謁見
王城にある謁見の間は、広い空間の所為か音楽ホールのように声がよく響き渡っていた。
室内にいる人数が少ないため、なおさらことなのだろう。
そして前日の祝祭とは裏腹に、現在は重苦しい雰囲気が包み込んでいる。
僕の目線の先には、国王が玉座に腰を下ろしており、いかにも不機嫌という表情をしていた。
真紅の仰々しい衣を纏った、三十代くらいの男性だ。
国王にしてはずいぶんと若い印象を受けるが、その視線は有無を言わせぬ迫力がある。
しかしこういった場合、かしずかなくてもよいのだろうか。
目の前に立つ僕の上司とも呼べる人物は、胸を張り真っ直ぐに王へと顔を向けたままでいた。
「グランドム。昨夜の手際、邪教徒共が襲撃してくるのを知っていたな」
「可愛い孫の晴れ舞台だ。いかなる事態にも備え、準備を固めるのは当然のことじゃろう」
「その者は何者だ。何故あの魔法を使える。何故私に知らせなかった」
「彼が光の魔法を使えるようになったのはつい最近のことだ。死神の件は既に報告したはず。レベルが上がったことで開花したのやもしれん。別に隠していた訳ではない」
「封印の件では、国が傾くほど高い金を払っている。そんな言い訳では納得がいかん」
「私財をため込んでいた馬鹿共からは、死神狩りを口実に巻き上げただろう。それを彼自身が辞退しているのだ。金についても彼は無償で国に貢献している」
そう言って、グランドムはちらりと視線をこちらに向けるが、国王はまだ難しい顔をしたままだ。
僕としては少しも口を挟む余地はないため、後ろでこっそりとしている事にする。
「それに魔法のことを無闇に喧伝すれば、彼の命が危険だった。帝国の勇者は、女神聖教が正式に認めた女神の使者だからな。まず間違いなく邪教徒として処刑されただろう」
「まさか、そんなことにはならんだろう」
「だが、王に言えばまず会議に掛けただろう? そこから邪教徒どもに漏れない保証がどこにある。今回もあれほど警備を固めたのにも関わらずに抜けて来たのだ。王よ、周りを取り巻いている者共は本当に信ずるに値するのか」
「ふむ……」
「それに、彼を連れてきたのはお主個人との対話を条件としたはず。扉の裏でコソコソとしている者達は何をしている。不審な輩はいまから斬り殺しても構わんのだな?」
「よせ、アレらは私の半身だ」
「約束を違えたな、アウレリウス」
「…………」
ピリピリとした雰囲気が場を支配する。
部屋の外に数人が隠れているのを教えたのは、不味かっただろうか。
フレイヤが気付いてくれたのだが、こうした物騒な話のダシに使われるとなると、若干後悔の念が湧いてこないでもない。
しばらくの間沈黙が支配し、互いに譲らないといった風にも見えたが、やがてグランドムが口を開いた。
肩を竦め、ひょうひょうとした声でもって。
「さて、我々は叱られに来たのかな? 召喚状に書かれていた文は建前か」
「うむ……分かった、もう止そう」
国王も承知したようにして頷いた。
そして、まるで何事も無かったように、表情だけでなく声色まで変わる。
二人は、意外と仲が良いのだろうか。
あるいは二人とも役者か。
「グランドム、此度の一件は大義であった。皆を守った礼だ、褒美を取らそう」
「ギルドに軍隊を持つ許可を貰いたい」
「それはできん」
「では、騎士団で買い占めている薬品類を半分貰おう。冒険者にも役に立つ者はいるが死んでは使えん。それと二人の王子にも権威の乱用は控えるようにと、よく伝えて頂きたい。お陰で粗悪品が出回る始末だ」
「分かった。伝えよう」
国王アウレリウスは、視線をこちらへと向けた。
そしてやや大げさな上機嫌さでもって口を開く。
「さて、それでは私の召喚を一蹴した、此度の功績者は何を望む。金か、女か、どちらかの王子に鞍替えしても構わんぞ。もちろん、我が直接の配下に来ることも許そう。どうだ?」
国王の召喚を一蹴した覚えなど無い。
それに王の言い方に嫌味はなくとも、いやな冷や汗は出るものだ。
