卒業旅行ー前半ー
卒業旅行前ー・・・
レオナルド様がなんだかんだと渋ったり、仕舞いには『私も視察がてらついて行く!』とか言い出して、『そんなお時間はありません!』と侍従の方々に必死に止められていたり…。
そんな具合で、毎日がなんだか騒々しかったが、どうにか今日無事に出発することができた。
メンバーにリラン君がいるのがどうしても心配だったみたいだけど、リラン君には故郷に可愛い許嫁がいるんだから、そんな心配ないのに。その許嫁さんも、向こうで紹介してもらうことになってるしね。時期的に結婚式には出席できるかわからないから、皆でお祝い会を開くんだ。許嫁さんに会うのも楽しみにしてるんだから。
旅行にあたって私に付けられたのは、護衛騎士様が4人に、侍女さんが3人、御者さんが2人。王家の私用の馬車を2台手配してくださって、1台には私達が、もう1台には侍女さん達が乗っている。護衛騎士様達は馬に乗り、私達が乗る馬車の周囲を守るように配置されている。なんか友達との卒業旅行とは思えない仰々しさ…。ちなみに、騎士様はベテラン勢ばかり。若い騎士様を付けたとしても、レオナルド様以外によそ見なんてしないよ?!たまぁに、憧れの目で見てしまうかもしれないけど…ね。
出発前、そんなことをつい溢してしまった私に、セシル様がおっしゃった。
「例え友人との私的な旅行とはいえ、必ず護衛騎士と侍女は付くものよ。もし、私が行くのだとしたら、もっと仰々しい一行になるでしょうね。もちろん、アンさんがレオナルドと正式に婚姻を結んだら、同じようになるのよ?皇太子妃だと、それ以上かもしれないわね。だから、今はまだ気楽な方よ。今ならまだ充分楽しめると思うわよ?それに、仰々しいことには徐々に慣れていくわ。王族である以上、ある程度は諦めが肝心よ」
「これで気楽な方なのですか…。でも、そうですよね…これからは仰々しくなることの方が多いんですよね。仰々しいのを嘆くんではなくて、今回はしっかり楽しんできますね!」
そう言って、今度はお土産トークだ。セシル様が望めば、出入りの商人はすぐさまいろいろなものを手配してくるのだが、私の目から見てセシル様にと良いのではと思ったものが、欲しいと言われる。何か良いものが見つけられるといいな。リラン君の許嫁さんにもオススメがないか聞いてみよう!
馬車の外を見てしまえば、チラチラと騎士様の姿が見える。どうしても仰々しさも目についてしまうが、馬車の中で皆とおしゃべりしてる分にはとても楽しい。護衛の騎士様が付くことなどは、もちろん事前に皆には伝えて了承は得てあった。だけど、やっぱり立派過ぎる馬車と護衛陣に驚きは隠せていなかったな。驚きも落ち着いてみると、立派な馬車はさすがの座り心地で、長旅でも全然疲れそうにない。揺れも少なんだよね。馬も王宮所有の立派な馬だったし、御者さんの腕も超一流。当然といえば、当然なのかな。
疲れはこないのだが、休憩を多く挟んでくれる。騎士様に『休憩です』と告げられ馬車の外に出ると、すかさず侍女さん達がやってきて、お茶やら何やらと甲斐甲斐しくお世話をしてくれる。申し訳ない感じがするけど、これにも慣れていかなきゃいけないんだよね。ちなみにリラン君は休憩中は護衛騎士様達のところへ行き、なにやらいろいろと尋ねているようだ。ベテラン勢の騎士様は模擬戦などでの優勝経験者も多く、これから故郷近くの砦で騎士の訓練を始めるリラン君にとっては、憧れの大先輩達なのだ。目がキラキラ輝いてるよ、リラン君。
皇国の南の国境沿いにあるリラン君の故郷の街【マリーゼ】は、馬車で1週間程の距離だ。同盟国である隣国との行き来も盛んで、隣国に入れば馬車で半日もかからないところには海沿いの街がある。海のない皇国であるが、リラン君の故郷の街の人達は海も馴染み深いものらしい。
【マリーゼ】自体は海には接していないが大きな湖があり、その湖畔は皇国の貴族達のリゾート地としても賑わっていて、別荘が立ち並んでいるんだって。その別荘の中には王家所有のものもいくつかあり、皇太子であるレオナルド様所有のものもあるそうで…到着後はそこに滞在することになる。まぁ、そこを拠点にいろいろ回る予定だからいいんだけど!窮屈だなんて思っちゃいけないんだけど!!
ゆとりをもった旅程が立てられていたので、道中の町でも多少散策の時間をとってもらった。なので【マリーゼ】までの1週間はあっという間に過ぎて、もう遠目に街の門が見えてきた。今日はもうお昼を過ぎているので、そのまま別荘に向かって、観光は明日からだ。明日はリラン君の許嫁さんとも合流する。【マリーゼ】での滞在は1週間。明日から3日間は【マリーゼ】の街を中心に観光だ。5日目にリラン君と許嫁さんのお祝い会。6日目は隣国に入り、海沿いの街を見て回ることになっている。7日目はまだ予定は決めていない。まだ観光してもいいし、休息にあててもいいように、余裕をもってある。
別荘に着いた…んだけど。王家の別荘って、別荘でもこんなに立派なんだ…!周りに見えるいくつかの別荘は全て王家所有のもので、私達が今目の前にしている立派な別荘がレオナルド様所有の別荘らしい。なんか立派過ぎて寛げそうにない…。立派過ぎる王宮での生活を少し離れて羽を伸ばそうと思ったんだけどなぁ…。
侍女さんに促されて、別荘に入る。すると、別荘を管理している執事さんを中心に、ズラッと並んだ使用人さん達。
「アン様、並びにご友人の皆様。ようこそお越しくださいました」
執事さんがそう言って出迎えてくれる。
「よろしくお願いします。こちらは私の友人のジェシカさん、アリーネさん、リランさんです」
「かしこまりました。それでは、早速ですがお部屋に案内させていただきます。長旅でお疲れでしょうから、ごゆっくりとお寛ぎくださいませ」
執事さんがそう言うと、数人の屋敷付きの侍女さん達が前に出てきて、部屋まで案内してくれる。ここでは、各自個室が用意されているようだ。…何部屋でもありそうだしね。そして、私の部屋は侍女さん達が待機する部屋も付いている、王宮で私が過ごすことになった部屋のように立派なところだった。
「こちらはレオナルド様が滞在される時にご使用になる部屋でございます。アン様にはこのお部屋をご用意するようにとのことでしたので。それでは、ごゆっくりとお休みくださいませ」
そう言って、私付きの侍女さんにバトンタッチして、屋敷付きの侍女さんは部屋を出ていくのだった。
(レオナルドとのお部屋ならこれくらいは普通なのよね。セシル様は慣れると言われたけど、中々…)
そんな考え事をしている間にも、侍女さん達はテキパキと荷物を片付けたり、お茶を用意してくれたりと、すばらしい連携で私がより過ごしやすいように、部屋を整えていってくれるのだった。




