2−4
「こうなったら、最後の手段を使うしかないわね」
簡易テーブルに所狭しと並べられていた差し入れに手を伸ばしながら、キリエが真剣な面持ちでつぶやいた。
『そうだね。あまり褒められたことではないけど、それしか手はないかも……』
リオもどこか深刻そうな声で応じた。
ジンも仕方ないと態度で表していた。
「最後の手段って……?」
数量限定とキリエが歓喜していたおやつを手に持ちながら、ナナが首を傾げた。
あんなは全く話に加わる気はないようで、次から次へとおやつにジュースにと手を出していた。
「……カンニングよ」
少しの間を置いて、キリエが苦虫をかみつぶしたような表情で言った。
ナナは驚き、おやつを頬張ろうとしている姿で停止してしまった。
「で、でも、それって……」
ようやく思考回路が動き出したナナは慌てて言った。
だが、キリエが手のひらをナナに向けて突き出し、その続きを遮った。
「わかってる、わかってるわ。バレれば退学物の愚行だということは……。でも、それしか思いつかないのよっ……!」
キリエが机に突っ伏した。
『申し訳ないんだけど、あと数日でどうにかできる状況でないのは、確かなんだよね……』
逡巡しているようながらも、リオも賛同を示した。
その発言に、ナナはがっくりと肩を落とした。
『もちろん、やれるだけのことはやるべきだと思うけど、最終手段として考えておくべきかもしれない。特に……』
リオは視線をあんなに移す。
あんなは相変わらず次から次へと口に差し入れを放り込んでいた。
『あんなは絶望的な気がするから……』
キリエとジンが首肯する。
ナナも申し訳なさそうにあんなに視線を送ると、自分の話題だと気がついたのか、ようやくあんなは手を止め、にっこりと笑いながら首を傾げた。
その様子に、キリエは大きく嘆息した。
「……やっぱりやるしかないわね。リオ、頼んだわよ」
キリエの言葉に猫が頷くような仕草で答えた。
『気乗りはしないけど、仕方ないね……』
そして、どこか諦めたようなリオの声が聞こえた。