また隣で何食わぬ顔をしているご老人の差し金かと邪推した。
以前に国王から手紙をもらった際は、アレイスター家経由であったために、まず間違いないだろう。
とはいえ、当の本人は視線を合わせても顔色一つ変えようともしない。
そして国王はというと何故か期待するような目でこちらを見ている。
他の派閥へと勧誘されているような気もするが、国王や王子の人柄が分からない以上は考える余地は無い。
ときたま利用されている感じを受けるとはいえ、グランドムへの恩もまだまだ返しきれてはいないだろう。
そこまで考えていると、無言でいたために国王から矢の催促がきた。
「さぁ、遠慮せずに言うと良い。あぁ、死神狩りの時のように辞退はしてくれるなよ? 功を成したものには褒美があって然るべきなのだ。またそれでなくては他の者に示しが付かん。無償が美徳とされても、それはそれで困る。皆がやる気を無くすからな」
そうクギを刺されるからには、何かしら答えなければなさそうか。
しかし、恩賞と言われても、すぐには思いつかない。
今の待遇でも僕自身は十分に満足してはいた。
まだ把握仕切れていないということもあるが。
実際に親衛騎士というやつは、僕が想像していたよりも遥かに位の高い役柄であるらしく、いかにも分相応といった具合だ。
なにせ力を使う際は、基本的に王族の名前を借りるのだ。
当然自分より位の高い貴族に命令できてしまう。
もっとも、虎の威を借りるのだから、多少の反感は否めないところもあったりする。
特に、この国の白鍵騎士などは、そのほとんどが士爵持ちであったりするからだ。
実は、爵位を持っていない方が少なかったりするんじゃないだろうか……。
そこで、不敬とは思いつつも、少し欲を出してみることにした。
珍しく、国王とほぼ一対一で話せるのだ。
向上心をアピールする良い機会でもあるだろう。
「国王陛下、僭越ながら、より高い位を頂きたく存じます」
「ほう、なにゆえ陞爵を望む」
僕の言葉を聞いた国王は、上機嫌に理由を聞き返してきた。
もっとも、先ほどの変わりようを見ていると、機嫌が良いのも演技にも見える。
そのためなるべく慎重に答えることにした。
「エリス殿下のために権威を頂きたく。実は昨夜の襲撃にて、騎士の中には私の指示に眉を顰める者がおりました。有事の際に人を素早く動かせぬのであれば、いかに志が有ろうともエリス殿下のお役には立てないでしょう。また、今後も人を動かす機会は多く恵まれると思います」
完全にエリスをダシに使ってはいるが、実際に事実なので問題は無いだろう。
本当に足を引っ張ってからでは遅いのだ。
まぁ、昨日の今日で、すぐに上げてもらえる訳もないだろうが。
「良いだろう、次の機会に貴殿は男爵だ」
と、思っていたのだが、国王は軽い口調のまま快諾した。
そして、驚いた表情をしているこちらを見て上機嫌に笑う。
「だが、位に頼らず人を動かしてみせろ。人は権力のみでついて来るものではない」
「はい、ありがとうございます」
まさに言ってみるものである。
しかし、そんなにホイホイ上げてしまっても良いのだろうか。
少しこの国のゆく末が心配になる。
「それに子を作れ、永代だ。その血は使えるやもしれん」
「考えておきます」
最後の言葉に若干の疑問符が浮かんだため、答えを濁しておく。
国王は頷いてみせると、グランドムの方へと顔を向けた。
話は終わりといった具合か。
「グランドム、レイネシアがその若者に会わせろ言ってきている。寄って行け」
「自分が屋敷に顔を出せばよいものを、親不孝者が」
「よせ。アレはよくやってる」
***
帰り際にレイネシア王妃の元に行くと、私室へと通された。
グランドムの娘さんのはずなのだが、若くて綺麗な人だ。
さすがは王妃というだけはあるか。
もしかしたらアレイスター家が美人ばかりなので、血筋なのかもしれない。
「お久しぶりです、お父様」
「レイネシア、親を呼び出しおって」
