【シャーク王国】ー謁見の儀ー
ついに今日の午後から、オスラン皇国と【シャーク王国】との公式の謁見が行われる。皇国の歴史に残るだろうその一日が、ついに始まったのだ。
朝から念入りな仕度が行われ、【シャーク王国】の第一王子夫妻を迎えいれる1時間前には、アンは一部の隙もなく身仕度を整えられていた。
(ふぅ…。もう少ししたらレオナルド様がこちらにいらっしゃって、皆様をお迎えにあがるでしょ。それから、謁見の儀を済ませて、続けて会談…。夜は…)
これからの予定を、もう何度目になるかわからないけれど復習しておく。アンの緊張がわかるのだろう、使い魔のニィはアンの傍に寄り添い、その緊張を分け合ってくれている。使い魔とは、嬉しい気持ちも悲しい気持ちも共有できる。今日みたいに緊張している時は、その気持ちを半分請け負ってくれるのだ。
ニィのおかげで幾分か緊張がほぐれたアンは、ニィに感謝の気持ちを伝える。本当は抱き上げたいところだし、実際に抱き上げそうになったけれど…一部の隙もなく整えてくれた侍女さん達の無言のプレッシャーが…。ニィのフワフワを堪能したら、もっと緊張がほぐれるのに…と思いながらも、フワフワを諦めるアンなのだった。侍女さんを怒らせると怖いのだ…!
暫くすると、侍女さんがレオナルド様の訪問を告げにやって来た。入って来てもらうようにお願いし、立ち上がって待っていると、すぐにレオナルド様がやって来た。
「今日も美しいね、わたしのお妃様は」
「私の殿下も、とっても素敵だわ」
あまり真剣に褒められると照れてしまうけど、こんな風に笑いながら褒め合うのは良いなと思うと言ったら、いつしかこれが定番の挨拶になってしまった。その時々によって言葉は違うし、心も込めているから、おざなりな挨拶にはならないしね。
少しの間、レオナルド様とお話していると、残っていた半分の緊張もだいぶほぐれてきた。これなら大丈夫だろう。レオナルド様が傍にいてくれるのだから、心配ない。これなら謁見もきっとうまくいく、そんな確信めいたものが生まれてきたのだった。
レオナルド様と共に、【シャーク王国】の第一王子夫妻と使者の方々をお迎えする為、王宮の正門へと向かった。正門前には既に外務大臣ほか、主要な大臣や国内貴族の方々が揃っていて、護衛の騎士達も後ろに控えていた。私達が到着すると、一斉に礼がとられる。レオナルド様が一言かけられ、私達は自分達の定位置へと向かった。これで、お迎えする準備は整った。
そこへ、馬車の到着を告げる先触れがやって来た。間も無く、【シャーク王国】の一団の到着だ。
一団を乗せた馬車が、何台も正門をくぐり抜けて入ってくる。そして、全ての馬車が止まると、1台の馬車から第一王子夫妻と思われる方々が降り立った。続いて残りの使者の方々も、別の馬車から降り立つと、揃って私達の前へとやって来られた。
「ようこそ遠路はるばる我が皇国へとお越し下さった。わたしはレオナルド、隣に立つのが我が妃のアンだ。我々はあなた方を心より歓迎する」
「歓迎有り難く頂戴しよう。わたしはジェルダン、そして我が妃のシオンだ。滞在中、よろしく頼む」
皇国と【シャーク王国】の間に、上下関係はない。国の代表の立場もお互いに次代を担う皇太子と第一王子。お互いに基本的に敬語はなしでいこうというのは、事前に取り決められていたことだ。周りにも、皇国と【シャーク王国】が、これから平等な立場で会談を進めていくということを、示さなければないない。できれば、その会談で本当に良好な関係を築いていければいいのだけど…。それは、これからの会談次第だが。
レオナルド様がジェルダン王子と、私がシオン様と連れ立って、謁見の儀を行う部屋へと向かう。シオン様は、とても穏やかな方だった。今回の滞在の間に少しでも親しくなれたらいいなと思うアンなのだった。
謁見の儀は皇王陛下に対しての儀礼だ。ジェルダン様から【シャーク王国】の代表としての挨拶がなされ、皇王陛下がそれを受け挨拶を返される。また、【シャーク王国】から持ち込まれた贈り物の目録が読み上げられ、皇国からの返礼の贈り物の目録が手渡される。これで、謁見の儀は終了だ。
謁見の儀から会場を変えて、次は会談が行われる。会談に参加するのは、皇国からはレオナルド様と私、そして宰相と外務大臣だ。【シャーク王国】からは、ジェルダン王子、シオン様、そして使者の方々が参加される。国の代表ということで、主にはレオナルド様とジェルダン様とで行うことになるのだが。謁見の儀は滞りなく終えることができた。でも、真に大切なのはこれから行われる会談だ。まだまだ気は抜けない…!
【シャーク王国】の話は、もう少し続く予定です。よろしくお願いします。




