卒業旅行ー後半ー
翌日、朝から街の中心部へと向かう。街に入ってからは馬車を預け、リラン君の許嫁さんとの待ち合わせ場所へ徒歩で向かう。街中で護衛騎士様や侍女さん達を引き連れて歩いていると目立ち過ぎてしまう。目立ち過ぎも良くないということで、騎士様達は制服ではなくラフな服装で、少し距離を置いて護っていてくれる。侍女さんも1人だけだ。侍女さんにも私服になってもらって、付き添いという感じを装っている。
待ち合わせ場所へ着くとすでに許嫁さんは到着していて、私達を待ってくれていたようだ。
「初めまして、ナターシャと言います。リランから、皆さんのことはよく聞いていたから、ぜひ会ってみたかったの!よろしくね!」
「ナターシャさん、こちらこそよろしくお願いしますね!」
ナターシャさんは街中のお店に詳しくて、オススメしてくれるお店もまったくハズレがなかった。そんなお店の中に民芸品を手作り体験できるお店があって、見本を見せてもらうと首都ではあまり見ないデザインですごく可愛かった。小粒の宝石や水晶が散りばめられてあって、ブローチなどの宝飾品から雑貨までと、何を作るかの選択肢も豊富だ。
(これをセシル様達のお土産にしようかなぁ…)
そう思って、ナターシャさんに早速相談!きっと喜んでくれるとナターシャさんも言ってくれたので、このお店で手作り体験をしてみることにした。
作ることにしたのは、ブローチと小さな絵を飾れる額だ。セシル様とユリア様にはブローチを。ブローチであれば、普段使い用にしてもらえるだろうから。レオナルド様には額を。レオナルド様は絵画が好きで、執務室にも小さな絵画を飾ろうかどうかと話されていたから、額がお土産に良いと思ったのだ。
土台は銀で出来ていて、そこに小さな石をはめ込んでいく作業だ。はめ込んでいくと、独特な民芸品らしいデザインが完成していく。紫水晶を中心に、セシル様とユリア様、レオナルド様のイメージに合うような組み合わせで、石を選んでいく。
仕上げはお店の人がしっかりとしてくれるので『失敗』はない。喜んでくれるといいな!
3日間の間にナターシャさんのオススメスポットは制覇した。湖ではボート遊びも出来て、皆で競争したりもした。騎士様も結構本気になってたよ?
5日目、リラン君とナターシャさんのお祝い会だ。リラン君とナターシャさんのご両親と兄弟姉妹、それと私達。ごくごく内輪の会だ。レストランを貸切にしてもらって、侍女さん達にも手伝ってもらって飾り付けをする。そして、準備が整ったところで主役の2人の登場だ。ナターシャさんのドレス姿、すごく似合ってる!お祝い会は始終笑い声が溢れ、皆が幸せな気持ちになれたのだった。
そんな幸せの余韻を感じながら、6日目は少し早起きをして、隣国に向かって出発した。隣国に入る手続きは簡易化されていて、スムーズに馬車は進んでいく。そして、お昼前には海沿いの街に到着した。まずは海!前世ぶりの海だ!アリーネちゃん、ジェシカちゃんの2人は初めての海なんだって。すっかりはしゃいでしまう。海を堪能した後は、街で新鮮な海産物を豊富に使った料理を堪能する。取れたの魚って本当に美味しい!海が綺麗な分、尚更なんだろうな。別荘に戻る時間もある為、中心部を少しだけ散策して、馬車に乗り込む。
そして、ついに最終日。ナターシャさんだけでなく、リラン君ともここでお別れだ。リラン君は残りの休みをナターシャさんと過ごした後は、砦で働き始めるので首都には戻らないのだ。
寂しいけれど、これが一生の別れというわけではない。『また会おう!』ナターシャさんも含めてそう約束しあって、【マリーゼ】の街を発ったのだった。
帰り道も順調で、あと首都まで1日という町に着いた。今日はここで宿泊して、明日にはもう楽しかった旅行も終わりだ。最後の夜をアリーネちゃん達と楽しもうと思っていたのだけど、町の宿屋さんの前がかなりの人だかりで埋まっている。
何事かと騎士様の1人が先に見てきてくれたのだが。戻ってきた騎士様の報告に驚きを隠せない。今なんて言った?皇太子様御一行が宿に滞在してるとか聞き違いだよね?!
だが、もちろん聞き違いということではなく…。
(こんなタイミングでこの小さな町にレオナルド様が来るなんて…。絶対待ちきれずに迎えに来たんだ…。侍従さん達でも止めれなかったんだな…)
なんだか侍従さん達に同情しながら、慌てて宿に向かう。私達が近づいたことで人だかりはばらけ、宿の前に立つ騎士様達が見えてくる。そして、見覚えのある侍従さんが立っているのを見つける。
「アン様、おかえりなさいませ。お疲れでしょうが、皇太子殿下が中でお待ちです。どうか中へお入りください」
「わかりました。すぐに向かいます」
そう言って、アリーネちゃん達のことは侍女さん達に任せ、先に宿に入る。侍従さんに先導されて、レオナルド様が待つ部屋に案内される。部屋に入室した途端…。
「予定通りの旅程だと先触れもあったし、今日は政務も片付いていたから、迎えに来たのだ。王宮より、こちらの方がアンともゆっくり話せると思ってな。おかえり、アン」
アリーネちゃん達との最後の夜がとか、旅行は帰り着くまでが旅行なの!とか、いろいろ思うところもあったけど、レオナルド様に嬉しそうに微笑まれたら、そんなことはもういいかと思ってしまう。3週間も留守にすることを許してくれたんだし、旅行の間はゆっくり過ごせた。アリーネちゃん達には後で埋め合わせをしよう。
そうして、卒業旅行最後の夜は皇太子殿下とゆっくり過ごすことになったのだった。
あ、お土産は皆に喜んでもらえた!ブローチはもちろん普段使い用だけど、普段使いだからこそ、王宮で過ごされる時はセシル様もユリア様も、よく着けてくださっている。
レオナルド様に渡した額は喜んではもらえたけど、私的には失敗だった…。『ちょうど良い大きさだ!』と言われて、なんと私の肖像画を描かせて執務机の上に置かれたのだ…!そんな所に置いたら侍従さん達や、執務室にいらしたお偉方の目にも留まるというのに、なんていうことだ…。侍従さん達の目が生温かい…。別の置物とかにしとけば良かったと、本気で後悔したのだった。
卒業旅行も終わり、これで本当に卒業したという気持ちになった。これから本格的に王宮での勉強の始まりだ。
(気を引き締め直して頑張ろう!!)
そう自分に活を入れるのだった。
これにて『神の寵児アン・リードの異世界学園生活!』完結です。
卒業後の話を数話考え中です。短編掲載にするか数話の連載にするかは、まだわかりませんが。もし見かけることがありましたら、読んでいただけると嬉しいです。
この話に目を止めて読んで頂いた皆さん、ありがとうございましたm(_ _)m




