朝は早く、慌ただしく
「うん!お兄ちゃん今日も美味しいね!」
「ああ、ほんとに、うまい」
姉、妹に誉められて光は嬉しかった。しかし、次の姉の一言に光の気持ちは逆転した。
「そういえば、今日は〝検査〟があったよな」
「!?」
「ああ、あったね、お姉ちゃん」
妹はポンと手を叩いた。しかし、光はギクリとした。そして、その話題から逃れるように自分の作った朝食を口にはこんでいく。
そんな兄の様子に気づいた明里は。
「大丈夫!お兄ちゃんなら、なんとかなるよ!」と、励ました。
「そうだ!明里の言う通りだぞ。光」
その後、食べ終えた食器を洗いながら、おもむろに呟いていた。
「・・・魔法・・か・・。」
魔法ー。それは、90年代でならオカルトやインチキな物で漫画やおとぎ話の中だけの存在であった。しかし、2000年の始めに発見された〝古代遺跡〟により世界は大きく変わった。
古代遺跡オリジンー。
〝全ての始まり〟とも呼ばれる古代遺跡。
この遺跡の発見によって全てが変わった。
しかし、この遺跡は発見されたわけではない。突然に〝現れた〟のだ。
この遺跡は突如として太平洋上に現れ、その事件に世界中が驚愕した。そして、調査隊の調べによって発見された新たな技術が〝魔法〟であった。その事件と発見をさかいに世界そのものが大きく変わり、発展していった。
今では魔法は身近なものになり魔法を使う者達を総称して〝魔法師〟と呼ばれるようになっていた。
「そういえば、お母さんは?」
学校に行く準備をしながら明里が聞いてきた。
「仕事でまだ帰れないって、昨日、連絡がきてた」
答えたのは、茜であった。
光達の母親も魔法師で、重要な役所に就いている。
「そうなんだ」
「でも、今週末には帰ってくるって」
少し、落ち込んでいる明里を茜が励ました。
光は、その様子を見て、少し気持ちが温かくなった。
学校に向かいながら光はため息を連発していた。
「大丈夫よ!お兄ちゃん」
「そうだぞ、光」
姉妹二人が光を励ます。
「ありがとう。あれ?」
光はあることに気がついた。
「姉さん達、〝それ〟てもしかして」
「ああ、これか」
「うん、そうだよ。今日使うんだって」
そう言う二人の首と左手首にはブレスレットとネックレスがあった。
それぞれに綺麗な宝石が付いている。
姉妹がつけているのはどこにでも売っていそうなアクセサリーである。
しかし、光は知っている。それが〝ただのおしゃれのアイテム〟ではないことを。
それから三人は学校の門に着いた。
光は、再び、重いため息を吐いた。
「まあ、何とかなるさ!」
茜が励ますように光の肩を叩く。
光はそんな姉の気遣いに少し救われた感じをした。