夏休みー【花祭り】ー
今日から【花祭り】開催だ。商業区だけでなく、大通りには所狭しと露店が並び、王宮前広場には特設の劇場も設置されている。
今日は朝から家族4人で花祭りに出かけることにした。まずは露店で花を選ぶ。お祭り開催中は女性は髪や服に花を飾るのだ。男性は妻や恋人、意中の人などに花をプレゼントするのが慣習になっている。今日は父様が母様、姉様、私に花をプレゼントしてくれるんだって。色とりどりの花の中から一輪を選ぶのはすごく悩むと思う。そんな中から父様は、母様には赤、姉様にはピンク、私には黄色の花を選んでくれた。
早速、皆で髪に花を飾る。花祭りに参加しているという雰囲気が出てきた!花を選んだ後は、他の露店だ。国内の各地方からだけでなく、同盟を結んでいる隣国からも露天商が集まってきているから、普段は見る機会の少ない異国の物も見たり買ったりすることができる。早速、皆で露店を見て回る。家族揃ってのお出かけはやっぱり楽しい!
夕方には王宮前広場の特設の劇場に向かい、取ってあった席に座る。今日行われる演目は、大人から子どもまで楽しめると評判の【オスラン皇国】の建国物語だ。勇ましい初代皇王の様子や、それを見守る美しい姫君…。国民は皆が知っている建国物語だけど、やはり劇で見ると盛り上がりが全然違う。普段はこういった劇などの娯楽は少ない為、大勢の観客が集まり、劇場は満席だ。立ち見まで出ているようだ。
花祭り2日目だ。リラン君も花祭りまでに首都に戻ってこれたので、今日は4人でお祭りを巡ることにする。【ブラウン商会】の前で待ち合わせだ。【ブラウン商会】も、もちろん花祭りに合わせて特設の露店を出しているし、お店も賑わっている。アリーネちゃんも昨日はお店のお手伝いをしてたみたい。でも、今日はお手伝いは良いから友達と花祭りに参加しておいでと言われたんだって。家族は忙しくて、交代で合間合間にしか花祭りを覗けないから、今日はその分もゆっくりしてきて大丈夫なんだとか。
まずは王宮前広場に向かいながら、それぞれが気になった露店に寄って見て回った。王宮前広場では、食べ物の露店が多く集まってて、特設の劇場の観客席が食事用に開放されているので、そこで買ったものを食べることができるのだ。
王宮前広場に着くと、それぞれ好きな物を買っていく。私はリラン君がオススメしてくれた、リラン君の故郷に近い地方の料理にすることにした。魚料理が多いらしくて、今回オススメしてくれたのも魚のフライにトロリとした餡がかかっている料理だ。カリッと揚げてあって、すごく美味しいお魚だった。【オスラン皇国】は海に接していないので、海産物は輸入頼みだ。水魔法を駆使して運んでくるので、新鮮だがその分値段も高めだ。なので、普段は肉料理の方が定番だ。こういう時は、魚料理の美味しさを知ってもらう為にも、比較的安価に抑えて提供してるんだって。そのおかげでしっかり食べることができた。久々のお魚料理は本当に美味しかった!
お昼ご飯を堪能した後は、【聖教会】に向かった。花祭り期間中は普段は入れないエリアも公開されるということで、参拝者も多い。私も何度か家族と参拝したけれど、今日ほど多くなかったしね。
普段は聖堂で参拝するのだが、今日はその奥にある、普段は聖職者達の祈りの場になっている所まで入ることができるんだって。かなり混み合っているので、ある程度入場制限をかけているらしい。列に並んで待っていると、順番がやって来た。ジェシカちゃんに先導してもらいながら、中に入っていく。聖堂を抜けて、その奥の祈りの場まで行く。そこまで広い部屋ではない。でも、壁面には創造神【ティオ】が世界を創造した時の神話が描かれた壁画があり、中央には創造神【ティオ】の神像が祀られていて、祈りの場というに相応しい部屋に感じた。
まずは壁画を見て回った。ジェシカちゃんがその描かれた場面の説明をしてくれる。歴史の授業で聞いた話や、神話の絵本で見た話が描かれた壁画もある。その中で、1枚の壁画に目を奪われた。そこには、創造神【ティオ】を中心に5人の神様らしき人物が描かれている。私が見入っていると、ジェシカちゃんがその壁画の説明をしてくれた。
「その場面はね、創造神【ティオ】がこの世界を創造した後のことで、5人の神様にこの世界を託した時のことが描かれているの。神様や精霊はこの世界には多くいらっしゃるけど、描かれている神様達は5属性の神の頂点に立たれている神様なのよ」
「神様の頂点…」
(この神様達って…。最近はあまり思い返すことがなかったけど、前世の最期に夢に出てきた神様達だよ…ね?記憶も朧げになってきてたけど、こうやって描かれているところを見ると、同じ神様達だってわかる…。え?神の頂点に立っている神様達が夢に出てきてたの?!)
そんなことを考えている間も、皆は私が壁画に見入っていると思っていたみたいで待っていてくれる。でも、まだ後ろには待っている人もいるからと先を促されるまで、信じられない思いで固まっていたのだった。
(これ以上、前代未聞なことは起こらないで欲しかったのにっ!そうだ、これは気のせい…気のせい…)
そう結論付けて、また花祭りを楽しむことに意識を向ける。そうして、このことは深く考えないようにしているうちに、記憶の片隅に追いやられていくのだった。




