無人島生活4日目〜不穏な予感
『素人でも絶対勝てる戦闘手引書1』
その壱『全身全霊を持って敵を屠れ』
素人の人間が戦闘慣れした玄人にはまず勝てません。
理由も無く何故か最初から戦闘慣れしている一般人高校生と違ってあなたは本当にただの人です。
調子に乗って真似をしないでください。
死にたいんですか?
死にたくないなら、最初から全力で敵にぶつかりなさい。
容赦は要りません。
慈悲も要りません。
変な余裕は命取りになります。
素人は、余計なことは考えずに最後の切り札まで惜しみなく使いきりなさい。
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その壱拾『最後に...』
大丈夫です。
安心しなさい。
骨は拾っておきますから。
俺は過去に興味本意で読んだ戦闘手引き書の一端を思い出していた。確かあれは地元の古本屋の奥のおくーのほうにひっそりと且つ、大胆に置かれていたいかにも胡散臭そうな本だった。
まるで、恥ずかしいけど誰かには見てもらいたいというような、そんな気持ちが主にカウンターの方から伝わってくる代物だったことを覚えている。
俺はその気持ちを無下には出来ないと思い、思わず手に取ったのだがやはり中身はそれなりの代物だった。最後の一言なんかはあまりに無責任すぎて当時の俺は「書くきあんのか」とツッコミを入れて結局自分のコレクション(買った)に加えたていた。
今思えばあの本の作者もきっと何かの本に影響されて突っ走っていって結局誰かに骨を拾って貰うはめになったのではないかと、それをあの本を通じて誰かに伝えたかったのではないかと、よもや自伝だったのではないかと俺は考えた。
話がそれた。つまり俺はこう言いたい。
娘を泣かせる奴は全身全霊を持ってぶっつぶ……「パパー!!」
「はっ、なんだ何事だ!?なにかあったのか?アン」
「何かあったじゃないよ!あれみて!」
完全に自分の世界に入っていた俺はアンの呼び声によってようやく目の前の現実に目を向けた。
「あのーそろそろ良ろしいでしょうか?」
透き通るような声。すなわちそれは俺達の目の前にいる本場のメイド服を着た女性から発せられたものだった。
「は?」
俺はあまりの魔物から逸脱した文化っぷりにあっけにとられ、己の魔法の力を数秒間疑わざるを得なかった。しかし、よく見てみるとその彼女の額からは二本の小さな角がひょっこりと顔を覗かせているのが分かった。
「パパ……あれ……」
すると、アンが今にもおろおろと泣き出しそうに震え始めた。そして、そのまま失禁までいかずとも地面にへたりこんでしまった。
「なんなんだお前は……」
とは言いつつも俺はなんとなく見当をつけていて、直ぐ様アンに『防御結界』を3重にして張った。
「ああ、自己紹介がまだでしたね。名乗るときはまず自分から名乗れと父にいつも言われていたのですが……ええ、初めまして侵入者の方々。私はこの第18島『バレンティーグ』を管理する者」
「戦血狂イヴァンティアナ、気軽にティアと及び下さい」