「私からの手紙はお読みになったはずです。お返事をくださらなかったのは、お父様の方ではないですか?」
「エリスのためだ」
「アレイスター家のためでしょう」
グランドムがエリスの名前を出した途端に、レイネシアの声色がほんの少し変わる。
「無論だ。それがエリスのためとなることが理解できぬほど、馬鹿に育てた覚えはない」
「そうですか、分かりました。早速ですが、士爵と二人きりで話がしたいのです。隣の部屋にお茶を用意していますから、お待ち頂けますか? テルエラ様もそちらにいらっしゃいます。あと士爵の従者も」
「いいだろう」
すると、控えていたメイドの一人が案内のために前へと歩み出た。
先ほどに続き、少し居心地が悪い。
レイネシア王妃とグランドムはあまり仲が良くないのだろうか。
グランドムは僕の肩をポンとたたくと、部屋を出て行ってしまう。
部屋の中には、レイネシアとメイドが一人、そして僕だけが残される。
レイネシアはこちらを観察するようにして上から下へと視線を移し、もう一度顔をじっくりと見ると、ようやく口を開いた。
「お父様の所為で既に事は済んでしまいましたが、改めて聞きます。貴方はこの国に何をもたらしてくれますか」
「何をもたらすか、でしょうか?」
「えぇ、すぐには答えられませんか?」
何をもたらすか……。
面接だろうか?
正直なところ僕が貴族になる理由は、人に馬鹿にされない程度の権力が欲しいというだけだったのだが、それをそのまま言う訳にもいかないか。
それに僕にできることを問われている訳なので、自分のことをアピールしろということか?
面接か?
しかし、騎士である以上は国の役人みたいなものなのだし、こういう事を聞かれるのが普通なのだろう。
馬鹿なことを考えずに、真面目に答えることにする。
「私はエリス殿下の親衛騎士です。親衛騎士が成すのは殿下の望むことです」
「えぇ、その通りです」
レイネシア王妃は一度だけ頷くと、ゆっくりとこちらを観察するようにして、正面から横、やがて後ろへと部屋の中を歩み始めた。
それを目と首の動きだけで追い掛けていると、やがて一周した頃に王妃は再び口を開いた。
「士爵、貴方はお父様とテルエラ様と仲が良いそうですね。娘や孫とも面識があり、アレイスター家と深い繋がりがある」
「はい、懇意にして頂いております」
「お父様、いえ……。グランドム伯爵がとても恐ろしいお方だという話は聞いていますか?」
「お話の上では」
「ではエリスの望みと伯爵の望みが違えた場合、貴方はどうするつもりですか」
レイネシア王妃は機嫌が悪いのだろうか。
意地の悪い質問だが、答えない訳にはいかないのだろう。
ただ、刺すような物言いが少し気になる。
レイネシア王妃とは昨日軽く挨拶をしたきりのはずなのだが、もうすでに嫌われているのだろうか。
「無礼を承知で申し上げれば、グランドム伯爵は恩人であっても私の仕える主人ではありません。仮に天秤があるとすれば、それは常にエリス殿下に傾いております」
「天秤……ですか、良い例えですね。でも貴方とエリスの間柄は長い付き合いではないと聞きます。言うほどの忠誠心があるとは思えませんね。貴方はエリスの何を知っているというのですか?」
「レイネシア王妃のおっしゃる通りです。ですが、その短い間柄にも関わらず、エリス様は私のために親身になって助言をし、あまつさえ私の痛みに涙を流してくださいました。少なくともエリス様が至極純真な心をお持ちなことは理解しているつもりです」
「……。貴方、まさかエリスが人を怖がるようになった理由を知っているのですか?」
「さぁ、なんのことでしょうか」
すると、レイネシア王妃が表情を変える。
先ほどまでの意地悪な質問をしつつも、どこか機嫌の良さそうなものを含んでいた顔が真剣なものへと。
目を細め、睨み付けられてしまう。
何か不味いことを言っただろうかと内心で冷や汗をかく。
とぼけてみせたのがバレてるのだろうか?
