初級魔法ー新しい先生登場ー
休日の間に【聖光】を呼び出す練習も忘れずにした。最初は5属性の【聖光】を同時に呼び出してみる。やはり5属性の【聖光】が集まった光景は格別に綺麗だ。部屋の中でフワフワと浮かぶ、その光を見て改めてそう思う。しばし、その光景を飽きることなく眺めているのだった。
そして、次はそれぞれ望んだ【聖光】を呼び出していく練習だ。これを何度か続けて、きちんと呼び出せるようになったのを確認して復習はお終いだ。
休み明け、綺麗に包装したクッキーを皆に持っていく。クラスの皆も先生も喜んでくれた。スミス先生も笑顔で受け取って、その場で食べてくれた。実は甘党だったらしい!
今日からは初級の防御魔法の練習に入る。そこで、スミス先生から2人の先生を紹介された。水神と風神の加護を持つキャシー先生、地神の寵愛を持つリック先生だ。
スミス先生は光神と火神の寵愛を持っているので、光と火の魔法は今まで通りスミス先生から、他の3属性の魔法については、キャシー先生とリック先生から学ぶらしい。
キャシー先生は40代の女性で、ショートの金髪がよく似合っている。仕事が出来る女性って感じ!茶色の眼は優しげで愛嬌もある。
リック先生はきっと30代の男性。赤毛の髪に同じく顎鬚。眼鏡をかけていて、少し伸ばした髪と顎鬚のせいか、年齢がわかりにくい。
最初に学ぶのは水の防御魔法からということになった。スミス先生からキャシー先生にバトンタッチだ。スミス先生とリック先生はそれぞれ学園長室と教員室へと戻っていく。
「それでは、アンさん。改めて今日からよろしくお願いしますね」
「はい、キャシー先生!よろしくお願いします!」
「水属性の魔法を使う時は、まずは水の【聖光】を呼び出します。そして、力を貸して欲しいと呼びかけます。呼びかけに応じてくれたら、これから行う魔法のイメージを明確に思い浮かべ、そのイメージを【聖光】に伝えます。伝えたいと願えば、伝えることができますよ。そして、呪文を唱えれば魔法が発現します。ここまでの説明は大丈夫ですか?」
私が『はい』と頷くと先生は説明を続ける。
「アンさんはとても【聖光】に好かれていると学園長から聞きました。それなら、すぐに呼びかけに応じて力を貸してくれるはずです。ただ、張り切りすぎて力を貸し過ぎてくれる可能性はあります。寵愛度が増すごとに、少量の魔力で強い効果を持つ魔法が使えるのはこの為ですね。でも、まずは強い効果よりも正確に魔法を使えることが大事です。今日の所は、先生が魔法を使う所を見ていてください。そのイメージをしっかり伝える為にも、アンさんも【聖光】を呼び出しておいて、一緒に見ているといいでしょう」
私が水の【聖光】を呼び出したことを伝えると、早速先生は実践を始める。
「最初に教える防御魔法は『水壁』を創り出すものです。高さはだいたい2m、幅は4mの壁を創ってみるので、その大きさをしっかり覚えるようにしてください。それでは、始めますね」
そう言うと、キャシー先生は片手を前に出し、魔力を込めていき【水壁よ出でて我が身を守れ】と唱える。すると、一瞬でキャシー先生の前に水壁が現れた!
実際に現れた水壁を見てみると、高さと幅を聞いて思い描いていたものよりも大きく感じた。壁の中では水流が巡っていて、近づくと冷たい水飛沫が飛んでくる。
「どうですか?意外と大きいでしょう?明日からは、このサイズの水壁を出せるようになるまで練習してもらいます。しばらく、創り出したままにしておくので、よく見ておいてください」
「もっと近づいてみても大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
そう確認すると、水壁にギリギリまで近づいてみる。服が飛沫で濡れるのも構わず、水壁の周りを歩いて回った。
(明日はこれを魔法で創り出すのかぁ。水の【聖光】さん?ちゃんと大きさを覚えていてね?)
そう呼びかけるように見つめると、まるで『わかったよ!』と言うように、私の周りをフワフワと回るのだった。
翌日は早速、実践だ。まずは水の【聖光】を呼び出す。そして、力を貸してくれるように呼びかける。わかってくれたのか、光が強さを増したので、創り出したい水壁の大きさを思い描いて伝える。昨日と同じサイズね!と念押しだ。すると、昨日と同じく私の周りをフワフワと回り始めた。わかってくれたかなと思い、先生と同じように片手を前に出し、魔力を込めていく。そして、呪文だ。
【水壁よ出でて我が身を守れ】
水壁が現れた!でも…やっぱりと言うべきか…思い描いてた大きさの2倍はあるかというサイズの水壁が目の前に陣取っているのだった…!大きさがあるからか、距離は離れているのに飛沫がここまで飛んでくる。
(全然わかってくれてなかった…!力は貸してくれてるから水壁は創り出せたんだろうけど…やっぱり力を貸し過ぎてくれてる?)
キャシー先生を振り返る。
「【聖光】が張り切りすぎたみたいですね」
「きちんと大きさは伝えたつもりだったんですけど…」
「威力が高い方が喜んでくれると思ったのでしょうね。でも、何度も練習を重ねるうちに、きちんと伝わるはずです。頑張って練習しましょうね」
「はい、頑張ります…!」
そして、今週いっぱい練習を続け、なんとか最初に先生が創り出したサイズの水壁を作り出せたのだった。水系の魔法の練習時には着替えは必須かも…そう思うアンだった。




