【シャーク王国】ー会談の行方はー
会談が始まった。といっても、交易が途絶えたのは遥か昔。こちらには【シャーク王国】の情報はないし、王国にもこちらの情報は少ないだろうと思っていた。まずは情報交換からだろうと思っていたのだが、それはジェルダン王子の言葉によって否定された。
遥か昔の争いによって交易は途絶えたが、こちらの大陸にも数は少ないが【闇】の加護や寵愛を授かる者が生まれることを、王国側は知っていた。【シャーク王国】は元々の成り立ちが【闇】の守護を持つ者が集まって出来たものだから、新たに生まれる子どもも【闇】の守護を持つ者が多かった。そして、大陸を移ってから生まれたもの達には、すべて【闇】の守護が授けられるようになっていた。
しかし、本来【闇】の加護や寵愛を授かるのに、血統や種族は関係ない。それ故、こちらの大陸にも【闇】の守護を持つ者が、時折生まれるのだ。そして、彼らはこちらの大陸では、総じて生きづらい思いをすることとなる。まず自分の属性が測れないから無属性とされるし、魔法を学べないから生活にも不便が生じるのだ。
その為、王国では定期的に視察団が組まれ、こちらの大陸に渡って情報を集めたり、【闇】の守護を持つ者の救済を行っていた。そして、その情報集めで【闇】の守護を持つ皇太子妃の存在を知り、今回の謁見を申し出る運びとなった。
ジェルダン王子が語ったのは、このような内容だった。これには、皇国側の出席者が皆、驚きを隠せなかった。
ジェルダン王子はさらに語った。視察は極秘に行われていたことで、これからもそうであるはずだったが、これから過去のしがらみを解き、関係の再構築を図ろうとしているのに、隠し事はあってはならないと。だから凝り固まった考えを持つ大臣達ではなく、若さ故に未熟だが、若いからこそ柔軟な考えを持って会談に臨めるであろう自分が今回の代表に選ばれたのだと。
ジェルダン王子の真摯な姿勢には、そして彼の紡ぎ出す言葉には、彼を信頼させる力があった。私は彼を信頼できると感じた。レオナルド様の様子からは、私と同じように感じていることが伝わってきた。
過去のしがらみを捨て、私達の世代から新たな絆を築いていくのだ。細かい内容では、駆け引きも必要になるだろう。そこは、大臣達の得意分野だろう。しかし、まずはレオナルド様と私、ジェルダン王子とシオン様との間に信頼関係を築けるかどうか、これが大事なのだと強く思うのだった。
会談はやはり多少の駆け引きもありつつ、最終的にはお互いに納得する形で終わらせることができた。もう少し詰めていかなければいけない課題もあるが、そこは実務者達に任せよう。
その日の夜は、ジェルダン王子夫妻を歓迎する晩餐会と舞踏会が開かれた。他にも彼らの滞在期間中には、様々な催しが用意されている。王都周辺の視察も希望されているから、それも叶えて差し上げたい。皇国のことをよく知ってもらって、私達も彼らの王国の話をたくさん教えてもらおう。まずは、お互いをよく知ることからだ!
そしてー・・・
【シャーク王国】一団の滞在期間が終わる頃には、だいぶ打ち解けることができたように思う。特にシオン様とは、私の思い違いでなければ、かなり仲良くなれたと思うんだ。お互いの立場的に、頻繁に行き来は出来ないけれど、これからも交流は続くだろう。今回蒔くことができた信頼の種を、私達の子どもの世代には大きく成長させ、花開かせたい…そう決意するアンなのだった。




