フランとフレイヤ
閑話です。
彼とベッドの上で横になり、私は彼の寝巻きの袖を掴んだ。
その行為がいつもと違い控えめなのは、今夜は二人きりではないからだ。
いつもであれば、私は彼の腕を抱いて、恐れ多くも彼より早く眠りに着いてしまうことが多い。
それは彼の温もりの所為なのか、それとも私が彼より少しでも朝早くに起きるためなのかは、私にも分からない。
それがいつの間にか習慣になり、それが彼に咎められる事も無い所為か、彼と出会ってからの私はだらしのない甘えた日々を送っている。
彼と二人きりの間だけは、自身の好意に任せるまま彼の手や腕に触れ、それが否定されることも無い所為か、自分勝手にも肯定と受け取り、自身を受け入れられる喜びから彼への想いを日々募らせて行く……。
これが物語で読んだ様な恋なのか、それとも選択肢の無い自分への自己暗示なのかは……やはり未熟な私には分からない。
それでも私は彼と目が合えば自然と口元が緩み、それに答える様に彼が微笑めば、私の胸の内には温かい感情が込み上げて頬の笑みが我慢出来なくなる。
これが恋なのか、それとも愛と呼ばれる何かなのかは私には分からない。
しかし分からなくとも良い。
何故ならば、この胸の内に込み上げるこの感情は……この縛られていない心が感じるこの気持ちは、全て真実だからだ。
ならば、それに従おう。
私が彼に何を求められるわけでもなく自由を与えられたなのならば、私は自由を与えられた責任を果たそう。
私は私のためにこの心に従い、彼のためになることをしよう。
それが今の私の幸せなのだから。
私は彼が魔法の練習を終えて眠りに着いたことを確認すると、彼の影の中にいるという死神の少女に声を掛けた。
「フレイヤ……居ますか?」
静かな寝室の中に私の声が響き渡る。
私が月明かりを頼りに薄暗い室内を見渡すと、室内の一部が真っ黒に染まり上がった。
やがてその影が薄まると同時に、全身に漆黒の衣を纏った少女が現れる。
真っ白な髪と肌が暗闇に浮かび上がり、少女の紅い双眸がこちらを向いた。
「……」
どうやら死神の少女は私の声に応えて、彼の影の中から出てきてくれたようだ。
私は少女が姿を現したことに僅かな安堵を覚えつつも、無言のまま宙に浮いて佇む彼女に話し掛ける。
「フレイヤ、夕方の話の続きをしましょう」




