攻撃魔法ー火球よ撃ち抜けー
水球を動かない的に百発百中できるようになるまでには、1週間程かかった。毎日、休憩時間や放課後に皆でボール遊びで練習した成果もあって、徐々に命中率は上がっていたのだ。同じく苦手だと言っていたジェシカちゃんも、練習しているうちにどんどんコントロールが良くなってきているから、攻撃魔法の授業に入った時は楽になるだろう。
さぁ、次は動く的にチャレンジだ。的に向かって魔力を込めていくと、的が私の周囲を回り始める。水球を生み出し、圧縮させて狙いを定める。でも、いざ放とうとすると、もう的は先に動いていて…。そして、中々放つタイミングが掴めないでいると、水球への集中が途切れたからか、水球が消滅してしまっていた。
狙いを定めながら、水球の方にも集中していなければならないのか…。狙いがすぐに定まるのなら、水球の維持も問題ないんだろうけど…。まずは、放つタイミングをうまく見定めなきゃ。魔力だけ込めれば、的は動き始める。その状態で、水球を放つタイミングを掴む練習をすることにした。そして、だいぶタイミングが掴めた頃、実際に水球を生み出して放つ練習を始めた。
動く的に初めて水球を命中させることができたのは、練習を始めて3日後のことだ。でも、中々連続しては成功しなかった。動く的へも百発百中で当てられるようになるまでには、結局2週間かかった。
規則的に動く的には当てられるようにはなったが、不規則で動きが読めなければ難しいと思う。まだまだ練習が必要だ。ただ、水球の習得は終わった。これから、残りの属性を学びながら、練習継続だ！
水球の魔法の次は、スミス先生から火球を生み出す魔法を習うことになった。
まずは、いつも通りスミス先生が先にお手本を見せてくれる。火球を生み出す呪文は、【火球よ出でて、標的を撃ち抜け】だ。なんか水球を生み出す呪文より攻撃的な感じだ。
そんなことを思いながらも、集中しなきゃと気持ちを切り替えて的に向かう。まずは動かない的からだ。魔力を込めて、呪文を唱える。
【火球よ出でよ、標的を撃ち抜け】
すると、手の平の前に火球が生み出される。顔サイズの火球を拳サイズまで圧縮していく。そして、しっかり狙いを定め的へ放った！よし、成功！
次に動く的にも同じく火球を放ち、一回で命中させることができた。的が丈夫だから、実際には撃ち抜けないけどね。この的を撃ち抜くには、どれくらいの威力が必要なんだろう？ふと気になって、スミス先生に聞いてみる。
「初級魔法ではまず撃ち抜けません。中級魔法の威力が強いものであったら傷くらいは付けられるでしょう。撃ち抜くとなると、上級魔法の威力が必要でしょうね」
相当、丈夫なようだ。多少、【聖光】が張り切ってしまって威力が高くなってしまっても、全く問題なさそうだ。上級魔法の練習の時にはもっと丈夫な的もあるみたいだしね。
放つこと自体は水球と変わらないから、動かない的や規則的に動く的へ当てるのは、もう難しくない。すると、スミス先生は少し不規則に動く的を用意してくれた。今度はこの的で練習だ！
少しずつ不規則な的にも慣れて、命中率も高くなってきた。もうすぐ夏休みに入るということで、それまでは火球で不規則に動く的へ当てる練習を繰り返した。夏休みが終わったら、次は風球を生み出す魔法の授業に入るそうだ。
夏休みかぁ。1ヶ月半くらいの長期休暇だ。すでに、夏休みの計画は立て始めている。まずは、お祖父様とお祖母様の家に遊びに行くことになっている。首都から3日程馬車でかかる距離だ。プチ旅行気分である。両親は仕事があるので最初は姉様と2人で行くんだ。4週間程滞在する予定で、最後の1週間は両親も休暇を取って合流することになっている。
そして、首都に戻ってきてからは、アリーネちゃんの家にジェシカちゃんとお泊まりに行く予定だ。
夏休み後半には首都で年に一度の大きなお祭りがある。【花祭り】だ。3日間に渡って開催され、地方から露天商が集まるし、劇などのイベントも開催される。そして、祭りのクライマックスは、【花姫】に選ばれた女性が行う最終日のパレードだ。また祭り期間中には、聖教会が普段は入れないエリアも公開することになっている。折角の機会なので、皆で行ってジェシカちゃんに案内してもらう予定だ。聖教会に詳しいと言えば、ご両親が聖職者のジェシカちゃんが1番だしね！
今から夏休みが楽しみだ！
