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晩年ーレオナルドの思いー

 わたしは、この世に誕生した瞬間から“皇太子”であった。父上や母上、周りの者達からもそのように扱われ、それ以外の道も知らなかった。いや、知ろうとしなかったのかもしれない。例え知ったとして、他の道を選ぶことなどできないのだからと。


 わたしの未来の結婚相手は他国の王女だろうか、それとも皇国内の有力貴族の子女になるのか。どちらにせよ、“皇太子”の結婚相手として相応しい人物が選ばれるのだろう。それならば、それで良い。そう思っていたのに。


 皇国に【神の寵児】が現れた。前代未聞の全属性の神の寵愛を持った彼女は、その才能も素晴らしいらしい。皇国としても、なんとか国内に引き留めておかなければ…という思惑もあったのだろう。


 彼女が初等科の在学中に、王宮見学の名目で彼女が在籍するクラスが、王宮へ招待されることになった。王宮内の施設を見学してもらい、そこへ姉上達が登場することで、無理なくアンとの接点を作ったのだ。初等科の生徒の王宮招待というのが初めてのことであったから、もちろん無理やりではあったのだが…。


 また、彼女が中等科に進学後には、姉上が彼女個人をお茶会へ招待することになった。そして、そのお茶会でわたしはアンと出会ったのだ。


 アンは貴族の娘達と違って、自分を良く見せようとか、駆け引きをしてくるようなこともなく、最初の出会いは思いのほか和やかに過ごせる時間になった。かといって最初からアンに特別な思いを持ったわけではなかった。普通に可愛らしい少女だとは思ったが。


 それが変化したのはいつだっただろうか。姉上達が機会をみてはアンを呼び出すので、わたしもアンに会うことが多くあった。姉上達は、すっかりアンのことが気に入ったようだ。わたしも徐々に…。アンの前では“皇太子”でなく、1人の男として過ごせるようになっていた。



「レオナルド、あなたはアンさんのこと、どう思っているの?私はもちろんアンさんが義妹になってくれたら嬉しいと思うけれど、やはりアンさん自身が惹かれた方と幸せになってくれるのが1番だものね。アンさんに好きな方ができたら、応援しなくては」



 わたしの気持ちは、アンにあるというのに。きっと…いや絶対にわかっていて言っているのだろう。姉上はそんな方だ。


 アンの気持ちがどこにあるのか。それは、わたしには分からない。模擬戦でも最後の最後で負けてしまい、良いところを見せることができなかった。しかし、アンももうすぐ高等科を卒業だ。次の舞踏会、アンを招待した舞踏会で気持ちを伝えることができれば良いのだが…。



 舞踏会当日。アンのドレス姿は、とても可愛らしく。できることなら、わたしがエスコートしたかったが、そういうわけにもいかず。従兄弟のレイクに任せたのはいいが、アンとレイクが笑いあう姿を見ていると、遣る瀬無い思いが募っていき。“皇太子”のわたしではなくレイクとの方が…背負わされるものも少なく、アンも幸せに…いや、それでも…!


 そこからは、ほぼ勢いでアンに自分の気持ちを伝えることになってしまった。素直な思いをぶつけ…最終的にはわたしの手を取ってくれたから良かったが。



 アンの卒業とともに婚約、そしてその2年後には婚姻を結び、3人の子ども達にも恵まれた。アンの協力もあり、平和な治世を築くことができた。人の行き来が断絶していた【シャーク王国】との国交も、アンのおかげだ。


 最初にアンから、【闇】属性の守護を持つことを明かされた時は驚いたが…光と【闇】とが共存するということは、アンを見ていればわかること。わたしはアンを応援することにした。そして、アンが努力し続けたことが、【シャーク王国】の目に留まり、国交を再開する第一歩となったのだ。


 そんな【シャーク王国】の王女と、長男のアレクシスは婚姻を結んだ。王女が皇国へと留学されたことが、2人の出会いであった。長女のレイシアもまた、王国への留学が縁で出来た友人達と良好な関係をつづけているようだし、これから王国との関係はより良好なものになっていくであろう。


 アレクシスの結婚から数年、レイシアは皇国内の有力貴族へと降嫁した。皇国内でアンを手助けしながら、【闇】魔法の研究を進めていきたいのだそうだ。幼い頃から共に学ぶこともあった彼とであれば、幸せになれるであろう。


 大陸中を剣技の修行で駆け巡っていた次男のレックスは、さすがにそろそろ腰を落ち着かせなければ…と考え始めた頃、小国の王女を連れて帰国した。自分で結婚相手を見つけたのはいいが、修行の帰り道に連れてくるとは…。どうやらいろいろ事情もあったようで、ついでのように連れ帰ったことは不問にしたのだが。



 子ども達もそれぞれ結婚をし、アレクシスに譲位した後は、アンとゆっくりと過ごすはずが…中々休ませてはもらえなかった。それでも、晩年はだいぶゆっくりとさせてもらったが。


 わたし自身は何かに突出したわけでもなく、いたって平凡な王であっただろう。しかし、アンに出会い共に歩んだことで、多くのことを築き上げることができた。わたしの決まりきった人生に、様々な色を付けてくれたのはアンだ。




 アンには溢れんばかりの愛情と、言葉では言い表すことのできないほどの感謝をー・・・

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