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血裂鬼戦 前編



 イヴァンティアナの声が冷徹に響き渡ったその瞬間、僕は即座に行動を起こした。


 己の魔力量のコントロール。コンマ0.1秒で左右へ七つ程の魔法構造構築。


「シェルブレイク」


 僕がそう言い放つとほぼ同時に相手の魔力を吸収して強化されていくガラス色の弾丸が常人には視認出来ない速さでイヴァンティアナへと向かっていった。


「単純です」


 しかし、本の一瞬でバックステップを使い避けた彼女には当たらない。


「多数同時展開は素晴らしいものですが、やはり戦闘経験が少ないご様子。それでは動く的には一生当たりませんよ」


 目標を失った計14個のシェルブレイクはそのまま地面をえぐり、幾つもの破壊痕を形成しただけだった。


 しかし、そんなことはあらかじめ想定済である。今のでイヴァンティアナの大体の反応速度をつかみとることこそがシェルブレイクの意味だ。しかし、


「ふふふふ、それではこちらからも仕掛けるとしましょうか」


 イヴァンティアナが不適に笑ったその瞬間、彼女の姿は僕の目の前から一瞬で消えた。


「な──にっ!?」


 驚くのも束の間、今の自分には視認出来ない速度でいつの間にか僕の懐へ移動していた彼女は髪と同じ紫色の瞳を凛々と輝かせて「刻め」と短く言い放ち、左手に握られた血裂鬼けつれつきを僕に素早く近づけてきた。


 狙うは首。頸動脈のある部分。


 素人である僕にはその攻撃はかわせない。だが死ねない理由がある。僕はとっさに、いや死に物狂いで脳を動かし、コンマ0.1秒に迫る勢いで限定的だが防御結界を張ることに成功した。


 キンッ!


 金属同士がぶつかったような音がした。しかし、それで終わりではない。イヴァンティアナは直ぐに得物を引っ込めると今度は無駄の無い蹴りを僕の横腹目掛けてかましてきた。


「が…はっっ!?!!」


 一瞬何が起こったのか分からなかった。しかし、骨の折れる音と共に肉の裂ける音がしたことで自分が蹴られてしまったことに気がついた。横腹が猛烈な痛みに襲われ、僕はそのまま宙を右方向へ吹っ飛ばされていく。


「お兄ちゃんっ!」


 アンの声が聞こえたその瞬間、僕は痛みを堪える。そして、蹴られて損傷して吹っ飛ばされていることを再確認。思考が一瞬だけ飛躍的に加速し、今の状況で一番の最適解を導き出す。


「死なんっ!!」


 とっさの状況で展開─『再生魔法』:あらゆる事柄を再生させる魔法─体の損傷が一瞬にして元通り。しかし、そのまま僕の体は近くにあった木に思い切りぶつかり、不時着した。


「痛い、まじで死ぬかと思った」


 そう言って僕は体勢を建て直し、イヴァンティアナの方を見やる。


「素晴らしいです。なんですか?さっきといい今といいその魔法は。私あなたにとってもとっても興味・・が沸きました」


「意味深は止してください。というか、とっても×2倍で興味が沸いたら戦いは避けた方がいいんじゃないですか?」


「何を言っているんです?とっても×2倍は解剖台行きですけど?」


 おっとそうでした、彼女話が通じないんだった。攻撃詰めてこないからどうしたんだと思っていたけど、さらに悲惨な未来を用意していたんだね。どうせなら聞かなきゃよかった。


「それは困ります。せめて普通に死なせてくださいよ」

「ご冗談を……死にたくないのでしょう?だったら、貴方の本気もっと見せてくださいぃっ!!」


 イヴァンティアナは小手先から数本の何かをこちらへと投げてきた。それはゆっくりと時間が止まったように僕の体へと吸い込まれていく。


 否、時間がゆっくりと感じられたのは僕が死という現実を覆そうと思考を再び、飛躍的に加速して解決策を見いだそうとしていたからだった。


 傷を受けて再生魔法をかける。それでは駄目だ。躊躇なく連続して攻撃された場合、僕は成す術もなく殺される。防御結界を張るのは?構築する時間がほんの少し長いから無理だ。しかし、限定的にならどうだろうか?攻撃を受けるその位置にだけ防御結界を構築し、必要最低限の魔力と時間で彼女の攻撃を防ぐ。さっきはとっさにそれが出来たが無駄が多かったのかもしれない。ならば、さっきよりも正確に実行出来れば問題無いはずだ。


 迫り来る銀の刃に僕はそれぞれの投擲到達地点を予想し、防御結界を構築していく。大きく張るイメージではなく、一点に集中してなるべく強固に。すると、どうだろうか。思っていたよりも速く結界の構築が完了した。


 キンッキンッキンッ


 金属を弾くような音が三回鳴り、加速度を失った銀のナイフは重力に従って落下していく──目の前に彼女の姿が写った。


「甘いですね」

「それはどうかな」


 陽動だということは薄々感づいてはいた。だから、準備していた。ここの一手を。


 イヴァンティアナが驚いた表情を作ると同時に、僕は両手を前に突き出して紡いだ。


「魔導砲」


 純粋な魔力の集合体が彼女の体に吸い込まれるように衝突した。

読んでくださりありがとうございます。

感想など出来ればよろしくお願いします。

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