アンの娘レイシアー【シャーク王国】到着ー
初めての船旅は、噂に聞いていた船酔いというものにかかることもなく、用意された部屋も過ごしやすい工夫がされていたので、とても快適で楽しいものだった。護衛騎士の1人が船酔いにかかっていたようだけど…。本当に船酔いにかからなくて良かった…。
王族が乗船するということで、今回の船の乗員乗客はしっかりと身元確認が取られている。手荷物検査も漏れなく行っているようなので、護衛騎士の1人がへばっていても特に警備に問題はないだろう。
大陸間を渡る航海は、実に一ヶ月もの長旅だ。それほど長く王宮を離れたことのなかったレイシアは船旅に不安もあった。だけど航海中に暇を持て余すことがないように、定期的に音楽界などの催しが開かれており、部屋に持ち帰って読むことができる図書も用意されていたので、賑やかに過ごしたい時は催しに出かけ、静かに過ごしたい時は部屋で読書を楽しむなどして、まったく退屈することなく一ヶ月の船旅を終えることができたのだった。そんな楽しい船旅は、あっという間で。もう明日の朝には【シャーク王国】に到着だ。
到着に備えて早めに眠りについたからか、翌朝いつもより早い時間に目が覚めてしまったレイシアは、折角起きたのだからと身支度を整え、甲板にでて朝日を眺めることにした。見渡す限り海が広がるだけであったのに、今では目の前に大陸が迫っている。ついに【シャーク王国】に着いたのだと、ようやく実感する。今日から2年間の留学が始まるのだ。
停船し港に降り立つと、そこには出迎えに訪れた一同がずらりと並んでいた。その列から1人の少女が前に出て、レイシア一行に歓迎の言葉を述べる。
「遠路はるばる、ようこそ我が国へいらっしゃいました。私はシャーク王国第2王女のミリアと申します。ご滞在の間、一緒に学ばせていただくことになりますので、どうかよろしくお願いしますね」
「お出迎え、ありがとうございます。オスラン皇国第1王女のレイシアと申します。ミリア様、こちらこそよろしくお願いしますね」
今回の交換留学では、【シャーク王国】から皇国へは第1王女が行くことになっており、おそらく私と入れ違いで今頃はすでに皇国に到着しているはずだ。そして、出迎えてくれた第2王女のミリア様は私と同じ年だと聞いている。2年間ともに学ぶのだ。仲良くなれたらいいのだけど…。
迎えの馬車に乗り込み、ミリア様と船旅の間の話などをしながら、王宮へと向かう。王宮に着く頃には、だいぶ打ち解けることができ、これからの留学がますます楽しみになるレイシアなのだった。
留学中、滞在することになる部屋に案内され、一旦部屋の前でミリア様とお別れする。今夜はミリア様も含め、王族の方々だけの晩餐に招かれることになっている。船旅で疲れているだろうということで、正式な歓迎の晩餐会は後日開かれることになっているそうだ。快適な船旅だったとはいえ、やはりそれなりに疲れは出ている。配慮をありがたく感じながら、支度をする時間を考慮にいれても数時間は余裕があるだろうと、休息をとることにする。
その晩の晩餐はごく内輪のものとはいっても、王族の集まりだ。しっかりと正装をして参加したレイシアは、皇国やその周辺国では見たこともない、様々な料理に目を奪われ、舌鼓を打つことになる。
大陸が違えば、気候も違ってくる。となると、当然採れる作物なども違うのだ。ミリア王女や、その妹王女がレイシアの隣に座り、『これはシェンという穀物で少し甘みがありますわ。あちらにあるのは…』と味や特徴なども説明してくれたので、最初は戸惑いながらも美味しくいただくことが出来た。美味しい料理を食べていると自然と会話も弾み、王族間の駆け引きなどもなく、思った以上に楽しい晩餐の時間を過ごすことが出来たのだった。




