誕生日ー心からのお祝いー
誕生日のおまけ話です。
今日はアンの19歳の誕生日だ。皇太子の婚約者の誕生日ということで、王宮は朝から華やかな空気に包まれていた。王宮中がアンの好む花々で飾られ、すっかりお祝いムード一色だ。
本人が大げさなお祝いを望んでいなかったこと、まだ婚約中であるということで、皇太子や王族の生誕を祝うパレードや舞踏会のようなものは開かれないことに決まっていた。婚姻を結び正式に皇太子妃となった後であれば、パレードや舞踏会は逃れられない。国民や国内貴族にも、妃殿下をお祝いする機会を与えなければならないからだ。それは、王族としての義務のようなものなのだ。
今日はごく内輪でお祝いが行われることになっていた。内輪といっても、参加者は晩餐会並みの豪華さなのだが。レオナルド皇太子を筆頭に、ユリア王女やレイク公爵家継嗣など王族方が多く参加するのだから。嫁がれたセシル王女は来られないし、さすがに皇王陛下や皇后は参加されないのだけど。
アンの家族はもちろん、遠方の為リラン君は参加できなかったが、アリーネちゃんやジェシカちゃんはお祝いに駆けつけてくれた。その他にも職場の仲間や、交流のある騎士団の面々が参加してくれるみたいだ。
皆、アンの誕生日を心からお祝いしている面々で、アンも皆に会えるのをとても楽しみにしていた。来年の誕生日を迎える頃には、もう婚姻を結んでいるのだから、こういった内輪の祝いだけを、ゆっくり楽しめるのは今年が最後なのだ。しっかり今日一日を楽しまないとね!
『そろそろお時間です』と侍女さんから声がかかり、アンはレオナルドと共に会場に移動することにした。
レオナルド様は自分が1番にお祝いしたいと言って、朝から二人きりで過ごす時間を作ってくれた。今日の為にずっと前から前倒しで公務を片付け、今日は朝から丸一日時間を空けてくれたのだ。どんな綺麗な花や豪華なプレゼントよりも、その気持ちがアンには何よりも嬉しかった。
レオナルドもアンが見せる心からの笑顔に、満足の表情を浮かべるのだった。一ヶ月の間、激務をこなした甲斐があったというものだ。
お祝い会場に入ると、既に皆揃っていた。レオナルドとアンが席に着くと、この会を主催してくれたユリア王女様から、最初のお祝いの言葉がかかった。
「アンさん、お誕生日おめでとう。皆、心からお祝いしているわ。お父様やお母様も、今日は来られないけれど、お祝いの品を預かっているの。楽しみにしていてね。では、皆さんグラスを手にとっていただけるかしら。アンさんの誕生日を祝って。おめでとう!」
「「「おめでとう!」」」
会場いっぱいに笑顔が溢れる。食事は王宮の料理人がアンの為に、アンの好物ばかりを用意した。直接お祝いの言葉は伝えられない彼らが、彼らなりにいつも料理を美味しいと言ってくれるアンへ、お祝いの気持ちを込めたものだ。
楽しく歓談しながら、美味しい料理を堪能した後、プレゼントのお披露目となった。皇王陛下と皇后様からのお祝いの品はというと、アンの好きな花をモチーフにした宝飾品であった。まだまだあまり豪奢な宝飾品には気後れしてしまうアンにも、素直に嬉しく思える小ぶりの可愛らしいものだった。ユリア王女からは、アンとニィが共に描かれた絵画を贈られた。アリーネちゃんとジェシカちゃんからは、アンの為に品種改良し、アンの名前を冠した花が贈られた。どのプレゼントも、アンの好みをよく理解し、趣向を凝らした素敵なプレゼントだった。
でも、1番のプレゼントは皆の笑顔。皆で楽しい時間を共有できたことだった。アンはとても幸せな誕生日を過ごせたことを、心に刻むのだった。
読んでいただき、ありがとうございました。
9月1日正午におまけ話を投稿予定ですので、そちらもよろしくお願いします。




