打ち水と暴走
暑い日には先人の知恵。
7月の1日、冷やしモクモク。
一年を通して常夏といえば言わずもがな陽光地方だと誰もが口を揃えて言うが、燎煉地方はそれを上回るほどだ。
暑いというよりは熱く、ここに来るときは自分の属性を火曜に切り替えなくては身が持たない。
火曜の属性では熱に強く、溶岩なども物ともせずに遊泳できる。
ただ1500度の溶岩は平気であっても30度の熱波では暑いと言いはるあたり曖昧でグダグダ。
熱いと暑いは別物だろうか?
じゃなければ風呂に入っても何も感じないのだろう。
「うぉああっ、暑いッ!! 水バケツぶちまけたるわっ!!」
モミジは暑さに耐えきれずバケツに水を汲んで家の周りに撒き散らす。
「ア゛ーッ!! 冷えて涼し……くなるわけねぇだろうがぁあっ!!」
ガラランと音を立てて金属製のバケツは床に転がり、ただでさえ燎煉の直下にはマグマの地熱で温められた大地は暑い日差しとのダブルパンチでまいた水などすぐにでも蒸発してしまうのだ。
「うるさいわねぇ。」
冷房の効いたリビングでは母親の智美がアイスクリームを口に外で筋トレしてる愛するバカ息子に呼びかける。
こう見えて豆な水分補給はしていても結構心配。
「あとドラゴンフラッグ100を3セット終わったら休憩に入る。 まだ俺の腹筋が悦びを感じていないッ!!」
「あぁ、そう……。」
脳筋な息子に呆れを見せる。
呆れてるというよりはやはり心配という感情が強い。
燎煉では強さこそが正義、強いやつが格上というのが暗黙のルール……だから己にストイックで鍛え上げる息子は自慢なのだが、筋トレに夢中になりすぎると母親ではなく筋肉一筋の優先になってしまい結構寂しさを感じる。
しばらくして筋トレも終わらせシャワーを浴びてから見事な細マッチョを見せつけるがごとくパンツ一丁でリビングへと戻ってくる。
「ただいま。 まったく誰だよ打ち水したら涼しくなるとか……余計暑くなったじゃねぇか。」
「やる時間が間違ってんだよ、そもそも打ち水は昼間じゃなくて朝とか夕方にやるもんさね。」
「うぇえっ!? まじかよ……いや、マジやん。」
端末で調べてみるとたしかにそう書かれている。
「アンタはいつだってそう、目先のことだけ考えて突っ走っては自爆する。 少しは視野を広く見据えてみな。 はぁ、誰に似たんだか。」
「母さんかな?」
「うるさいわっ!!」
「はははっ、ジョーダンだよ。 さてさてアイスでも食べようか。」
最後の一本を手に取る。
十本入りの徳用のアイスも底をつきた。
「母さん後で暇かい? アイスが切れたから一緒に買いにでも。」
「どういう風の吹き回しかねぇ。 暑さで頭をやられて素直になったかい? まっ、私としては嬉しいがねぇ……たまには。」
暑い日差しが照りつける今日この頃。
夏は始まりを合図した。
やる時間帯には気をつけよう。




