学園生活2日目ーかすかな疑問ー
1日の授業は午前3時限、午後は2時限だ。一般科目は算数、語学、歴史などで地球と大きな違いはない。体育のような授業もあるようだ。
そこに来週からは、魔法の授業が加わってくる。魔法の授業はまず生活魔法の習得から行われるようだ。そして、生活魔法の習得が済んだら、初等科では初級の防御魔法→攻撃魔法→回復魔法といった順に学んでいくらしい。
まだ魔法を扱い慣れていない私達は魔法が暴発してしまうことが多々起きる。先生がもちろんしっかり守ってくれているが、それでも防ぎきれないことが全くないとは言えない。その為、まずは自分の身がしっかり守れるように、初級の防御魔法から習得するらしい。
ちなみに防御魔法は攻撃魔法に比べて暴発することは、ほとんどないという。それなら、何かあった時の為に回復魔法も先に覚えた方が…と考えてしまうが、回復魔法は防御魔法や攻撃魔法よりも習得が難しいらしく、防御魔法、攻撃魔法と順にしっかり習得し、魔法に馴染んできた時にようやく回復魔法を学べるらしい。
習得ペースには個人差があるので、スタートは一緒だが、それぞれ順を追って完全に習得が認められるまでは次の魔法を学べないそうだ。
そして、初等科の間にすべての初級魔法を習得すると、晴れて中等科に進学でき中級魔法を学べるのだとか。
この国では初等科は義務教育なので、国民はみんな初等科は卒業しているが、すべての初級魔法習得は卒業要件ではないので、初等科を卒業した全員が初級魔法のすべてを使えるわけではないらしい。
卒業時に習得が間に合わない場合は、もう1年通うことも可能だが、魔法の習得は才能といってもいいので、卒業までに習得できない場合はほとんど全員が中等科への進学は諦めるらしい。
ちなみに、これらはすべてリラン君からの情報だ。リラン君は中等科にお兄さんがいるそうで、これらはお兄さんから聞いたそうだ。姉様は授業のことについては、楽しみにしときなさいって感じであまり教えてくれないから、初めて聞いた情報だ。
学園長とマンツーマンの授業とはいえ、その流れが大きく変わることはないだろう。リラン君やクラスメイトが魔法の授業をとても楽しみにしているようなので、私も少し楽しみになってきた!
一般科目の1週間の遅れについては、ジェシカちゃんがノートを貸してくれることになった。ノートを見てわからないことは教えてくれるって!
友達っていいなぁ…前世では周りから距離を置き友達と呼べる子もいなかった【杏】には、感情を押し殺さずに普通に接することができる友達がいるというだけで、すごく感慨深いものがあるのだ。友達は大事にしなきゃ!
今日は2時間目も歴史の授業で、午後からはまだ皆も今日が初めての利用だという、初等科と中等科の生徒が利用できる図書館に向かった。読書は前世からずっと私の趣味だ!図書館は初等科と中等科の共有のものだけあって、かなり大きな2階だての建物だった。入館前から楽しみで仕方なかった。
ジョッシュ先生に先導されて皆で入館し、利用するにあたっての注意点などを司書の先生から聞いた。
特に魔法関係で中等科に上がるまで読めない本などもあるが、ほとんどの本は閲覧可能であること。
魔法関係の本は貴重なので、館内閲覧のみだが、通常の読み物は貸し出しもできるということ。
あとは貸し出しなどの申請方法や、利用可能時間などの諸説明を受け、各々気になる本を探したり読んだりという時間になった。
ちなみに閲覧に制限のある本は、中等科に進学してから配布される専用のカードを持ってないと開くことができないそうなので、どの本も手に取ることはできるらしい。なので、別置されてるわけではなく、普通に書架に並んでいるので、どんな本があるかだけは見ることができるわけだ。
専用のカードか…どういう仕組みになってるんだろう。一種の防御魔法?
書架を歩いて回って私が気になったのは、午前中に歴史の授業で習ったばかりの、創造神【ティオ】がこの世界【ディーネ】を創造した時の神話を子どもにもわかりやすいように挿絵を多く用いて書かれた本だ。早速、閲覧スペースに移動し読み始める。
そこで気づいたことがある。創造神【ティオ】が着ている衣装…前世の最期に夢で出てきた神様たちの衣装に似ているような…?転生し7年、もう夢の詳細まではっきりとは覚えていないが、そんなことを思った。
あの夢に出てきた神様たちは創造神と何か関係ある?でも、さすがにそんな壮大なことは…。きっとこの世界の神様たちがみんな着る衣装というだけなのだろう…そう結論付け本を閉じるのだった。
午後の授業を終えた私にジェシカちゃんとアリーネちゃんが一緒に帰らないかと誘ってくれる。
「今日は姉様と校門前で待ち合わせしてて…姉様も一緒でいいかな?」
「もちろん!アンちゃんのお姉さんに会えるの楽しみ!」
2人がそう言ってくれるので、姉様も早速お友達ができたと紹介したら安心するだろうしと、3人でおしゃべりしながら校門へ向かう。
校門には姉様がもう待っていて、合流すると早速ジェシカちゃんとアリーネちゃんを紹介する。姉様も2人に自己紹介をし、4人でそれぞれの話や今日の出来事などを楽しくおしゃべりしながら歩き始めた。
ジェシカちゃんとアリーネちゃんの帰り道は同じ方向で、2人とも私の家よりもう少し距離があるので、2人とは私の家の前でバイバイだ。そして、私の家の前に着いたのだが…
「ミャア~」
ん?ニィ?
声がするので周りを見渡すと、隣の家の方からニィがこちらに向かって歩いてきていた。そのまま私の足下まで来るとスリっと身体をすり寄せてきて「おかえり」と言うかのように「ミャア」ともう一鳴きするニィ。
「そのこがアンちゃんの飼い猫??」
「そうだよ、ニィっていうの!」
「撫でてもいいかな?」
そう、ジェシカちゃんが言うと、私がいいよと答える前にニィの方からジェシカちゃんに近づいていく。
私がニィの行動の早さにビックリしながら『いいよ』と答えると、ジェシカちゃんは目をキラキラさせながらニィを撫でる。ニィも撫でられて嬉しそうだ。
それを見ていたアリーネちゃんもジェシカちゃんと交代するようにニィを撫で、2人が満足したのがわかったのかニィはまた私に一鳴きし、家に戻って行くのだった。
「ニィちゃんって、すごく賢いんだね!」
「そうそう、まるでアンちゃんのことよろしくって言ってる感じだった!」
と、ジェシカちゃんとアリーネちゃん。
「そうかな?人の表情をよく見てるなぁとは思ってたけど」
それから、少しニィの話をして、また明日ねと言ってバイバイした。
それにしても…今まで出迎えに来てくれたことなんて一度もなかったのに、なんで今日に限って…。人の感情を読むのがうまいとは思ってたけど、気配を察するのも上手い?まさか私が友達を連れてくるのを知ってたなんてことはないよね。まさか…ね。
こうして、私の学園生活2日目は無事に終わったのだった。