しかし、あえてエリスからそう聞いた訳ではないのだから、どこかの鈍感な主人公のフリをしていれば良いはずである。
だが、レイネシアの反応を見ると、エリスの人見知りはやはりあの予知夢の所為なのだろうか。
もしかしてエリスは、ラインハルトだけではなくレイネシア王妃や他の者達のことも避けている?
そもそもアレイスター家の者達も、エリスと積極的に仲良くしている様子は見られなかった。
エリスはいつもひとりであったのだ。
そこまで考えていると、レイネシアは細めた目の力を緩めた。
「そう……良いでしょう。ここはテルエラ様を信じます」
内心でホッと胸を撫で下ろす。
どうやら、またテルエラのおかげで助かったようである。
レイネシアは隣の部屋のドアへと近づくと、こちらを振り向いた。
「それにしても、よく舌が回るようですね。貴方はお父様によく似ている。それとも、それはエリスを想ってのことなのかしら」
「少なくとも、日々気に掛けてはおります。エリス殿下には、私の従者とも仲良くして頂いておりますので」
「あの子が仲良く……? そう、そうですか……。アオイ士爵、エリスを頼みますよ」
「えっ? あ、はい」
すっかりと悪い印象を持たれたと思っていた矢先のことで、気の利いた答えを返せなかった。
レイネシア王妃は僕の短い答えに満足気に頷くと、扉を開いて隣の部屋へと入って行った。
***
城での用事を全て終えて、帰路についたときのことだ。
城の中庭を歩いていると、グランドムが話を切り出した。
「ユウ君。しばらく忙しくなる。これからは毎日のようには稽古を付けてやれないかもしれん」
「しばらくですか」
そして、グランドムはすぐ後ろを歩くテルエラの方に一度視線をやってから、さらに続けた。
「テルエラの力も借りる事になるだろう。ちと込み入った事でな。災いの芽というものは早いうちに摘んでおく必要がある」
「ええと、はい、分かりました」
「すまんの。じゃが、君の伸びは目覚ましいものがある。しばらくはレベルを上げると良い。体の使い方も慣れてきた頃だろう」
「えぇ、では、そうしようかと思います。あまりお気になさらないでください」
グランドムは満足気に頷く。
「ふむ、しかし君は日に日に他人行儀になるな」
「そうでしょうか?」
「どうじゃ。ウチの孫娘を嫁に貰って、儂の孫にならんか。さすれば気を使う必要もなかろう」
「あはは、グランドム様、またご冗談を」
最近はこの手の冗談が日常化しつつあった。
もう冗談なのか、本当なのか、分からないくらいなので少し困る。
「ふむ、そうか……」
そしてこのご老人も酷く残念そうに呟くのだ。
普段の彼を見ていると何か試されている気がしないでもないので、妙な返事をする訳にもいかない。
そうして歩いていると、今度は華やかな衣服を着た少女達が現れる。
「あらまぁ、いらっしゃいましたわ。リフィル様」
「うふふ、リフィル様のおっしゃる通りでしたわね」
三人組の少女達だ。
こちらの進行方向に出て来たため、自然に目が合ってしまう。
「あらまぁ、こちらを見ていらっしゃいますわよ?」
「うふふ、これはリフィル様を見ていらっしゃるのでは?」
「きゃー」と、二人が手を取り合って騒いでいる。
内容まで丸聞こえだ。勘弁してほしい。
「も、もう、お二人とも? 私達がお城まで来た理由をお忘れではなくて?」
「うふふ、私は覚えておりましたわ」
「あら、いやですわ。私だって覚えておりましたもの」
まさしく、きゃははうふふと騒ぎあっている。
こちらに用がありそうな手前、このまま触れずに通り過ぎて良いのか迷うところである。
「さて、儂らは先に帰るとするかの」
