アンの息子ー第一王子アレクシスー
アレクシスはレオナルドとアンの長男として、誕生した。皇太子夫妻の第一子の誕生に、皇国中から喜びの声があがった。皇国中の貴族はもとより、友好国からも次々と祝いの品が届けられ、その返礼に追われるのもまた、嬉しい悲鳴であった。王宮だけでなく、王都中がお祝いの空気に包まれ、それは数ヶ月の間続くのだった。
レオナルドとアン、孫ができてだいぶ丸くなった皇王に皇太后、そして周囲からの愛情に包まれ、健やかに成長したアレクシスは、7歳で属性の測定を行った所、光・水・地の神の寵愛と、風の神の加護を持つことが分かった。『神の寵児の子は、やはり神の寵児だった。これで次代の皇国も安泰だ』と、アレクシスの誕生祭には更なる喜びの声があがったのだった。
だが、その数年後にアレクシスの妹の第一王女が7歳を迎え、彼女の属性を計ると…なんと【闇】を含む4属性の神の寵愛を授かっており、残り2属性も精霊の寵愛を授かっているということが判明。すると、次代の統治者となるアレクシスよりも、妹のレイシアが話題に上ることの方が多くなっていった。2代に渡って全属性の守護持ちが生まれたのだ。皆の関心がそちらに向くのは、当然といえば当然のことなのだろう。
「きっとレイシアがお父様ではなくて、私にそっくりだからよ。アレクシスはお父様にそっくりだもの。アレクシスは可愛い私の王子様ね」
そう言って笑顔を見せる母上は、確かに妹のレイシアとそっくりだ。瞳の色以外は瓜二つといっていいくらいに。神々や精霊から一心に愛される母上にそっくりなのだから、レイシアも神々や精霊に愛されるのは当然のことだろう。
母上だけでなく、従兄弟達や侍従達まで、自分のことをそれとなく気遣ってくれているようだった。多忙を極めるはずの父上までもが。だが、みんな心配性過ぎるというものだ。当のわたしはまったく気にしていないのだから。
と言うのも、自分としては現状に全く不足がないのだ。全属性ではないが4属性を扱えるのだし、魔法を行使する才能はしっかりと母上から受け継いだようで、魔法の習得は順調だ。上級魔法も、それらの組み合わせ魔法も、この調子なら問題なく習得できるだろう。
剣の才能も父上から受け継いだようで、剣の才能に関しては騎士達と比べても引けはとらない自信があった。このまま修練を続ければ、近いうちに近衛騎士達とも良い勝負が出来るようになるだろう。
そう。むしろ、父上より才能自体は上回るくらいなのだ。父上は剣の才能はあったが、聞くところによると魔法に関しては、特に秀でていたというわけではなかったようだから。
あとは、この才能を活かすように、日々の努力を惜しまないことだ。もちろん、次期皇太子としての勉学も怠るつもりはない。
どうやら一部の者が心配しているようだが…わたしがレイシアを僻むなんてとんでもない。レイシアは、神々や精霊からだけでなく皇国中の民からも慕われる、素晴らしい女性の筆頭とも言える母上に、その姿も心根もそっくりなのだ。レイシア自身、今は可憐な少女だが、成長すれば母上に似て、可憐ながらも芯の強い、才能豊かな女性になるに違いない。そんなレイシアを僻んだり、疎ましく思うだなんてあり得ない!
少し…逆に周りの者達が、そっちの方を心配するくらいには、マザコン&シスコンに育ってしまったアレクシスだったが、それを知るのはごく一部の側近だけ。もちろん、その側近達も決して口外しないので、世間からはちゃんと優秀な皇太子に見られている。
日々の努力を惜しまず、国の事を考え常に前進し続ける彼は、民からの信頼も厚い皇太子へと成長していくのだった。成長した彼を、レイシアと比べてどうこう言う者など、もはや居ない。彼は彼、レイシアはレイシアなのだから。
そしてアレクシスが二十歳を迎えた年、【シャーク王国】の第1王女との婚約が発表された。第1王女は皇国に留学していたこともあって、皇国の民も親しみを感じており、皇国中で歓迎の声が上がった。2人の婚姻で、両国間の結びつきはより深くなるだろう。
政略結婚ともとれる婚姻であったが、留学中に惹かれあっていた2人は、レオナルドとアンのように仲睦まじい夫婦となり、光と闇の共存する平和な治世を築いていくのだった。




