貴族ーそれぞれの思惑ー
レオナルド様と婚約してから、今までは遠巻きに見られていただけだった貴族の方々からのアプローチが、目に見えて増えてきた。これまで王宮に招かれた時は、基本的にセシル様やユリア様、レオナルド様とお話するだけだった。その後で騎士団や、魔術師団の詰め所なんかには、時折足を運んでいたけれど、貴族の方々と交流を持つことはなかったのだ。
もちろん騎士様にも貴族の方はいらっしゃるけど、一人一人の騎士様とお話するわけではなかったしね。レオナルド様が、私と若い騎士様があまり近付かないようにさせてたのも原因かもだけど…。他の貴族の方々とも、王宮の敷地内ですれ違うことはあったが、それだけだったのだ。
神の寵児と呼ばれ、王女様方と親しくさせてもらっているとはいえ、貴族でない私と貴族の方々には、壁があったように思う。私が王宮に出入りすることへの嫌がらせもなかったが、ごく普通の接触もなかったのだ。
それなのに、今では毎日のようにお茶会や舞踏会への招待状が届く。それらのすべてをお受けできるわけではないから、レオナルド様の助言もいただきながら、どの招待をお受けするかを決めている。貴族の中にも派閥があって、偏りすぎないようにしないといけない。それが、まだ私にはよくわからないのだ。
お断りすると決めたものには、丁寧に断りの手紙を書くのが毎日の仕事のようになっている。毎日、本当にたくさんの手紙を書いているのだ。それらの作業に疲れていると…これは皇太子妃になっても続くことだから、『良い勉強になるでしょう』と、教育係の女官さんからニッコリと笑って言われたものだ。その笑顔がなんか怖いと…コッソリと、見咎められないように気をつけて…ため息をついたアンなのだった。
レオナルド様に聞いたところによると、貴族の方々が私に近付きたいのは、皇太子妃専属の女官として皇太子妃の側近の座を狙っていたり、私と仲良くなることで、私に懐いてくださっているレオナルド様の弟殿下のフェルナンド様と、お近付きになりたいという思惑があるのだろうということだった。
それと…婚姻もまだなのに早過ぎる話だけれど…。レオナルド様と私の間に生まれる子どもの、学友の座を狙ってのことだそうだ。私達の婚姻に合わせて婚姻を結ぶ為に、なんと今は婚約ラッシュなのだとか。
(結婚もまだなのに、貴族の人達って本当に気が早過ぎる…!)
このオスラン皇国では基本的に一夫一妻制が取られている。皇族に限っては、その血を後世に確実に引き継ぐ為に、例外が認められているそうだけど、レオナルド様は私以外の妃は迎える気はないと公言してくださっている。
その為、レオナルド様の正妃とはいかなくても、側妃を狙って婚姻を遅らせていた貴族の子女達が、急に婚約を結び始めたようだ。
そして、出来るなら子どもの年齢を合わせて、私達の子どもの学友を狙う、と。皇族は学校には通わないから、年齢の近い貴族の子女を数人ほど学友に選ぶ。よっぽどのことがなければ、ずっと席を並べて学ぶことになる。そして、その交友は成人してからも続くのだ。私もアリーネちゃん達とは、卒業してからも交友が続いているものね。
レオナルド様にも、従兄弟でもあるレイク様の他にも、数人のご学友がいらっしゃって、今でも交友が続いているし、信頼できる側近でもあるそうだ。皇族のご学友、特に皇太子のご学友に選ばれるというのは、貴族からしてみると、とても重要なことなのだ。
(私と仲良くなったからって、フェルナンド様とも仲良くなれるとは限らない。自分の子どもの学友と言われても、きっと選ぶのは私ではないしなぁ。側近は…近いうちに選ばないといけないみたいだけど…まだまだ皇太子妃になる心構えが足りないのかなぁ。今のところ侍女さんだけで、なにも不自由がないんだもの。ついつい、まだ選ばなくてもいいやって思っちゃうんだよね…)
貴族の方々との駆け引きというのは、まだまだ私には難しそうだと思うアンなのだった。
読んでいただき、ありがとうございます。今月中おまけ話を数日おきに投稿予定ですので、そちらもよろしくお願いします。




