パラノイヤ 出題編
「それじゃあいくわよ。ちょうどカップもあることだし、これを使わせてもらうわ」
竹原は、コーヒーカップを横一列に並べた。かごめは首を傾げながら質問した。
「問題は、スリー・シェル・ゲームですか?」
「そうじゃないわ。私が出題者、あなた達が解答者。私は右端、中央、左端のカップの中の一つに、玉を入れる。私は当然、どのカップに玉が入っているのかを知っている。あなた達は知らない。私は玉が入っているカップを一つだけ、あなたたちに選ばせる」
「私たちは、目隠ししなくて、良いんですか?」
「構わないわよ。そういう問題じゃないの。これは、確率の問題よ」
「数学の、問題ですか?」
「そう、数学の問題。探偵倶楽部なら、数字にも強くなくちゃね」
「私も部長も、数学は得意分野です」
かごめは胸を張って答えた。
「しかし、僕らの知らない方程式ならお手上げだ」
大崎は弱気な発言に、竹原はフッと笑った。
「では、問題の続きを言うわね。あなた達は、ヤマカンでもなんでも構わないけれど、左端のカップを選んだ。私は、答えを言う前に、右端のカップを開けて見せるの。右端のカップには、玉が入っていなかった。そこで私は、今なら選ぶカップを変えても良いと提案するわ。ここまでは良い?」
「はい。大丈夫です」
かごめは自信満々に答えた。
「私の提案を受けて、あなたたちは最初に選んだ左端のカップを辞めて、中央のカップを選んだ」
「選ぶカップを、変えてしまったんですか?」
「そうよ。あなた達が選び直した中央のカップに、玉が入っている確率を求めなさい。それが問題よ」
「佳子先生は、そんな簡単な問題で、私達の実力を測ろうと言うんですか?」
かごめはもっと、難易度の高い問題が来るだろうと身構えていただけに、拍子抜けするのだった。
「簡単だったかしら? それでは、ヒントをあげるわ。最初にあなた達が選んだ左端のカップに玉が入っている確率と、ヒントを得て選び直した、中央のカップに玉が入っている確率は、等しくない」
そう言うと竹原は、いたずらっぽく微笑んだ。
「え?」
驚くかごめの隣で、大崎は竹原に対して手を上げた。
「先生、一つだけ聞いてもいいですか?」
「なに? 大崎くん」
「その答えは50%、〝以外〟ですか?」
「フフフッ。さあ、どうかしら?」
大崎の質問に、竹原は笑ってごまかした。
「この問題、私は解くことができなかったわ」
「ええ! 数学教師の佳子先生がですか?」
かごめは目を丸くした。
「ちなみにその問題を、ノーヒントで解いた人物の頭脳指数は、228よ」
「えええええ!? 途方もないIQじゃないですか!?」
またまたかごめは驚愕した。
「昔の話だし、自称だから確かめようもないけれど、難易度は特Aプラスプラスってところかしら? 一時間後にまた来るから、その時までに解答してね。期待してるわよ。大崎くん」
そう言って竹原は、探偵倶楽部の部室を出て行った。ポカンと口を開けるかごめの横で、大崎は顎に手を当てた。
「IQ228の問題……。面白そうじゃないか、かごめくん」
大崎の頭の中は、フル回転を始めていた。