お仕事スタートー魔法研究所にてー
卒業後間もない話ということで、短編にはせずに、卒業後のおまけ話として投稿してます。
皇太子妃になる為の勉強の傍ら、魔法研究所での研究の仕事も始まった。古代の魔術書の読み解きや、魔法の発展が主な仕事だ。高等科では研究者を目指すコースを選択しなかったので、一から勉強だ。
魔術書の読み解きは中々根気を要する作業だ。一日中、魔術書と睨めっこという時もある。図書館にも通い、読み解きに必要な資料を借りた。王宮附属の図書館は蔵書も豊富だ。
魔法の発展の一環で、オリジナル魔法の開発も研究所の大事な仕事の一つだ。より良い魔法が生まれたら、生活もより良くなるしね。
(オリジナル魔法かぁ…。何かないかぁ)
そんなことを常日頃考えるようになっていた。そして、ふと思ったのは…。この国には娯楽、特に子ども達が楽しめる娯楽が少ない。これまで生活していても、そう感じたことはあった。家族や友達と遊びに行ける場所というのがそんなにないのだ。
でも、私が気づいてないだけで、探してみたら何か娯楽もあるのかと思っていたのだけど、皇太子妃の勉強を始めてみて、本当に娯楽が少ないのだということに気づいた。特に首都は活気はあるが、自然が多いわけではないし、山や川で遊ぶいうこともない。遊ぶ場所が限られているのだ。
(前世には反対に娯楽はたくさんあったんだけどなぁ。あり過ぎると感じるほどに?)
そんな時に、ふと思いついた。皇国は海を持たない。首都近辺には泳げるような大きな川もない。水は魔法で生み出せるから、水不足なんてことにはならないんだけど。だから、子ども達は泳ぐということも知らないかもしれない。
(泳げなくても水遊びなら、皆楽しめるかな?どうせ遊ぶなら、ただの水場じゃなく…)
特に首都の夏は暑くなるから、尚更水遊びは楽しそうだ。そう思って、ある程度の広さの練習場を借りて、思いついた魔法を試させてもらう。何を始めるのかと、研究所の同僚さん達や私付きの侍女さん達も周りを囲んでいる。
目の前に広がる、事前に地魔法で創り出しておいた大きな窪みの前に立つ。
(そうだなぁ…。まずは水魔法だよね!さすがにこの大きさの窪みに、生活魔法で水を満たすのは無理だからね。多すぎず、少なすぎずちょうど満たしたいんだから、呪文はこうかな…)
【水よ出でよ、我が目の前の窪みが満ち足りるまで】
すると、見る見ると水は窪みに満ちたりたのだった。
(よし、成功!次は風魔法だ!呪文はこうかな)
【風よ水を優しく誘い、波を生み出せ】
最後は光魔法を使って、と。呪文はこうだ。
【光よ水を包み込め、煌めく光で水を浄化し、清らかさを保て】
目の前に波のプールが完成した!小さな小さな海のようだ。綺麗に、でも優しいさざ波がたっている。そして、光魔法の効果で水は太陽の陽射しを受けたようにキラキラと輝いている。
見守っていた魔法研究所の同僚達は、事前にどんな魔法を試すか説明してなかったので、唖然としている。失敗するかもだし、説明なしで試してみたのだ。
その中で1番早く立ち直った同僚が話しかけてくる。
「アンさま、これはもしや…海を創り出されたのですか?!」
(仕方ないのかもしれない…ケジメなのかもしれない…。でも、同僚さんに『様』付けされるのは馴れるものではないな…)
「そうです。前に隣国で見た海を思い浮かべて、子どもでも水遊びができる遊び場を作りました。海を見たことがない子どもも多いでしょうから、ビックリするかもしれませんが、これからむかえる暑い季節にはいいでしょう?」
「子ども達はきっと喜ぶと思います!首都の子ども達は海を見たことがない子がほとんどだと思いますし。ちなみに、この魔法はどのくらい持続できるのですか?」
「そうですね…かなり魔力を込めたので、少なくとも1週間は持続するかと。光魔法の浄化作用で掃除要らずですし、きっと手入れも楽ですよ」
「1週間も持続させられるのですか?!…さすがアン様の魔力。想像を軽く越えられますね…」
「そ、そうですかね…?とりあえず、これはオリジナル魔法の成功ということで大丈夫ですかね?」
「「もちろんです!」」
同僚達の強い肯定の声が練習場に響いたのだった。早速、研究所長経由で『プール』の設置許可を申請する。申請内容を視察に来た文官さん達も一様に驚いていた。そして、未来の皇太子妃のオリジナル魔法ということで、トントン拍子に手続きが進み、その年の夏には首都のど真ん中に『プール』が設置された。そして、子どもだけではなく大人も楽しめる娯楽施設として、大盛況となるのだった。
水属性、風属性、光属性と3属性の魔法を使っているが、同時に行使する組み合わせ魔法というよりは、上掛けしている形なので、それぞれの属性魔法を使える術士が居れば『プール』は創り出せる。最初に窪みを作るのには地魔法も使わなきゃかもだけど。
なので、公営プールの職員にはその3属性のいずれかの属性持ちが採用され、人気の職業となっていったのだった。こうして、アンが生み出したオリジナル魔法は延々と受け継がれていくのだ。
(もうちょっと呪文を熟考して、かっこいい呪文にすれば良かったかも…)
未来の皇太子妃がこのように呟いたのだとか…。
読んでいただきありがとうございました。
卒業後のラストストーリー『神様の愛は執拗に…』を短編で6/27に投稿しました。




