文化祭開催ー実行委員長ー
運動会はあっても、この世界の学校に文化祭や合唱祭のようなものはなかった。街でのお祭りもいいけど、せっかく生徒数の多い学園なんだから、文化祭があったら楽しそう。音楽の授業はないから、合唱祭というのは難しいだろうけれど。
そんなことをふとクラスの皆に喋ったのだ。それが担任の先生の耳に入り、面白い発想だと思った先生が学園長や他の先生方にも伝えた。そして、私は今どうしているかというと、学園長室に呼び出されているのである。
(なぜ?!)
呼び出された理由がわからなかったので、疑問だらけである。魔法の授業以外で学園長室に行くことなんて初めてだ。学園長室に入室すると、スミス先生と担任の先生が待っていた。
そして、文化祭の話を切り出される。クラスの皆にはザックリしたことしか話してないから、詳細が聞きたかったようだ。そして、覚えている範囲でお話する。『前世の記憶です』とは言えないから、思い付いた話としてだが。
それまでの授業の成果を発表したり、演劇などの出し物をしたり、屋台などを開いたり。初等科、中等科、高等科の生徒が役割分担したら、生徒主導でできるのではないか。最初の開催では広く一般客に開放するのは難しいかもしれないけど、生徒の家族は招待し、ゆくゆくは学園のことを広く知ってもらう為にも、一般客も入れるようにしたらいいのでは。
そのようなことを話す。先生方は私の話を真剣に、途中質問なども交えながら聞いている。そして、話終えると。
「文化祭というものは有意義なもののようですね。生徒主催で開催するというのもいいでしょう。初等科の生徒も授業の成果の発表や演劇などの発表ならできるでしょうし、中等科・高等科の生徒が役割分担すれば、屋台なども問題ないでしょう。これは試しに開催してみましょうか」
スミス先生は乗り気なようだ。開催時期の候補などをどんどんあげていく。そして、最後にこう言うのだった。
「生徒の指揮を取るのはアンさんで大丈夫ですね。発案者ですし」
「……指揮、ですか?で、でも、先輩方を差し置いて私が指揮を取るのはちょっと…」
「でも、全体を見ることをできるのはアンさんしかいませんよ?なにせ、初めての開催なんですから」
この時、クラスの皆に軽くおしゃべりしたことを、すこぉし後悔したのだった。
それからの話は早かった。初等科・中等科・高等科から、それぞれ委員が選ばれ、実行委員会を立ち上げた。不本意ながら、実行委員長は私だ。開催日は半年後に決められた。それまでの間にしなければいけないことは山積みだ。演劇や屋台にしても、まずはなにをしたいかの希望を聞いて、なるべく重複が出ないようにしなければ。発表の順番や舞台を決めたり、屋台の設置場所も決めなければいけない。道具や食材をクラス単位で用意してたら、中々大変だ。まとめて発注できるなら、それが1番だ。商店との交渉は先生も付いてくれたが、高等科の先輩方にお任せした。
文化祭が近づくと、放課後の学校は文化祭に向けての準備一色だ。劇の練習をしたり、当日の飾り付けを用意したり。
商店との交渉も順調だった。1クラスの発注数など限られているが、学園全体でとなるとそれなりだ。それと、初めての生徒主催の行事ということで、かなり値段も抑えてくれたようだ。予算は学園が出してくれるとはいえ、無限ではないので、本当に助かった。各クラスへの予算の分配も大事な仕事だ。
そして、とうとう文化祭当日を迎えた。学園の入り口の門には飾り付けがされ、文化祭の雰囲気をバッチリと出している。飾り付けにはもちろん魔法も駆使されている。だから、クラスごとの飾り付けも実に個性的だ。
講堂では朝から次々と演劇発表などが行われている。観客席は満員だ。家族もたくさん来場してくれているからね。
各教室の発表ブースや、屋体も中々の盛況みたいだ。屋台からは美味しそいな匂いが漂ってくる。あとで、絶対に食べよう!
私は何をしているかというと、実行委員長として、何人かの実行委員と文化祭がうまくいってるかどうかを見て回っている。トラブルがあった場合は早めに見つけて、解決しないといけないしね。なので、中々忙しいのだ。私のクラスは合唱をすることに決まったのだけど、その練習にも毎回は参加できなかった。今日も発表本番にはもちろん合流するけど、それ以外の間は委員長としての仕事が詰まっている。屋台に実際に行けるかどうかも…怪しい?
本番前にクラスの皆と合流し、最後のリハーサル。本番はなんとか歌いきることができた。歌は昔からこの国の多くの人に親しまれているものを選んだ。親しみやすい歌だったからか、会場からは大きな拍手をもらえたのだった。
そして、文化祭もなんとか大きなトラブルなく終わることができた。結局、ゆっくり見て回る時間はなかったけど、一旦お昼に実行委員会の本部にしている教室に戻ると、いろいろな差し入れが届いていた。ありがたく、そして美味しく頂いたのだった。
文化祭終了後にアンケートをとったところ、来年以降も開催したいとの意見ばかりだったのだとか。それを、魔法の授業の前にスミス先生が教えてくれる。
「来年以降もアンさんに委員長を任せていれば安心ですね」
そう言ってスミス先生は笑うけど、来年以降も委員長なのは荷が重い!そう感じるのだった。




