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レオナルド&アンーお忍び視察ー

たまには息抜きも必要な2人の休日です。

 いきなりレオナルド様が『街に行こう!』と言い出した。忙しい政務の間を縫うようにして、少しでも2人で会う時間を作ってもらっているのだが、私の方も皇太子妃の勉強が中々忙しく、本当に短時間しか会えない事の方が多い。


 今はそのようにして作り出した、短時間のティータイム。お茶が注がれて、侍女さん達が控えの間に下がった途端の発言だ。



「街に?それは、視察で行くの?」


「視察といえば視察だ。ただし、お忍びで、だが」


「え?お忍びで?!それは、難しいのでは…?」


「姉上はよくお忍びで街に出ていたではないか。アンも一緒に回ったことがあるだろう?それなら、わたしもお忍びで視察しても、問題はない」


「セシル様とは確かに一度ご一緒しましたけど…。レオナルド様はセシル様よりも、皇太子としてのご政務がお忙しいでしょう?時間が作れるかどうかも怪しいわ。それに、護衛の数も相当数になりそうだから、お忍びと言えないのではないかしら…」


「姉上のお忍びには護衛はそれなりに必要だが、わたしは自身で剣も振るえるのだ。そう多くの護衛はなくとも、わたしとアンくらい守り抜くことができるさ」


「…レオナルド様は、確かにお強いかもしれないけど…それでは、大臣方は許可して下さらないのでは?」


「小うるさい大臣や侍従達には事後報告で良い。今の近衛隊長はわたしの幼馴染だから、護衛はそちらに直接話を通せば良いのだ」


「事後報告って…幼馴染の騎士隊長様を共犯にされるの?!」


「共犯などと人聞きが悪い。奴はこういった【面白い事】が好きだからな。すぐにでも乗ってくるだろう。それに、騎士隊長に【様】付けなど必要ない」



 いくら反対しても駄目だ…。私が大臣や侍従さんにチクったりしないように、念押しもされた…。一度言い出したら、駄目だろう。どうやって時間を作るのかもわからないけれど、それは任せておけと言われた。


 私の方は、事前に言われた日に準備を整えて待っておけばいいそうだ。準備を手伝ってもらう侍女さん達も、口が固い者を最低限の人数でと…。私に付いてくれている侍女さん達は、皆さん信頼できるから大丈夫!いや、むしろ…チクってくれた方が…?


 事後報告でその事を知った時の大臣や侍従さんの反応が怖い…。レオナルド様よりも私へ言う方が言いやすいだろうし、問い詰められそうだもの…!



 それでも、誰かに止めてもらう事もできず、レオナルド様からお忍び視察の日時が決まったとの連絡を受けてしまった。もう後には引き返せない…。


 数人の侍女さんに説明すると…



「お忍びですか!それでは、街で目立たぬよう町娘風がいいでしょうか?それとも、貴族のお嬢様のお出かけ風がいいかしら?楽しみですわね!」



 なんだか侍女さん達のテンションが上がってしまった。これで、侍女さん達から事前に報告が上がる事もなさそうだ…。



 お忍び視察当日ー・・・



 結局、町娘風に仕度を整えてもらった。そして、準備が整った頃に、騎士様の休日仕様な感じに着替えられたレオナルド様がやって来た。後ろには数人の護衛の近衛騎士様。…近衛騎士隊長様もちゃっかり混ざっている。



 ここまでは何事もなく順調のようだけど、部屋から出てしまえば2人が連れ立って出かけているのが、皆の目についてしまう。どうするのだろうかと思っていたのだが…。



「では、行くとしよう!」



 そう言って控えの間からエスコートされた先は…私の部屋の居間で?!



「え?出かけるのでしょう?なぜ居間に?」


「本当は正式な婚姻を結んでから教える手筈なのだが、先に教えてしまっても問題ない。この居間には隠し通路があって、ここから直接王宮の外に出られるのだ。さぁ、行こう!」


「いや…婚姻を結んでから教わる事を先に知ってしまうのは、さすがに…!」


「アンとわたしの婚姻がこの先なくなる事はないだろう?そんな事は絶対にないし、させない。だから、問題はない」



 レオナルド様の変な理屈が出た。これは、また何を言っても駄目だろう…。



 そして、笑顔の侍女さん達に見送られながら、護衛の騎士様達と共に隠し通路を抜けていく。隠し通路は流石に狭かったけれど、灯りもついていて、通りにくいということはなかった。



 隠し通路を抜けた先は王宮の外の、王宮所有の林の小屋の中。ここは、限られた王族しか使う事がないそうだ。また余計な知識を先に知ってしまった…。いや、逃げ出すつもりはないのだけど…。



 そして、お忍び視察がスタートした。いろいろ不安もあったが、うまく街に溶け込めたようで、騒ぎになることもなく、街を散策することができた。【ブラウン商会】では、さすがにアリーネちゃんにばれたけど、驚きを表すこともなく笑顔で対応してくれた。さすが商人さん?



 なんだかんだと、レオナルド様とこんなにゆっくり過ごせるのは久々だ。騎士様方も少し距離を置いて護ってくれているから、2人きりで過ごせている感覚も嬉しい。自然と笑顔が零れ、レオナルド様を見上げると、レオナルド様も笑顔を返してくれる。街を散策するというごく普通なことだが、今となっては中々簡単にはできない。そんな、幸せな時間を過ごすことができたのだった。



 その頃の王宮ではー・・・


 レオナルド様の不在に気づいた侍従さんが王宮を探し回り、すぐにその事が大臣方にも知られ。もしかしてと私の部屋にも探しに来たら、私も不在。どういうことだと、王宮内外を駆けずり回って…。



(申し訳ありませんでした…)

読んでいただき、ありがとうございました。

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