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学園生活2週目ー学園長登場ー

 ジェシカちゃんに借りたノートのおかげで、1週間の勉強の遅れは程なく埋めることができた。わからないところはジェシカちゃんやアリーネちゃんが教えてくれたしね!


 先週は歴史の他にも算数、語学、体育など、一通りの一般科目の授業を受けた。算数は数字の表記が少し違うが、足し算や引き算など、内容は地球の算数と変わらないので、【杏】として学んだ記憶が役立ち、全く問題なかった。また、体育は皆でボール遊びをしたりと、とても楽しかった。



 そして、ついに今週からは皆が待ちわびた魔法の授業の開始だ。当面は午後からの1時限が魔法の時間に当てられる予定だ。


 お昼の休憩が終わり、魔法の授業は魔法練習場で行うため移動だ。私だけは…教室で皆と別れ学園長室に向かった。学園長とはそこで合流するのだ。学園長との授業は特別に職員用の練習場を使用するらしい。


 そちらの方が……学園長室から近いから…?!というわけではないだろうが…。前例がないことなので、特別になるのも多少は仕方ないんだと納得させながら、学園長室に向かうのだった。



 学園長とは今日が初対面になるので、ドキドキ感が半端ない!もうすぐ学園長室にも着いてしまう…。どうか怖そうな先生じゃありませんように…。そして、いざ学園長室に着いて、対面したのは…


 学園長は70歳くらいに見える。

 あご髭が長く、ローブを羽織っているのもあって魔法使い!って感じだ。


 学園長は私に気づくと優しそうに微笑み…



「あなたがアン・リードさんですね。私が学園長のスミスです。スミス先生とでも、呼んでくださいね。今日からアンさんの魔法の授業を担当するので、よろしくお願いしますよ」


「…はいっ!スミス先生ですね!よろしくお願いします!!」



 優しそうな笑顔、長くて白いあご髭…もう少し横幅があって赤い服を着たら…サンタクロースみたい…


 優しそうな笑顔で緊張もほぐれたせいか、返事をしながらそんな失礼なことを考えてしまっているアンだった。



 挨拶が済んだら、早速魔法練習場に移動だ。スミス先生に促されて歩き始める。学園長室から練習場はさほど離れてなく、すぐに到着だ。



「では、早速魔法の授業を始めましょう。魔法には精霊や神様からの力添えが必要ですが、自らの魔力も必要になります。魔力は誰もが大なり小なり持っているものなので、それを感じ取るところからスタートです。魔力を感じ取るには、心を集中させて体内に巡っている魔力を手の平に集中させるようなイメージが、1番簡単です。最初は時間がかかりますが、一度感じ取ることができれば、次からは早くできるようになります。では、まずは試しにやってみてください」


「はい、わかりました!」



(心を集中…体内の魔力を手の平に…なんかざっくりとした説明なんだなぁ…。まぁ、魔力って目に見えるものでもないし、抽象的な説明になるのは仕方ないのかも…。さて、やるだけやってみよう)



 早速アンは、スミス先生に言われた通り心を集中させてみる。とはいってもつい周りの様子や、スミス先生のことが気になってしまい、集中できない。

 集中といえば…座禅?立ったままでとは言われていなかったので、アンは試しに正座をして、目を閉じて再び心の集中を試みる。



(ほぉ…変わった座り方をするものだ。あの説明だけで7歳児に集中しろと言っても、なかなかできないものなんだが…どうやら自分で考えて工夫をしているようだ)



 学園長の説明は通常の魔法の授業の最初にも言われるものだ。でも、それだけで魔力を感じ取れる生徒はなかなか居なくて、すぐにまた具体的な説明を加えたり、魔力を感じ取る手助けをしたりと、まだまだ幼い生徒達には補助が必要なのだ。


 前代未聞の神の寵児とはいえ、この過程が手間取ることは仕方ないと思っていたのだが…。


 授業も終わりにさしかかったという頃、アンは体内になにか温かいものが巡っているような感覚を感じ取った。



(ん?これが魔力かな…。この温かいのを、手の平に…)



 アンは手の平を前に出し、更なる集中を試みる。するとぽわっと温かいものが手の平に集まっているのを確かに感じ取ることができた。アンは目を開けると、スミス先生を探す。



「スミス先生!手の平がちょっと温かいです!これが魔力ですか?」



(なんと…あの説明を聞いて本当に自分の力だけで魔力を感じ取ることができるとは…。神は才能もしっかりお与えになったようだ)



「そうです、それが魔力です。先生にもアンさんの手の平に魔力が集まっているのがわかります。その感覚を忘れないようにしてくださいね。練習を重ねれば、すぐに魔力を感知することができるようになりますからね」


「はい!わかりました!」



 そう答えると、スミス先生は授業の終わりを告げる。いつの間にか結構な時間が経っていたらしい。集中してたからわからなかった!そして、またスミス先生と学園長室までは共に戻り、そこから教室へと戻るのだった。



 教室に戻ると、皆も魔法練習場から戻ってきており、私が教室に入るとジェシカちゃんやアリーネちゃん、リラン君が集まってきた。



「アンちゃん、おかえり!学園長先生はどうだった?怖くなかった?」


「うん、すごく優しかったよ!」


「そうなんだ!皆でアンちゃん1人で大丈夫かなって話してたの。それなら良かったー」



 皆は学園長とは入学式に会っているけど、学園長の挨拶を聞いただけで、どんな先生かまではわからなかったから心配してくれていたらしい。皆、優しいなぁ…優しさが心に染みる!



「魔力感知はどうだった?私は全然駄目だったの」


「俺も全然。ジョッシュ先生にも手助けしてもらったけど、駄目だった…」


「私もなんとなく感じかけたところで授業が終わっちゃって…。次は頑張らなきゃ!アンちゃんは?」



 順に、アリーネちゃん、リラン君、ジェシカちゃんである。



「私はなんとか時間内に魔力を感知できたみたい。学園長先生もできてるよって言ってくれたから」



 私はそう答えたのだが…。



「すごい!みんな魔力感知できなかったのに!それにジョッシュ先生も最初の授業では、ほとんどできないって言ってたよ!」


「そ、そうなの?説明を聞いてすぐは集中できなかったけど、とにかく集中…って思って続けてたら、なんとなく温かいものを感じたの」


「「「え?!学園長先生の手助けは?」」」


「さっき、リラン君も言ってけど、手助けってなぁに?」


「ジョッシュ先生も最初は簡単な説明だけしてくれて皆で試したの。でも、皆できなくて落ち込んでたら、最初は簡単な説明で試してもらうけど、それを聞いただけでできる子はいないから、安心してって。それから、もっとコツとかを教えてくれてね、最後は先生自身が魔力を手に集めて触れてくれたりして、感知の手助けをしてもらったの。それでも、最初の授業で感知できるのは1人いるかいないって言ってたよ!アンちゃんはすごいよ!」



 そう言うと、3人ともが称賛の目で見つめてくる。慣れない視線になんとも居心地の悪さのようなものを感じるのだった。



(…スミス先生、そんなこと一言も言わなかった…。ざっくりした説明だなとは思ったけど、まさか駄目元で試させるための説明だなんて思わなかったんだもの…。最初に集中できなかった時、とっととスミス先生に助けを求めてれば…!)



 あんまり目立つことはしたくなかったのに、こんなことになるとは…。1人で授業を受けると周りの様子がわからない。姉様は楽しみにしときなさいと、なかなか授業については話してくれないが、なんとか魔法の授業について聞いてみよう!そう決心したのだった。


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