終いにはグランドムにまで気を使われてしまう始末。
テルエラも無言でその後ろを着いて行ってしまう。
フランとフレイヤは、三歩下がった位置で事の成り行きを見守っている。
少女達はグランドムとテルエラへと優雅にお辞儀をして道を開けると、二人が通り過ぎるのを待ってから、こちらへとやって来る。
三人がすぐ側まで来ると、そのうち一人が前に歩み出た。
「ごきげんよう、アオイ士爵。私達、貴方を探しておりましたの」
「リフィル様、でしたよね。昨日はお誘いを断ってしまい失礼を致しました」
一応、社交辞令として無礼を謝っておくことにする。
彼女は公爵家の人間なため、僕よりもかなり立場が上である。
本来であれば、お誘いを断るのもちょっとした問題になりそうではあるが、彼女はこちらの無礼を快く許してくれた。
「いいえ、良いのです。ところで、士爵は本日もお忙しくて? 実は私達、士爵にお礼がしたくて参りましたの」
「お礼、ですか? 私はエリス様の騎士として当然のことをしたまでです。リフィル様のお言葉だけで十分ですよ」
「それでは私達の気が済まないのですわ」
断りの言葉も、すぐに一蹴されてしまう。
「私達、士爵のお力に本当に感激致しましたの。会場中が美しく暖かな光に包まれたんですもの。侵入者が大勢入って来たときも、少しも不安ではありませんでしたわ。夜空の流れ星をすぐ間近で見たようで、本当に感動しましたの」
話の途中で後ろから「私達ですって」という小声や、指を口元に当てて「シー」といった仕草が見えたが、リフィルは無視して続けていた。
心なしか、ちょっと顔が赤くなった気がしないでもないが、こちらも気にしないでおく。
「こほん……。そこで、一度私達に招かれて頂きたいのです。公爵家に恥ずかしくないおもてなしをお約束しますわ」
「せっかくですが、お気持ちだけ頂戴致します」
「あら、そうですか……」
リフィルがひどく残念そうに言う。
そして、あざとくも上目遣いに見つめられてしまう。
仕方なく、こちらも困った顔を浮かべて見つめ返した。
こういうのは一度折れたら負けである。
やがて、少女の方がクスリと笑う。
「ふふっ……分かりましたわ。またお声を掛けさせて頂きます」
「申し訳ありません」
リフィルはゆっくりと首を横に振ると、僕の左手を取った。
そして、「では、簡単ではありますが」と言いながら両手でぎゅっと握りしめられる。
「アオイ士爵。昨晩は私と家族そして友人をお護り頂き、ありがとうございました。アーセナス公爵家を代表し、御礼申し上げます」
「同じく、リトリビア公爵家を代表して、御礼申し上げます。士爵様」
「同じく、ハイウィル伯爵家、御礼申し上げます。士爵様」
と、後ろの二人にも順にスカートを広げてお辞儀をされる。
案外二人も凄い肩書きである。
なんというか、ここまでされると逆に申し訳ないくらいであった。
「わざわざありがとうございます。どうか、お顔をあげてください」
ツレない返事しかできない、自分の方が謝りたい気持ちでいっぱいである。
「それでは、失礼します」
「えぇ、士爵に女神の御加護があらんことを」
そう言って、三人に仰々しくも見送られてしまった。
遊んでいる暇は無いか……。
帰り道にフランにもよかったのですかと問われたが、特に何も言わずに頷いておく。
目下の問題である銀騎士との決着がつくまでは、僕は立ち止まる訳にはいかないのだ。
それにエリスの予知夢が当たってしまっている以上は、今のうちに済ませておかなければならない事もある。
銀騎士に、エリスの見た絵画の予知夢、そして女神の遺した予言……。
仕事は山積みだ。