夜のデート
閑話です。
今日も夜遅くに目覚めてしまう。
理由は分からない。体調も特に悪くは無いはずなのだが。
ベッドの上を確認すると、僕の腕を掴むフランはまだ夢の中の様で、フレイヤの方を見れば彼女はやはり起きている様だった。
左右を二人の美少女に囲まれてのお目覚めではあるが、熟睡できないというのはあまり嬉しいものでは無い。
死神であるフレイヤも、夜というのは退屈なものなのだろうか……。
もっとも、睡眠の必要の無い彼女に比べたら、僕の感じる退屈など、取るに足らない悩みなのかも知れないが……。
そう思い直し、どうせ起きてしまったのならと、少女を夜のデートに誘う。
「フレイヤ、ホットミルクでも飲まない?」
「……」
あまり洒落たセリフでは無いが、それでも少女は頷いてくれる。
フレイヤの返事を確認すると、僕はフランの腕をそっと外して寝室を出た。
リビングの照明の魔光石に魔力を込めて部屋を明るくし、キッチンへと向かう。
ミルクを適当な鍋に入れて魔法で温め、マグカップに移してフレイヤに渡してあげる。
「少し熱いから、気を付けて飲むんだよ」
「……」
彼女の頷きと、両手で受け取った事を確認すると、ゆっくりと手を離す。
ミルクを飲みながら、そういえばこの屋敷のコンロを使用したことが無いなと考え付く。
フランは使っている様だが、彼女の場合は直接コンロに魔力を注ぎ込んでいたんだよな……と。
「何をしているの……?」
「ちょっと、構造が気になって……。あ、ここに魔結晶を入れるのかな」
内部には神語で魔術式が書かれており、これが何らかの魔術的な効果を持っているのであろうと推測できた。
今度時間のあるときに、解読してみるのも面白そうだと考えながら、フランに怒られないようキチンと形を元に戻しておく。
少しばかり脱線したことを少女に謝り、今度は読書に誘う。
「今夜は、一緒に本でも読もうか」
「うん……」
フレイヤを連れてリビングへと戻り、借りてきた本をソファに座って二人で読む。
彼女は四英雄の本を読むらしく、一緒に読もうかと尋ねると、自分で読むと彼女は答えた。
そのため、僕は少人数戦闘における戦術指南書なる本を少女の隣で読む。
時折——
「ねぇ、これは何て読むの……」
「ん、これはね」
なんて会話を挟みながら。