エラーエリア
それは突然やってくる。
7月の2日遠くそして大きく。
それは昼時、岩動の食堂はガヤガヤお大いに賑わいを見せていたがその直後のことだ。
けたたましく警報が鳴り響き騒然となる。
数百とも言える一斉のアラートは時としてものすごい恐怖心に襲われただろう。
そしてやってくる……地面を揺るがすほどのエネルギーが。
「うぉっ、つ……強いぞ?」
食器や棚がガタガタと揺れうめき出し、吊り下げられたシャンデリアが左右に狂ったように振り揺れる。
「皆、机の下に避難するのよ……。」
旅館やホテルの女将である桃子が指揮を執る。
無口で何を考えてるかわからないような人ではあるものの、とっさの判断と指示は的確だ。
可愛らしくも鋭く大きな声が珍しく響く。
幸いにも揺れを感知すると火元のガスなどは自動で消えるタイプのコンロなどを使用しているから火災にもならず、設備の何かが破損するわけでも怪我人が出たわけでもないのが幸い。
テレビの情報によると震度5弱と割と大きめではあるものの数分もすれば皆何事もなかったかのように食事は再開を始め、いつもどおりの賑やかさを取り戻す。
休憩時間になりカツラは端末で先程の揺れを少し気になって調べてみる。
地震なんて軽いものなら毎日起こるものだしそう興味だって無いのだが、年に数回起こる大きな地震に対しては少し気になって情報は欲しくなるもの。
「結構大きかったなぁ。 って、ん? 震源地は岩動地方ではないのか……?」
どうやらいつも通り燎煉山の噴火における火山性地震なのだがどうにもおかしい。
というのも燎煉地方では震度は3と震源地であるのにも関わらず遠く離れた岩動のほうが揺れが大きいからだ。
「なんか気味の悪い揺れ方だ。」
「こういうのを、異常震域っていうのよ……。」
休憩に来た桃子が悩んで首を傾げるカツラに伝える。
「異常震域? なんか名前がカッコイイ。」
「聞いた話だと地震波の伝わり方でそうなるみたいよ……。 波の伝わりにくい場所では減衰して弱く、伝わりやすい場所は遠くに離れても揺れのエネルギーが減衰しづらいから結局は今回のように大きくなったり……ね。」
「へぇ、はた迷惑な話だ。」
「燎煉と岩動は切っても切れない縁があるわね。 私と智美のように。」
「ははは……。」
端末をしまうと少しばかり気になって防災バッグの中身を確認する。
大きな地震はいつやってくるかわからない、だからこそ常日頃の備えは必要なものだ。
たとえそれが小さな地震だったとしてもいつか必要とする日は大地に住まう人間には絶対に切り離せない運命とも言える。
備えあれば……憂いな、嬉しいなぁ。




