母の愛情
家族愛とはいいものだ。
6月の11日、母の愛。
昼休みの時間は持ってきた端末やパソコンで色々やれるから暇を持て余すことは無いのだが、たまには体育館で体を動かすのも一興だと椛に誘われる。
それもそうかもしれない……自主的に運動なんて別にしないし、かと言って能動的に動くのは位置情報で収集して遊ぶアプリを使って町中をウォーキングする程度、それを運動と自分に言い聞かせ納得させる程度なものだ。
「呼び出しておいてまだ来てないのかよ、まったく。」
山積みになっているマットの上に腰掛けていたときだ、隣のクラスのやつらが絡んできた。
名前は忘れたが。
「よう、コイツ知ってるか? 蜜柑ってやつなんだけど未だに母親と風呂に入ってるらしいぜ? この前寝言でそれっぽいこと言ってたし!!」
「まじかよ。 マザコンじゃん!!」
「「「ゲラゲラゲラwww」」
体育館に響き渡るくらいにあえてみんなに聞こえるくらいの声量で笑い散らかす。
「だからなんだよ。 一緒に入ってちゃいけないのか?」
自分はとっさにそう返した。
だがそんな反応も仇となる。
「いや、普通に親離れしてないとか気持ち悪すぎ……うぉっ!?」
「いけないのか?」
普段は温厚な自分でも……自分を馬鹿にされるのは構わないが母さんを侮辱されてるような気がしてならなくてカッとなって胸ぐらをつかんで睨みつけた。
その右拳はいつでも相手の頬を狙えると振り上げて、怒りで震わす。
そこで腕を掴まれた。
「そうカッカしなさんな……蜜柑。」
「椛……。 でもコイツらは許せない。」
「ここで相手を傷つけたらお前まで同類になる、良いのか?」
「ふんっ!!」
少し雑に相手を突っぱねるように掴んだ服を離すと案外威勢よく絡んでニヤニヤしてたヤツらも逃げていった。
「おらっ、テメエらもこっちチラチラ見てんじゃねぇぞ!! 見せ物じゃねぇぞ!!」
普段から筋肉バカで細マッチョの椛の一斉が軽く体育館に響き渡ると何事もなく皆もバスケやランニングに勤しみ始めた。
「まっ、俺らの家庭はちょっとばかり複雑だ。 小さい母さんを風呂に入れて面倒見る役目だって大切なもんだ。 そこに後ろめたさを感じる必要なんてないぜ。 胸貼って生きろ。」
「あ……あぁ、ありがとう。 ところでよ、俺ってマザコンか?」
どうしても母親のことが気になる。
別に好きとかそう言うわけじゃ……無くもないが一応聞いてみた。
「俺もお前も立派なマザコンじゃねぇの? まぁ、知らんけどな……どぅわっはっは!!」
心の中のモヤモヤが少しだけ晴れた気がする。
よそはよそでうちはうち、そう思えればちょこっといつもは口喧嘩が絶えない母親でも愛惜しいものだと思えたこの頃だ。
母親が好きでもいいじゃない。




