魔法学院
魔法の出現により、世界の情勢やパワーバランスは崩壊と言っていい程、急激に変化した。そのため国連は情勢を戻すために魔法師を育成し、管理するための国際教育機関を先進国にいくつか設立した。
日本には〝魔法師教育学院〟ー通称〝魔法院〟と呼ばれる存在が設立された。魔法は義務教育の一つとなり、子供は、地元の小学校で小学生の頃から学ばされる。そして、中学生の頃になると、魔法学院の本部がある首都に進学するという流れになっていた。光達も今年から首都の方に進学することになっている。
しかし、光にとっては逆に困ることであった。
「はあ、どうしよう。これから」
姉妹二人は学院に行く準備を楽しそうにしていたが、光の気持ちは沈んでいく一方である。
そして、再び。
「はあ、どうしよう」
ため息をつくのであった。
そして、そんな光を逃がさないとばかりに時間が過ぎていった。
それから三人で話ながら目的地に向かった。
「じゃあ!お互いに頑張ろうね!」
「ああ」
「・・・・うん」
魔法院に着いた光達はそれぞれで別れた後、普通に進学式を終えた。教室に戻った光は自分の席に座っていた。そして、何事もなかったことにホッとした。
そんな時に声をかけられた。
「ちょっと、いいか?」
「えっ、いいけど」
声をかけてきたのは整った髪と整った顔立ちをした少年だった。その少年は光の事を興味津々で見ていた。
「君の名前って、癒世 光だよね?」
「うん、そうだけど」
なんで知っているんだろう?
「じゃあさ、癒世 茜は、知っているか?」
ああ、またか。
光はため息をつきそうになった。
「僕の姉さんがどうかしたの?」
やや、面倒くさそうに光が答えた瞬間、少年は光の方に詰め寄ってきた。
「じゃあ、君は、あの〝太刀の女王〟と呼ばれるあの人の弟さんなのかい」
「まあ、そうだけど」
〈太刀の女王〉ー。
それは、光の姉である癒世 茜に付けられた異名であり、二つ名だ。
魔法師として優れた実績として評価された生徒または魔法師は、国際魔法師連盟により二つ名を与えられる。ちなみに妹の明里も二つ名を持っている。光にとっては、漫画みたいだなとしか思っていなかった。しかし、今のご時世、二つ名を持つ事は強さの証とも言われてもいて二つ名は名誉な事であった。
「あっ、悪い、紹介がまだだったな俺の名
は、早川 健太ってんだ。よろしくな」
「僕は、癒世 光。よろしく」
光は、この学院で初めての友達ができた。
「やっぱり、あの人の弟なら、すごいんだろ。光は」
「期待を裏切るかもしれないけど、僕、魔法はダメダメなんだ」
苦笑を浮かべ光は言った。
「嘘だろ。そんなの」
「ほんとだよ。結構有名なんだよこの事は」
光の言葉に健太は信じられないといった表情をする。
その様子に光は苦笑する。
光は、まったくと言っていい程、魔法ができなく、姉の茜と妹の明里と一緒にされ周りからは『姉妹の恥』とまで言われていた。
そのため光は、二人の迷惑にならないように色々な事をした。しかし、まったく実を結べるものがなく、現在に至っていた。
「他人事みたいな言い方で悪いけど、お前大変だったんだな」
健太の言葉に光は苦笑で返すのであった。