだか、納得いかないわね」
キリエはまだ不服なようだった。
「まあ、そう言うな。それに、リオとジンは人に教えるだけの技術があるからな、あんなとキリエくんは彼らから色々と学ぶが良い」
そこまで言い終えると、マリアは真剣な表情になった。
「試験までそこまで日があるわけでもない。だが、私はどうしてもこの戦いに勝ちたいのだ。そのためには、実践を積むのが一番確実だからな。ほかのクラスと違い、ウチは選出される五名が確定している。そのアドバンテージを最大限に生かすにはこれが最良なんだよ」
「はあ……、わかったわ。とりあえず、戦ってればいいのね」
キリエが諦めたように納得すると、マリアは笑顔で応えた。
「そういうことだ。というわけで、私はしばらくナナくんの指導に入るから、四人は一対一で戦っててくれ。しばらくしたら様子を見にくる」
そう言うと、マリアはナナを連れてどこかに歩いて行った。
「はあ、仕方ないわね。じゃあ、あっちの空き地で私たちはやってるわ。リオ、あんな、またあとでね。ジン行くわよ」
そう言うと、ジンが首肯し、二人はその場を去った。
『じゃ、こっちも始めようか』
「はい〜、お願いしますね〜」
穏やかなやり取りながらも、二人は瞬時に闘気を高め、次の瞬間には戦いが始まった。




