出前授業ー新たな神の存在ー
今日は【聖教会】から聖職者が講師として出向いて行われる、出前授業がある。朝から中等科の1年生は皆、講堂に集まった。どんな話だろう?通常の授業も好きだけど、こういう授業も新鮮な感じがして楽しみだ。
創造神【ティオ】はこの世界【ディーネ】を創造した後、光・水、火・地・風の5神の中でも力の強い5神を選び、世界の行く末を託した。しかし、神々の属性は他にもあった。創造当時は力が弱く、6神目に選ばれることも、自ら名乗りを上げることもなかったが、【闇】の神も存在した。
世界のほとんどの生物が光・水・火・地・風の神や精霊たちの加護や寵愛を授かったが、一部の生物は闇の神や精霊から加護や寵愛を授かった。
光と闇は相容れない。闇の加護や寵愛を授かった者達は集団を作り、いつしか国を興した。闇の国【シャーク】である。【シャーク】と他の国々とは、お互いに距離を置いていたが、まったく交流がなかったわけではなく、一部では交流がなされていた。
だが、ある時代に光神の寵愛を強く受けた王が君臨する新興国家が、闇の国【シャーク】に突如攻め入った。
『光の力で世界に影を落とす闇を打ち払う!』
そんな間違った盲信に取り付かれていたのだ。新興国家であるが故に、甘言を囁く者達に付け入られる隙も多かったのだ。
神々は争いを望まない。創造神に世界を託された5神だけでなく、その頃には5神に並ぶ程の力を身に付けた闇の神もまた、争いを望まなかった。悲しんだ神々が世界への干渉を弱めたことで、加護や寵愛の力がどんどん弱まっていった。
神々の思いをいち早く感じとったのは聖職者達だ。聖職者達は一心に祈った。どうすればまた世界をお守りいただけるかと。その熱心な声は神々に届いた。神々は答えた。
『我々は世界を愛している。この愛しい世界で争いが行われることを、我々は望まない。神や精霊には光・水、火・地・風・闇と違いはあるが、もとは同じ創造神【ティオ】様より生み出された命。その違いによって争いを起こすことなどあってはならない』
その声を聞いた聖職者達の行動は早かった。守護の属性など関係なく、国中の聖職者達が一体となって、争いを収めるべく奮闘した。守護の力が弱まっていることは、皆が感じていた。皆、聖職者達の声を聞き入れ、争いをやめた。そんな中、争いの火蓋を切った国王は、まだ間違った盲信に取り付かれたままだった。その盲信を吹き込んだ者は、既に改心していたというのに。
国王は【聖教会】の本部へと誘われた。光の神を祀る神殿に住を置き、外部からの情報は遮断された。信心深い聖職者達と祈りを送る日々を続けた。もとより、神への信仰は誰にも負けぬと自負する程だったのだ。国王はようやく理解した。自分が信ずる神は、決して他者の排除など望んでいないと。
神々は争いを望まない。争いを起こした国王を断罪することは容易いが、神々はそれも恐らく望まない。聖職者達は信仰の力で国王と向き合ったのだ。
【光と闇は相容れない】それは変わらない。またいつの日か同じことが起きるやもしれない。そうして、闇神を信ずる民は海を渡り、未開地であった大陸を開拓し、そこに新たな国を興した。国の名前は【シャーク王国】。
【シャーク王国】と他の国々の間には取り決めが結ばれた。【不干渉】の取り決めだ。交易も交流さえもなくなった。
まとめると、そういう話だった。その話は現在よりは神話の時代に近い頃の史実。今でも【シャーク王国】との交流はない。大陸を隔てる海は航海に適さない荒波で、船を出すことはできない。今では、かの国が存在するかどうかもわからないのだ。
今も、この皇国は平和だけど、他国との争いごとを抱えている国は存在する。争いごとが大きくなると、それに比例して争いに関わっている人達の守護の力が弱まっていく。だから、守護の力が弱まり過ぎないように争うんだって。おかしな話だ。なんで争うことをやめようとしないのか。それに…。
(“光”があるのに“闇”がないのはなんでだろうと思ってたけど、やっぱりあったんだ。“光”が存在するからそこに“闇”があって、“闇”が存在するから“光”が活きるはずなのに。『光と闇は相容れない』って決めつけるのはおかしい気がする…)
そんな思いに駆られた。でも、皆は疑問に思っていないみたい。先生達も疑問には思ってなさそうだ。
闇属性もあるなら、私は全属性持ちじゃないじゃない。なのに、皆揃って全属性持ちだなんて。最初から闇属性はカウントされてなかったんだ。もしも私に闇の神様の守護もあれば…光と闇は共存し得ると、自信を持って言えるのかな…。そんなことを考えながら、どうにも不完全燃焼な授業は終わったのだった。




