アンの息子ー第二王子レックスー
レックスはレオナルドとアンの次男として、誕生した。レオナルドにそっくりな兄のアレクシスや、アンにそっくりな姉のレイシアと違って、レオナルドとアンの特徴をちょうど半分ずつくらいに受け継いだ彼は、末っ子ということもあって、レオナルドやアンだけでなく、兄や姉、周囲の皆からもたいそう可愛がられた。
レックスも兄や姉と同じく、複数の神々からの守護を授かっていたが、彼の才能は魔法よりも剣術で花開いた。それは父レオナルドや、兄アレクシスをも超えるものであった。おそらく、祖父である皇王の才能を受け継いだのだろう。武に優れた歴代の皇王の中でも、祖父は群を抜いて剣の才能に秀でており、周辺国とのいざこざがあれば、自らが先陣に立つこともある程だった。その力を知っている周辺国にとっては、皇王が先に立つだけで大きな脅威となったものだった。
成長するに連れて、レックスの腕前は師範の騎士のそれを軽々と超えてしまうこととなり、それからは近衛の騎士団長が師範を務めることとなった。
しかし、その騎士団長をも凌駕する才能をレックスは持っていた。まだまだ、実戦経験の豊富な騎士団長が上回っているが、レックスが騎士団長を超える日もそう遠くないだろうと誰もが感じていた。剣の才能が突出しているため目立っていないが、実は魔法もかなり使える彼は、魔法の使用有りの勝負でなら、すでに騎士団長を超える勢いだったからだ。
そんなレックスも15歳を迎え、自らの将来のことを考え始めていた。数年前に祖父は退位し、父レオナルドが皇王となっていた。
(兄上はいつしか皇王となり、皇国に更なる発展をもたらすべく、皇太子として勉学に公務にと励まれている。姉上もまた、一人【シャーク王国】へと留学し、多くのことを学んで来られ、それを皇国へ還元されようとしている。それでは、わたしは…。わたしには剣しかないが…剣で兄上を支え、皇国に発展をもたらす手助けとなろう)
祖父がその存在だけで他国への牽制となり、結果的に平和な治世を築いたように、自分もそうであろうと。そう考えたレックスは、剣技を磨く為に諸国へ留学したいと願った。末っ子が自分達から巣立って行くことに多少の寂しさを覚えながらも、王族として国の為を思って剣技を磨きたいという気持ちを止めることはできない。レオナルドとアンは、レックスに周辺諸国へ剣技を磨く旅へ出る許可を、いくつかの条件を付けて与えることにした。
まずは出発前に、現在の師範の近衛騎士団長を超えてみせること。皇国内で1番とされる腕前の近衛騎士団長を超えたなら、もはや皇国内でレックスを教えることができる師範は居ないということだからだ。
手紙を書くのはもちろんのこと、定期的に各国にある皇国の大使館に顔を出すこと。そして、大使に旅の状況を報告すること。
護衛としてではなく、同じく剣技を磨く仲間として、皇国の騎士を数人帯同すること。
成人の儀には、剣技磨きの旅が途中であっても、一度中断して皇国へ戻ること。
さすがに1人での旅が認められるとは思ってなかったが、両親が侍従や護衛の帯同ではなく、仲間の帯同を条件に上げたことに、自分に対する心からの理解の気持ちを感じ、感謝するのだった。そして、数ヶ月後には近衛騎士団長を破り、数人の仲間を連れて旅立つことになった。
隣国を訪れることから始まったそれは、ただひたすらに剣技を磨くことのみを追求する旅であった。道中は皇国王子ではなく、剣技を追求する者として回った。もちろん必要がある時には皇国王子であることを明かすこともあったのだが。
何年もかけて剣技を磨いたレックスは、剣技にかけては大陸で右に出るものは居ないと言われるほどの力を身に付けて、皇国へと帰ってきた。成人の儀に間に合うよう戻ったが、機会があれば【シャーク王国】へも訪れたいと考えていた。かの地には、こちらの大陸にはない武術が発展していると、姉から聞いていたからだ。
(まだまだ父上は健在だ。兄上が即位するまでに、更に上を目指そう)
【シャーク王国】へと剣技を磨く為に渡ることが可能か、【闇】の神がそれを理由とした大海の渡航を認めるかが問題であったのだが、レックスが争いを求めて剣技を磨いているのではなく、平和な世を求めていることがわかったからだろう。無事に王国へと渡ることができ、また彼と仲間の剣技を磨く旅が始まるのだった。
兄アレクシスの即位後、レックスは全皇国軍の将軍として、兄を支えることになるのだった。彼自身もかつて世界中を旅して回った、強力な仲間達に支えられながら。




